第7話・冒険者ギルドのカマセキャラはボコるに限る!

 王都エクレールの平民街にある冒険者ギルド。

 ゲームではお金稼ぎをするためのクエストが受けられる場所。

 現実でも武装した男女が多く集まっており、人混みに巻き込まれないようしつつ冒険者登録をしたが。


「おいお前、新人なのにいい装備をしているな!」

「え、あ、ありがとうございます!」

「おう! じゃなくてお前みたいなガキに勿体無い装備だぜ!」

「そうでやんす!」

 

 確かに紅の指輪は強化すれば終盤でも使えるレア装備だけど。

 絡んできた奴らがニワトリ頭のヒャッハー男達なのに、意外と目利きの能力があるのか?

 

「お前らは何を言いたいんだ?」

「はあ? そんなの先輩であるオレ達にその装備を献上しろと言っているんだよ」

「……もしかして新人イビリか?」

「いまさら気づいたのかよ!?」


 あー、納得。

 コイツらは別にレア装備を見抜いていたわけじゃない。

 そう思ったら急に気持ちがスゥーと冷めたので、思わずため息を吐く。


「こ、コイツ、オレ達を舐めているのか?」

「うーん、そうではなく気持ちが冷めただけだ」

「変わんねーよ!」


 さっきから大声がうるさいな。

 周りの冒険者達はギルド内で揉めているのに知らんぷり。

 現実並の冷たさを感じて、自分の中でドンドン気持ちが沈んでしまう。


「はいはい。それで俺はダンジョンに行きたいんだけどいいか?」

「て、てめぇ! このオレの話を華麗に無視しやがって!」

「はい?」


 ニワトリ頭の男がいきなり背負っていた大きな斧を背中から引き抜く。

 その時に取り巻きの2人が目を輝かせつつ、コチラに指を刺してきた。


「本気でアニキを怒らせたな!」

「お前みたいな身の程知らずはこれで終わりだ!」

「あ、はい」


 いやマジで短気すぎない?

 普通に話していただけなのにブチギレるとは、どんだけ沸点が低いんだよ。

 内心で思わず突っ込んでいると、ニワトリ頭が大斧の持ち手を強く握った。


「ヒョロイお前なんざ、このバルザード・アックスで真っ二つにしてやるぜ!」


 マジでどうしよう?

 その一言と共にニワトリ頭がゴオッと勢いよく突っ込んできた。

 なので俺は目が点になりながら回避行動を取る。


「くたばりやがれ!!」


 冒険者ギルドのロビー。

 その中央で何故か戦闘になったので、俺は相手の攻撃を回避しながら片手剣を引き抜く。


「はっ! やっとやる気になったのかよ!」

「あんまりやりたくないけどな」


 正直このままダンジョンに突っ込みたい。

 内心で色んな気持ちが混じっていると、周りにいる冒険者達の声が耳に届いた。


「ヒョロイ銀髪が剛鉄のガガスを手玉にとっているぞ!」

「ここからどうなるか楽しみだぜ」

「なんか見ていて面白いわね」


 ノンキすぎない?

 冒険者ギルドのテーブルは血痕や壊れていたやつもあるが……。

 戦いの途中で違う事を考えるのは命取りなので、俺はバックステップを踏んで大きく距離を取る。


「はぁはぁ、すばしっこい奴め!」

「あ、はい」

「コイツ余裕そうにしやがって! だ、だがこのスキル技で終わらせてやる!」


 先程までの振り回しとは別。

 ニワトリ頭が大斧に真っ白なオーラをまとわせ、ゴオォと勢いよく接近してきた。


「はあぁ! パワースマッシュ!!」

「あ……全反射クロスカウンターで」

「なっ!?」

「あ、アニキが吹き飛ばされた!?!?」

 

 な、なんとかなった。

 こちらの反撃をまともに受けたニワトリ頭は、ドシャーン!とテーブルの方に吹き飛んだ。


「がっはっ!?」

「「あ、アニキ!?」」

「なあ、これで用事は終わったか?」

「ひ、ひいぃ!?」

 

 なんで俺は冷静に対処できているんだ?

 普通に考えて武器を持った相手に襲われたらパニックになるはず。

 自分の感覚がおかしいと思うが、キッカケがわからない。


「……少し考えるか」


 自分の中でカチリとスイッチが入った音。

 その感覚に戸惑いながら、俺は冒険者ギルドから出ていくのだった。

 

 〜移動中〜

 

 バルク・カーマセルに転生してから約3ヶ月。

 訓練をしているお陰で戦闘は慣れてきた感じはあるが、それとは別に湧き上がる気持ち。


「いや、今は気にしない方がいいか……」


 無駄に考えても仕方ない。

 しかも今はダンジョン内にいるし、ゲームと違ってどころからモンスターが現れるかわからない。

 そう思いながら、今いるダンジョンの情報を思い出していく。


「ダンジョン名はゴブリンの巣窟で、ゲームでは初見殺しで有名な場所だったな」


 ゴブリンの巣窟に現れるモンスターはゴブリンのみ。

 コイツらは身長80センチ肌で、緑色の肌に尖った鼻を持つモンスター。

 基本的に群れで行動するので、数の暴力のせいで敗北するゲーマーも少なくなかった。


「仲間が欲しい……。てか、初見殺しダンジョンにソロで潜るのは我ながらアホすぎないか?」

  

 ゲームでは4人チームで入るのが普通で、ソロの場合は適正レベル以上じゃないと基本的に無理。

 微妙に頭がズキズキと痛くなる中、ボス部屋の結界が見えた。


「とりあえずボスを倒して帰ろう」


 あんまり体調がよくない。

 そう思いながら結界前についたが……。

 どこかで見覚えのある青髪ボブカットの少女が、ボス相手に必死に逃げ回っていた。


「ひいぃ!? こ、コッチに来るなッス!!」

「……マジかよ」


 なんでアイツがここにいるんだよ!?

 見覚えのある姿を見て固まっていると、涙目の少女がコチラをチラッと見た。


「ああ、助けて欲しいッス!!」

「し、仕方ないか」


 このまま放置する方が大問題になる。

 頭の中でいろんな可能性が思い浮かぶが、今は置いといて彼女を助ける為にボス部屋に入っていくのだった。

 

〈余談の一言〉

 なんとかボスを倒して助けられたのは良かったが……。

 なんで聖女の1人であるアクア・ハルカナがソロで初見殺しダンジョンに潜っているんだヨオォ!?!?

 

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