第5話・初めてのレアボス相手はやはりきついんだけど!
レアボス、レッドホットキャタピラ。
ゲーム時はレベルや装備のゴリ押しでボコッていたが……。
今は条件が悪いので、ガリガリと削っていくのが良さそうだな。
「ピイイィ!」
「いい加減うるさい」
このまま何も起きなけれは倒せるけど。
そう思いながら横薙ぎの一閃で、なんとか相手の触覚をへし折る。
その時、レッドホットキャタピラの悲鳴がボス部屋に響く。
「ひ、ぴいいぃ!?」
「ハハッ、これでどうだ」
部位破壊は成功したが、まだ体力は残ってそう。
地面に頭をガンガンと叩きつけてたレアボスは、我に戻ったのか鋭い視線でコチラを睨みつけてきた。
「ピイィ!!」
「ッ! まずい!」
体に力をこめるのは範囲攻撃の!
このままだと巻き込まれるので全力で下がると、ブアァ!と真っ赤な炎が相手の体から湧き上がった。
「火だるま攻撃を受けていたらやばかったな」
レッドホットキャタピラの大技で、低レベルならワンパンで沈む威力を持つ。
ただ予備動作が大きいから、見てから回避が出来るのはありがたい。
「さてと、火だるまの後は防御力が下がったはず!」
「ピイイィ!!」
「はっ! データどおり」
真っ赤な攻殻が熱されたお陰で柔らかくなり、さっきまでガンガンと弾かれていた近接攻撃が有効になった。
そのおかげで俺はニヤッと笑みを浮かべながらギアをあげていく。
「ここで決めるブースト!」
「ッ!? ぴいいぃ!」
「ハアアァ!!」
無属性の自己強化魔法・ブースト。
ゲームでは序盤の主人公や近接型のキャラが覚えるスキルで、効果は攻撃と素早さを1段階アップ。
魔法訓練をしている時に使える事が判明したので、俺はブーストを使って一気に攻め込む。
「コイツで終わりだ!!」
「ぴいぃ」
キンキンとボス部屋内に音が響く中。
攻撃に極振りした俺は、全力でレッドホットキャタピラへ攻め込む。
そのおかげで大ダメージが与えられたので、容赦無くとどめを指す。
「ぴ、ぴいぃ……」
「はぁはぁ、つ、疲れた」
力なく倒れたレアボスはバンッと紫色の煙に変化。
地面にはドロップアイテムが落ちており、その中には赤色の宝石がハマった指輪と紫色の石が落ちていた。
「レアがツモッたのはありがたい」
レアの紅の指輪は
後者はともかく、魔力回復が付着されているアクセが手に入るのは大きいな。
「これで訓練が長く続けられそうだな」
他にも追加スキルがついている可能性がある。
そう思いながら紫色の石を含めて拾った後、ボス部屋の外で待っている騎士達と合流する。
「おーい、終わったぞ」
「は、はい! てか、まさかレッドホットキャタピラをお一人で討伐されるとは?」
「相性がよかっただけだ。てか、ドンガスさんや騎士達ならソロで倒せるだろ」
「じ、自分なら倒せますが若手の騎士には無理だと思いますぜ」
「え?」
レッドホットキャタピラは大体15レベル前後。
回復アイテムとかは必要になりそうだが、ウチの騎士なら倒せそうなもんだけど。
内心で不思議に思っていると、若手の騎士が口をあんぐりと空けた。
「す、少なくともわたしには無理です」
「ワタシも無理ですわ!」
「僕もですよ」
「ま、マジでかよ」
「「「はい!!」」」
もしかしなくても選択を間違えたような?
俺は冷や汗ダラダラになりながら、まだ目が点になっている彼らと共に始まりの草原から出ていくのだった。
ーー
王都の貴族街にあるカーマセル伯爵家の屋敷。
本館には特に用がないので別館に戻ってくると、コチラに気づいたルイスがバダバタと音を鳴らしながら走ってきた。
「お、おかりなさいませバルク様!」
「ただいま。それで何か問題はあったか?」
「い、いえ、特には……」
呼び出しとかなくてよかった。
内心でホッとしながらバシャバシャと水浴びをした後、替えの服に着替えて自室に戻る。
「しっかし、父上達からの反応がないのは怖いな」
「バルク様は何か心配されておられるのですか?」
「うーん、心配もあるけど……」
ゲームの知識ではカーマセル家の当主は能力はあるが、人情がない人物とだったはず。
その事を思い出していると、廊下からバタバタと誰かが走る音が耳に届いた。
「ば、バルク様、いきなり失礼します」
「えっと、どうしたんだドンガスさん?」
「ハァハァ……。実は今日の出来事を当主様に報告したのですが」
「あ」
しまったぁ!?!?
レッドホットキャタピラをソロ討伐したのを口止めしてなかった。
違う意味で冷や汗ダラダラになっていると、不安そうにしているドンガスさんが口を開く。
「お疲れのところ申し訳ないですが当主様が呼んでますぜ」
「おおう……。とりあえずどう言い訳しよう」
「そ、そこは討伐したと言わないんですね」
「当たり前だろ!」
マジでどうしよう。
頭がズキズキと痛くなる中、本館に向かうために俺は歩き始めるのだった。
「詰めが甘かった」
そもそもドンガス達は俺ではなく、カーマセル家に雇われている騎士。
つまり雇われ主に報告する義務があって、俺がやらかした事も伝わる。
「ば、バルク様、申し訳ありません」
「いや、大丈夫」
デカい体がシュンと縮んでいるドンガスさん。
自分の胸が痛くなりながらフォローを入れた後、覚悟を決めながら本館の屋敷内に入っていくのだった。
〜本館へ移動中〜
本館所属の使用人達は俺が通るたびに怪訝な目でみてきた。
「なんであの悪童が本館に来ているのかしら?」
「聞いた話だと当主様に呼ばれたみたいですよ」
「今度はどんな問題を起こしたんだ?」
まあ、マイナス面が強めの視線が飛んでくるよな。
バルク・カーマセルがやらかした問題が大きいのは俺も知っているし、評判が悪いのも理解ができる。
ただそうやって理解しても嫌な気持ちにはなるので、思わずムカムカしながら不機嫌になってしまう。
「大丈夫ですかバルク様?」
「特に気にしなくてもいいよ。それよりもお父様は執務室にいるんだよね」
「ええ!」
カーマセル伯爵は堅物で表情筋が死んでいる威圧感があるキャラだったはず。
個人的にはあまり相手をしたくないが、呼ばれたら行くしかないのが辛いところ。
「どう転ぶかだな……」
冷や汗どころか体がガチガチに氷そうになる。
内心でアタフタしながら廊下を進んでいると、カーマセル伯爵が待つ執務室の前に到着した。
「はぁ、仕方ない」
覚悟を決めるしかないな。
そう思いながら俺は息を整えた後、気合いを入れて執務室のドアをノックするのだった。
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