第14話・ボス相手にマウントポジションで殴るのは楽しいゾイ!

 リザードダンジョンのボス・グランドリザードが現れた瞬間に大声で叫び始める。


「グオオォ!!」

「やっぱり初手は咆哮かよ!」


 対策してなければコチラの動きが鈍るボスの咆哮。

 その厄介さはゲームで経験済みなので、相手の攻撃に対応できるようにサイドステップをふむ。

 するとグランドリザードは、ドスドスと地面を鳴らしながら勢いよく突っ込んできた。


「グオッ!」

「おっと、危ない危ない」


 ゲームでは感じなかったがリアルだと相手の動きが早く感じる。

 内心でヒヤヒヤしながらもう一度サイドステップを踏み、相手の突進を回避していく。


「アクアの補助があればもっと楽に倒せるんだろうが……」


 チラッとアクアの方を見るとリーナへの拷問はまだ続いている。

 というか、わりかしエグい事をやっている気もするが、そこまでの余裕はないので改めてボスに向き直った。

 

「グオッッ!」

「ハッ、悪いけどその動きは知っているんだよ」

「ガオオォ!?」


 大きな岩を作り出し射出してくる相手に対し、反射スキルの全反撃クロス・カウンターを発動。

 ピッチングマシーンのボールをバットで弾き返すように、相手が放つ大岩をアイアンソートでガンッと打ち返す。

 すると打ち返された大岩は驚いていたグランドリザードに直撃、そのまま頭の鱗にヒビが入った。


「クウウォ!?」

「うわぁ、痛そうだな……」

「ガオオォツ!?」


 お前が言うな!とボスに突っ込まれたような?

 頭がズキズキと痛いのか、頭をブルブルと振った後に鋭い視線を放ってきた。

 

「そんなに睨むなよ」

「グオッ!!」


 やばい、少し煽りすぎたか?

 調子に乗りすぎたと反省しつつ。

 グランドリザードが怒ったのか、初手以上の大声で叫び始めた。

 なので俺は大きくバックステップを踏み、被害を最低限にしながら体勢を立て直す。


「やはり一筋縄では行かないか!」

「ガオオォ!」


 ボス相手に舐めすぎてたな。

 ゲームなら無駄に体力を使わずにコントローラを動かすだけで倒せる。

 ただ今はリアルでボス相手に単騎ソロで戦っているバカが俺。

 

「まあでも、勝てないわけじゃないな」

「グオオオォ!」

「はっ! さあこいよトカゲモドキ!」


 向こうの準備が整ったのか、またしても突っ込んでくるボス。

 その動きに対し、俺はギリギリで回避しながらカウンターの要領でアイアンソードを払う。


「ちいぃ! やっぱりコイツも刃が通りにくいか!」

「がおおっ!」

「おっと!」


 ガンッと鈍い音がボス部屋に鳴り響く。

 というか、痺れるような痛みが両手に伝わるからやりにくいな……。

 俺の通常攻撃が、ボス相手だと切り傷レベルなのは少しきついか。


「ガルルゥ!」

「ちいぃ、じならしはやめて欲しいんだけど!」


 グランドリザードが両足を使い、地面を鳴らすように揺らし始めた。

 その攻撃でコチラは動きにくくなり、それをみた相手が勢いよく飛びかかってきた。


「グアアオォ!!」

「チッ、仕方ないか!」


 動きが制限された状態の俺に対し、襲いかかってくるグランドリザード。

 この攻撃をマトモに受けたら大ダメージ確定なので、俺はため息を吐きながらアイアンソードを構える。


「ガオオォ!!」

全反射クロス・カウンター!!」

「ぐおおぉ!?」


 さっきは1メートル程の大岩だったが、今度は10メートルくらいのグランドリザード本体を弾き返す。

 流石に自分が吹き飛ばされると思わなかったのか、ボスが驚いたような声を上げながら勢いよく地面を転がった。


「く、ぐおぉ……」

「あ、チャーンス!!」

「くおぉーー!?!?」


 ヒックリ返った状態のグランドリザード。

 コイツの背中や頭は硬い鱗に守られているが、真下のお腹は特に守られてないので柔らかい。

 なので俺は今がチャンスと思い、アイアンソードを両手で握りながら一気に攻め立てる。


「これでもくらいやがれ!!」

「くおおぉ!?」


 まずはグランドリザードにのしかかり、アイアンソードをお腹に深く突き刺す。

 その時にボスが悲鳴を上げ、耳が痛くなりながらも連続で突き刺していく。


「ハアァァ!!」

「グオォ!?」


 このままトドメを刺せればよかったが。

 相手はなんとかひっくり返ったので、俺はアイアンソードを引き抜き全力で飛び退いた。

 

「こ、こいつ! 耐久力が高いのは知っていたがここまでとは……」

「グオオォ!!」


 グランドリザードはお腹から紫色の血をダラダラ流しており息も荒い。

 ただ目はまだ死んでおらず、闘志が燃える目でコチラを見てくる。


「ははっ、ここまで来ると俺も熱くなってくるな」

「ぐおぉ!」


 正直何を言っているかわからないが。

 それでも相手とのやりとりが出来ている感じがするので、俺はテンションが上がりながらアイアンソードを構え直す。


「こっからが第二ラウンドだ!」

「くおぉ!」

「はあぁ! ウィンドセイバー!!」


 覚悟を決めたのか勢いよく突進を仕掛けるグランドリザード。

 俺はその動きを見つつ、アイアンソードに風の魔力をめながら突っ込む。


「クオオォ!!!!」「はあぁ!!!!」


 最後の一撃。

 そのぶつかり合いを制したのは……俺だ!

 

「コイツで終わりだ!!」

「くおおっ!?」


 ヒビが入った頭に突き刺さるアイアンソード。

 その一撃を受けたグランドリザードは力尽きたのか、地面にドスンと勢いよく沈んだ。

 

「俺の勝ちだ!」


 紫色の煙になって消えていくボス。

 その姿に感動しながら、俺は地面に落ちたドロップアイテムを拾っていくのだった。


〈余談〉

・ボスであるグランドリザードは討伐したが。

 アクアの拷問が続いていたので、軽く挨拶してから本来の目的である隠し部屋を探し始めるのだった。

 

 

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