第20話・デート時に出会った怪しい相手が、隠しキャラだった件。(今日も運がいいな)
ロンネール王国・王都エクレール。
ゲーム時の設定では人口100万人の大都市で、仕事を求めて田舎から多くの若者が上京して来る場所。
その中で俺とアクアは平民街にある市場で、掘り出し物がないかを探し始めた。
「久しぶりに来たッスけど活気がすごいッスねー」
「貴族街と比べて人が多いな」
「バルクさんはあまり市場にきた事がなさそうッスからね」
「ま、まあな」
確かにリアルでは市場にきた事はほぼないが。
ゲームや元の世界では経験があるので微妙な反応しか出来ないところが辛いが。
アクアは俺の腕にガッツリと抱きつきながら、市場を案内してくれた。
「ああ、串焼き肉は前から食べたかったんスよねー!」
「ほうほう。なら、頼んでくるか?」
「もちろんッス! おじさん、串焼き肉を2本お願いするッスよ」
「2本だと
「ほいっス」
確かに屋台の串焼き肉は美味しそうだけど……。
教会でも特別扱いをされている聖女様が串焼き肉を購入している。
少し違和感があるけど、本人が満足そうにしているので気にしない方が良さそうだな。
「お待ちどうさん!」
「ありがとうッス! あ、バルクさんもどうぞ」
「ん? おお、ありがとう」
「いえいえー!」
2本ともアクアが食べると思っていたが、片方を渡してくれたので受け取る。
そして屋台から少し離れた場所で、俺とアクアはアツアツの串焼き肉にかぶりついた。
「んっ!? 塩だけっぽいのに美味しくないか?」
「むふふ、あの串焼き肉屋さんは本業がお肉店みたいッスよ」
「なるほど……」
お肉への目利きが上手い店主なんだな。
なんというか、懐かしさを感じながら串焼き肉を食べていると、ふとアクアが悲しそうに空を見上げた。
「聖女に選ばれる前はこの串焼き肉が贅沢だったんスけどね」
「なら今は幸せじゃないのか?」
「フフッ、すごい幸せッスよ」
あ、墓穴を掘った気がする。
悲しげな雰囲気から獰猛な笑みを浮かべたアクアは、串を持ってない右手で俺の裾を掴んだ。
その時に彼女の手が震えていたので、俺は苦笑いを浮かべながら優しく触れる。
「また来たくなったら一緒にこよう」
「いいんスか!」
「もちろん。てか、俺とお前は
「そうだったスね!」
ゲームの情報でアクアは振り回してくる性格なのは知っていたし、そもそも1番の押しだったキャラ。
今はゲームの光景がリアルになり、アクアとも出会えたのですごくよかった。
なので満足しながら串焼き肉を食べ、専用の箱にゴミを捨てて俺達は改めて市場を周り始めた。
ーー
平民街の市場の端まで来たので引き返そうとした時、小汚いローブをかぶっている相手。
ゲームで見覚えのあるキャラクターが、シートの上に品物を広げている姿を見つけた。
「おや? そこの銀髪は何か気になるアイテムでも見つけたのかの?」
「アイテムもそうだけど偽装魔法を使っている貴女も気になるけどな」
「擬装魔法? バルクさんは何を言っているんスか?」
「ホホッ、何を言っておるんじゃ」
老人みたいな喋りをする相手。
確かに表向きはおかしな点がなさそうだが、廃人プレイをしていた俺には見分けがつく。
「そうか……。なら、勝負をしないか?」
「勝負? そんな事をしてワシに何の得があるんじゃ?」
「もし俺が負けたら売られているアイテムを全て買い取らせてもらうよ」
「ッ!? お、お主本気か?」
「もちろん」
まあぶっちゃけ負けてもいいんだけどね。
今売られているアイテムはガラクタレベルの値段しかついてないが、本来はかなり価値のあるアイテム類。
というかゲーム終盤でも使える物もあるので、俺は気持ちを楽にしながら答えていく。
「ほ、本当に大丈夫なんスか?」
「やばかったらそもそも勝負はしないよ」
「確かにバルクさんはそうッスね」
「
「それは今からわかる事だ」
コイツ、俺の名前に反応したな。
バルクの悪名は王都に住んでいる王侯貴族達の中ではかなり有名。
というか、前代未聞の事をやらかした影響もあるが、平民までは広がってないはず。
なのに目の前いるローブに仮面をかぶった人物は、今の俺の名前に反応した。
「てか、ここだと目立つし移動しないか?」
「も、もしや、ワシをいたぶる気か!?」
「バルクさんはそんな事はしないし、するとしてもウチが一番先ッス」
「そゆモンダイかの!? てか、この娘も頭がぶっ飛んでおるのじゃ!」
確かに俺とアクアはぶっ飛んでいるが。
ゼエゼエと荒い息を吐く相手に同情しながら、俺はポケットから金貨を取り出して彼女に渡す。
「売られている商品的に金貨1枚で足りるか?」
「おお、もちろんじゃ!」
「そんじゃ、取引成立で」
そもそもの目的であるコイツとの話し合いに持ち込めた。
それなら
「ほ、本当に買っちゃったスね」
「まあまあ、とりあえず近くのカフェに移動しようぜ」
「のじゃ!」「はいッス」
タイプは違うが2人からの怪しんだ視線が。
俺は内心で冷や汗を流しながら、近くにあるカフェに2人を連れて行く。
そしてこの出会いが、俺の運命をいい意味でも悪い意味でも変えるのだった。
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