第23話・平和な1日なのに、痛いところを突かれたんだけど?

 平民街を自由に周った次の日。

 午前の座学が終わったタイミングで、シェフが用意してくれた昼食に舌鼓をうつ。


「久しぶりに貴族の食事って感じがするのじゃよ」

「お前の口に合って良かった」

「……なぜお主らはこんなワシにも優しく接してくれるのかの?」

「まあ、ウチはバルクさんを信じているのとディアが悪いやつじゃないと思っているからッス」

「俺もアクアの意見とほぼ同じだな」


 プラスで変人で弾かれ者の集まりだしな。

 いまさら1人増えたところで大した問題じゃないのと、ディアは能力の解放が出来れば優秀な魔法アタッカーになる。

 その打算もあるので、少し汚いかも知れないな。


「ん? そうなるとワシの口調や火傷の痕を見ても気にならないのかの?」

「珍しいと思うし変だとは思うけど、それを言い出したら俺やアクアも変人だぞ」

「ちょっ!? 確かにその通りッスけどもう少しマシな言い方はないんスか?」

「今のでもかなりマシなんだが?」


 お昼ご飯の魚のムニエルを皮ごとかぶりついているアクア。

 どう見ても食い意地が激しく見えるので、思わず突っ込むと仮面を外しているディアがクスッと笑った。


「ほんと2人は仲がいいのじゃ!」

「そりゃ相棒で契約者ッスからね」

「え? 多少はわかるけど細かい内容を聞いてもいいかの?」

「あー、まあ。単純に言えば表向きには公表してないんだけど、俺とアクアはなんか起きてリンクしたんだよ」

「その説明じゃわからないのじゃが!?」


 いやだって俺達もわからないもん。

 ゲームでは祝福契約で聖女と主人公がリンクするが、俺とアクアはアレクセイの執務室で契約が成功した。

 流石に執務室の中に教会レベルの設備があるわけでもないし、結局はよくわからない状況なんだよな……。

 

「まあ、そんな感じでアクアと共にいるんだよ」

「あ、はい。ん? 少し気になるんじゃが、お主らは契約者は教会の管轄にならないのかの?」

「そこなんスけど、祝福契約の場に出てないバルクさんがリンクしたのをおおやけに出したくないんスよ」

「あー、確かにおかしな話じゃからな」


 そうそう。

 プラス、貴族社会での俺の立場がクソ悪いのも影響している。

 まあでも、大体の事はディアも大まかな事を察してそうなので……。


「例外的な処置で俺達は監視付きでここにいるんだよ」

「監視? そうなると、ワシがここにいたら迷惑がかかりそうじゃが」

「確かに迷惑はかかるかもだけど、その辺は父上たちがなんとかするだろ」

「完全に人任せじゃな!?」

「そりゃバルクさんッスからね……」


 いやだって、無理な物は無理だもん。

 適材適所と言う言葉を言い訳にして、自分が出来る範囲でやっていく。

 それが一番いいし、アレクセイはかなりのやり手なので色んな迷惑をかけても大丈夫そうだしな。


「ほんとバルク様はめちゃくちゃですよね」

「うおっ!? ルイスさんが気配なしで後ろに立ってたのじゃ!」

「これくらいメイドの嗜みです。それよりも、バルク様はこれからどのように考えておられるのですか?」

「うーん、少しまとめる」


 いま1番やることはディアの火傷治しと能力の解放。

 これをするにはやはりあの場所に行くのが手っ取り早いが……。

 計画的に少し難しいので悩んでいると、アクアが何かに気づいたのかディアの顔を見つめた。


「バルクさんはディアの火傷を治せるッスか?」

「い、いったい何を……」

「多分ッスけどバルクさんはディアさん関係を考えているッス」

「ほ、ほんとなのかの」

「まあな。ただ少し問題があるんだよ」


 俺がウンウンと考えている内容を今いるメンバーに伝えた方がいいな。

 そう思いながら、説明下手な自分なりに頑張って話していく。


「問題って何があるッスか?」

「まずディアの火傷の跡を治すだけなら高位の回復魔法やポーションを使えばいいけど値段がな」

「ディア様の火傷的に100万エラン白金貨1枚はかかりそうですね」

「そんなお金は……もしかしてバルクはそれだけの資産があるのかの?」

「そんなわけないだろ」


 確かに全力で金策をすればなんとかなる額ではあるが。

 今の俺の立場的にそんな時間はないので、いま使える手札で考えていくと。


「じゃあ、どうするんスか?」

「端的に言えば水上の社に突っ込んで、レアボスからドロップする神秘の雫を手に入れるしかないな」

「あー、確かにそれなら一番穏便にすみそうですね」

「いやいや!? ワシの為に危険なダンジョンに行かなくても……」


 ぶっちゃけ単なる依頼なら断っていたが。

 仲間であるディアの為なら、特に問題ないしコッチにも利点が大きい。

 なので俺はカップに入っている水を一気飲みした後、出来る限り冷静に話していく。


「別にディアの為だけにダンジョンに潜るわけじゃないぞ」

「え? じゃあ何のためかの?」

「いやな、たまには泊まりでボス周回をしようと思ったんだよ」

「ほうほう、ボス周回……って!? 流石にウチも聞いてないッスよ!」

「ははっ、いま言ったからな」


 こちらの発言に驚く3人。

 というか隣に座っているアクアが、俺の肩を掴んでガクガクと荒く揺らし始めた。

 なので俺は食べた昼ごはんを吐きそうになりながら、3人が落ち着くまで……。

 途中で気持ち悪くなってしまい、俺はギブアップ宣言をする羽目になるのだった。




 

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