第15話・予想通り隠し部屋の中には金色の宝箱があったぜ!

 リザードランドのボスを倒し終わった後。

 アクアの拷問が終わったタイミングで、隠し部屋の目星がついたので……。

 シートの上でのんびりしているアクアの方に向いて声をかける。


「アクアー、少しコッチに来てくれるか?」

「いいッスけど何か面白い物でもあったッスか?」

「まあな。っと、耳を塞いでいろよ」

「え? わ、わかったッス!」

「よし、ウィンドセイバー!!」


 グランドリザードにトドメを刺した一撃。

 その大技をボス部屋の岩壁にぶち当たると、そのままガラガラと崩れ始めた。

 

「え、え? 何が起きたんスか!?」

「ただの隠し部屋だよ」

「隠し部屋!? いやいや、なに当たり前に言っているんス!」

「へ?」


 おいおい、隠し部屋を見つけただけでそんなに驚くか?

 目が飛び出すレベルで驚いているアクアに突っ込みつつ。

 俺は冷静に中に入っていくと、中には金色の宝箱が3つ点在していた。


「って、なんかキラキラしているッス!」

「そりゃ宝箱だからな」

「なんで他人事なんスか!?」


 肩を掴んでガクガクと揺らしてくるなよ。

 少し気持ち悪くなっていると、涙目でお尻を抑えたリーナさんが近づいてきた。

 その姿は少し可哀想になるが、この人ならいいなと思い特に気にせずに放置する。


「あ、アナタは何者なんです?」

「俺の正体は偵察係のアンタなら知っているだろ」

「確かに情報としては聞いてますが、実際に見てみると全く違いますよね!」

「噂なんて信ぴょう性がない話ッス!」

「お、おう……」


 なんだろう、アクアが味方になってくれるのは嬉しいな。

 よくわからないモヤモヤとして気持ちを抱えていると、アクアが宝箱に気づいたのか俺の右腕を軽く叩いた。


「バルクさんへ突っ込むのは一旦置いといて、この中には何が入っているンスか?」

「さあ? でも狙いの武器があると嬉しいな」

「その狙いの武器ってなんスか?」


 ゲームの時と同じなら……。

 金色の宝箱が三つ置いてあるので、まずは一つ目を開けてみる。

 すると茶色いリュックサックが入っており、宝箱は説明欄には収納鞄と書いてあった。


「こ、これって収納鞄ですか!?」

「初っ端から当たりを引けてよかった」

「いやいや、当たりどころか大当たりですよ!」

「ねえアナタ、なんでバルクさんの肩を掴んでいるんスか?」

「ぴいぃ!? 申し訳ございません!」


 アクアのドスが聞いた声が部屋の中に響き。

 その声を聞いたリーナは体をガクガク震わせながら、勢いよくジャンピング土下座を決めた。

 な、なんか、調教された感じになってない?


「アナタはそのまま動くなッス」

「は、はいぃ!」

「えっと、アクアさんはなんで俺の胸に顔を埋めてくるんだ?」

「マーキングッスよ!」


 素直に言いやがった!?

 若干頬を赤く染めているアクアは、青髪を軽く揺らしながら俺に抱きついてきた。

 さっき以上に自分の体が固まる中、アクアは満足そうに俺の胸に頬ずりをして離れる。


「今はこれくらいにしておくッス」

「お、おう……」


 と、とりあえずアクアが落ち着いてよかった。

 内心でドキドキしていたが、深呼吸して気持ちを落ち着かせつつ。

 クールダウンしたタイミングで、二つ目の宝箱を開ける。


「何が出るかなー」


 ゲームの知識があるので何が入っているかわかるが……。

 何も知らないフリをして二つ目の宝箱を開けると、中から黒い鞘に入った片手剣。

 鍔の部分には緑色の宝石がはまっており、鞘から引き抜くと銀色の刃が光った。


「バルクさんにピッタリな剣ッスね!」

「ああ!」


 ゲームの終盤まで使える片手剣・空月のツルギ。

 コイツのスキルは相手の特殊能力を無効化と、ダメージを与えた場合に装備者の魔力が回復する。

 この二つのお陰で強化すれば終盤でも普通に使えるので、序盤のタイミングで手に入るのはかなりありがたい。


「わ、私が見た事がない片手剣……」

「何か言ったッスか?」

「いえ、なんでもないです!」


 天井の光を反射する空月のツルギ。

 個人的に好きな武器の一つなので見惚れていると、革鎧の端が引っ張られたので振り向く。

 すると頬を膨らませたアクアが、ジッと不満そうにコチラをみてきた。


「その片手剣がかっこいいのはわかるッスけど、ウチも見て欲しいッス」

「お、おう、すまない」

「別にいいッスよ」


 いや、よくない雰囲気をしてない?

 アクアが不貞腐れているので、なんとか機嫌を治してもらう方法……あ。

 俺は三つ目の宝箱をチラッと見た後、アクアの頭を撫でながら優しめの言葉を呟く。


「なら最後の宝箱はアクアが開けるか?」

「い、いいんスか!」

「良い物を引いてこいよ」

「もちろんッス!」


 さっきも思ったが何が出るかはわかっている。

 ただアクアは知らないので、彼女は緊張しているのかプルプル震える手で宝箱を開けた。

 すると俺の予想通りの物、昔の火縄銃をモチーフにした魔法銃がアクアの手に収まった。


「よしっ、大当たりだ!!」

「へえぇ!? いきなり大声を出してどうしたんスか!」

「いやだって、ソイツはアクアにピッタリな装備だからな」

「コレが!? てか、バルクさんはこの装備の名前を知っているンスか?」


 知っている。

 というか、序盤でアクアと祝福契約をした場合に出てくる隠し装備。

 俺が手に入れた空月のツルギと同じく、強化すれば終盤まで使える強力な武器。


「アクアが持っている装備は魔法銃の一つで、名前はファントム・ライフルらしいな」

「ほうほう! それでウチに合うってドユコトっスか?」

「アクアの膨大な魔力がコイツとの相性が抜群なんだよ」

「それは興味深いですね」

 

 土下座したままのリーナがキラキラ目を輝かせながら顔を上げるが。

 アクアの鋭い睨みつけで、顔がまた地面に沈んだ。


「アンタは黙ってろッス!」

「ご、ごめんなさいです!」

「っと、その魔法銃の特性だけど攻撃力の計算が攻撃➕魔力量になるんだよ」

「へ? それって……」

「さっきも言ったけどアクアの特性が生かせるんだよ」


 これがアクアの最強クラスのビルド。

 魔法銃を持たせて中距離火力にすると、他の2人とは比べものにならないレベルで強くなる。

 ……この銃はアップデートで追加されたので、プレイヤーの大半は「初手に用意しておけ!」と突っ込んだが。


「バルクさんはこの魔法銃の使い方を知っているんスか?」

「うーん、知識として知っているだけで使い方は微妙だな」

「そうッスか」

「まあでも、説明書もあるし試すのが良さそうだな」

「おお! それなら練習に付き合ってもらうッスよ」


 ニッコリと嬉しそうな笑みを浮かべるアクア。

 その姿に俺は惚れそうになる中、なんとかコクリと頷く。

 すると彼女は魔法銃を地面に置いた後、勢いよく抱きついてくるのだった。


〈余談〉


「なんか私は放置されてないですか?」


 俺とアクアがわちゃわちゃしている時、リーナが土下座体勢で何か呟いているのだった。

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