第19話・冒険者ってテンプレ通りの荒くれ者が多いなー

 王都に戻ってきた後。

 冒険者ギルドの扉を潜り、ガタイのいい男性が立っている受付に到着した。


「おう、おつかれさん。今日は、って1人増えてないか?」

「気のせいではないけど気のせいにしてくれると助かる」

「わ、わかった!」


 基本的に美人な受付嬢がカウンターに立っているが。

 初手の問題行動と美人さんと話しているとアクアの表情が凍るので、ガタイのいい男性ことバクサさんに対応してもらっている。

 まあ、他にも色々と理由はあるが、今は置いといてカバンからドロップアイテムを取り出していく。


「なんか私がいないような扱いをされてませんか!?」

「いや、単に説明がめんどいだけ」

「私にはリーナって名前があるから少しくらい存在感ををくださいよ!」

「なんかすまない」

「ううっ、お詫びに頭を撫でてください」


 ここでかよ……。

 まあでもリーナの機嫌を損ねたのは俺だし、ドロップアイテムを出した後に撫でるか。

 そう思っているとアクアに裾を引っ張られたので、そちらを見ると彼女も期待した目でコチラを見てきた。


「ウチもよろしくッス」

「も、もちろん。バクサさん、ドロップアイテムの売却をお願いしますね」

「お、おう! ただこの量だと時間がかかるから適当な場所で待っていてくれ」

「わ、わかりました」


 冒険者からのリア充爆発しろ、みたいな視線が飛んでくるんだが?

 苦笑いでドロップアイテムを運んでいくバクサさんを尻目に、俺達3人はロビーにあるベンチに座る。


「むふぅ、やっぱりコレがいいッス」

「気持ちいいですー」

「そりゃよかった。って、目が肉食獣になってないか?」

「フフッ、さあなッス」


 ガチガチに背筋が凍るのは気のせい?

 問題がある美少女達から舐めまわされるような視線が飛んできたので、俺はビビりながら2人の頭を撫でていく。

 うん、俺が第三者なら今のハーレム状況を見てリア充爆発しろと思うかもな……。


「あ、アイツ、あんな美少女をはべらせやかって!」

「でもなんか病みを抱えてそうなのは気のせいかしら?」

「それはそれでいいだろうが!」


 酒が入っているのかいろんな意味でうるさい冒険者達。 

 彼らの騒ぎを耳にしていると、アルコールで頬を赤く染めた冒険者の1人がフラフラになりながら大声で叫んだ。


「あーあ、俺だって可愛子ちゃんとリゾートで遊びたいぜ」

「リゾートって何処に行くつもりだよ」

「そんなのリヴァイアにあるビーチに決まっているだろ!」

「ははっ、今は秋だしゴブリンがお似合いなお前には無理だろ」

「なんだと!?」


 モンスターの中でもブサイク代表のゴブリン。

 このゴブリン扱いされた冒険者がブチ切れたのか、ケラケラ笑っていたやつにつかみかかった。

 その結果、冒険者ギルド内で乱闘が始まったので、俺達は巻き込まれないように離れていく。


「ほんと冒険者は荒くれ者ですね」

「それは見ているとわかる……ん? そういえばアクアが静かなのは珍しいな」

「フフッ、そうッスか?」

「お、おう」


 アクアはアクアでやばい威圧感を放ってないか?

 何かのキッカケでスイッチが入ったアクアを見つつ、ドロップアイテムの売却が終わるまで壁近くで待つのだった。


 ーー


 自己中男主人公と腹黒聖女に出会ってから3日後の朝。

 今日も1日頑張っていこうと準備を整えて自室から出たのだが、なぜか満面な笑みを浮かべたアクアが廊下で待っていた。


「バルクさん、おはようございまス!」

「ん、おはよう。でだ、なんでそんなに嬉しそうな笑みを浮かべているんだ?」

「フフフ、やっぱりバルクさんにはわかるんスね」

「ま、まあな」


 やべぇ、サッパリわからない。

 いつも以上にいい笑顔をしているアクアに内心ドン引いていると、苦笑いを浮かべたルイスが口を開く。


「今日はお休みなのでバルク様はアクア様とお出かけされるのはどうですか?」

「おでかけ? それってドユコト?」

「単純にウチと2人で王都を周ろうって事ッスよ」

「あ、なるほど……」


 確かにダンジョンに潜ったり訓練を共にしたが、休みの日に2人で王都を回った事がなかったな。

 今までの記憶を思い出していると、おめかしをしたアクアが俺の手を力強く握り始めた。


「そんなわけでいくッスよ」

「えっと、まだ準備してないんだけど?」

「今の服で大丈夫ッスよ」


 確かにあまり目立たない服だけど。

 腰に空月のツルギを装備している以外は、その辺の平民としか見えない服装。

 ん?もしかしてワザワザこの服を用意してくれたのは……。


「隠れ護衛を付けてますのでお二人は楽しんできてください!」

「色々と助かる」

「いえいえ、気持ちよく楽しんできてくださいね」


 若干トゲがあるような?

 ほぼ無表情で業務的に反応してくるルイスを見て、戸惑っていると頬を膨らませたアクアが腕を引っ張ってきた。


「今はウチだけを見て欲しいッス」

「お、おう……。あ、とりあえず出かけてくるから後は頼むぞ」

「おまかせを」


 実家関係はルイスに任せ。

 俺とアクアはカーマセル家の屋敷から駆けるように出ていく。


「わたしも行きたかったな……」


 お見送りの時にルイスが何かを呟いていたが、風にかき消されたので何を言っているかわからなかった。

 



 

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