第4話・リアルダンジョンに来たけど、主人公じゃないのにレアを引いたんだが?

 更に半月後。

 今日は騎士団と共に王都の近くにある初心者用のダンジョン・始まりの草原に到着した。

 ダンジョン内部は明るく、テレビとかで見た中央アジアのステップに近く感じた。

 

「ここが始まりの草原……」

「バルク様はここに来るのは初めてですな」

「そ、そうだな。てか、なんでダンジョンの中なのに明るいんだ?」

「空間の明るさは研究者いわく、天井に光るコケみたいな物が付着しているみたいですぞ」


 ご都合主義かな?

 まあでも、真っ暗な中で松明片手に戦わずに済むのはありがたい。

 そう思いながら騎士達と共に進んでいると、ゲームでお馴染みのモンスターが現れた。


「あれってモンスターか?」

「ええ、このダンジョンでよく見るグリーン・キャタピラーですな」

「ほうほう」


 俺のデータでは主人公のレベルが1でも倒せる雑魚モンスター。

 今の俺なら倒せるかもしれないが、あくまで習ってきた剣術は対人戦型でモンスターに通じるかわからない。

 内心でドキドキしながらイモムシ型のモンスターを観察していると、ドンガスさんにパンッと軽く背中を叩かれた。


「今のバルク様ならあの程度なら倒せますぞ」

「そ、そうか?」

「ええ! まあ、何かあった時の我々もいるので胸を張って行ってください」

「ははっ、ならその何かを起きないようにするよ」

「我々もそう願ってますぞ」


 少し気を使わせたな。

 さっきよりは胸のドキドキがマシになったので、俺はのんびりと動いているグリーンキャタピラへ近づいていく。

 

「とは言ったものの」


 近づいてわかったが相手の大きさは大型犬くらいの大きさ。

 頭には触覚があり、頭突きをされると今装備している鉄鎧に鈍い音が響きそうだな。

 内心でイロイロ分析しながら、覚悟を決めて腰に吊り下がっているアイアンソードを引き抜く。


「ふう、いくか」


 大声を出すと相手に警戒されるので、小声で気合を入れる。

 そして深呼吸をして息を整えた後、アイアンソード片手にグリーン・キャラピラに斬りかかる。


「ッ!」

「ぴぎぃ!」


 のんびりと動いていたグリーンキャタピラ。

 その後ろから兜割りの要領で、アイアンソードを勢いよくガンッと叩きつける。


「ぴいいぃ!?!?」

「え、い、一撃?」


 不意打ちを喰らったグリーンキャタピラは、そのままザシュと音がして真っ二つに。

 なんか斬る時に多少の抵抗はあったが、意外と刃が入ったので違う意味で驚いた。


「初討伐おめでとうございます」

「あ、ああ。それよりも思った以上に弱くない?」

「確かにグリーンキャタピラは雑魚ですが、一撃で倒せたのは訓練を頑張っていたからです」

「そうか……。って、顔が近いぞ!?」


 お付きの騎士がドロップアイテムを拾ってくれる中。

 ドンガスさんがグイッと顔を近づけてきたので、反射的にパックステップを踏んでしまった。


「ははっ、申し訳ない」

「お、おう」


 貴族相手に失礼を働いた場合、不敬罪で殺される事もある。

 その事はドンガスも知っているはずなのに、壁を越えて構ってくれるのはありがたい。

 ただ、言葉では言いにくいので目を逸らしていると騎士の1人が何かに気づく。


「またグリーンキャタピラを見つけました」

「よくやった! お前らは待機でバルク様がピンチになった時に助けに入れ!」

「「「ハッ!!」」」


 士気が高くない?

 ドンガスさんが率いているのもあるが、それ以上にウオオォと叫ぶ騎士達が怖い。

 内心でビビりながら、俺は片手剣のアイアンソートを片手に別のグリーンキャタビラに斬りかかるのだった。


 ーー


 始まりの草原に現れるのはグリーンキャタピラと、ボスであるビックキャタピラの二種類。

 なので俺は覚悟を決め、騎士達と共にビックキャタピラがいるボス部屋に向かう。


「バルク様にらビックキャタピラはお早いと思いますよ」

「確かにドンガスの意見もわかるけど、ボスがどんな感じか知っておきたいんだよ」

「……わかりました。ただ追い込まれたらすぐに助太刀しますぞ」

「ああ、その時は頼む」

 

 雑魚モンスターとは別格の強さを持つ、ボスモンスターのビックキャタピラ。

 多少は実戦を行っただけの俺が勝つのは難しいが、コチラには原作知識がある。


「よし、いくか」


 ボスエリア。

 半透明の結界に守られた場所で、コンビニくらいの大きさの赤いマダラ模様をもつビックキャタピラ……え?

 

「れ、レッドホットキャタピラじゃねーか!」


 なんでこのタイミングでレアボスを引くかな!?

 レアボスは通常ボスよりもレベルが5以上高く、初見殺しとして多くのプレイヤー達を血祭りにあげた。

 そのレアボスの1体であるレッドホットキャタピラが、首をグワンと上げる。


「ピアイィ!」

「はっ、上等だ!」


 廃ゲーマーを舐めるなよ。

 ゲーム内でこの程度のやつは数えきれないほど倒している。

 その事を思い出しながら、自分の頬をパンと叩き気合を入れる。


「さあこいよ」

「ぴいぃ!」


 コチラの煽りにムカついたのか、レアボスが金切り声で叫んだ。

 その声に耳が痛くなったが、気合いを入れた俺はダッシュで相手に近づく。

 

「はああぁ!!」


 単純なダッシュ。

 レアボスはコチラの動きに反応して、頭に生えている触覚をドンッと叩きつけてきた。

 

「予想通り」

「ッ!? ぴいいぃ!」

 

 腰から引き抜いたアイアンソードを相手の装甲に叩きつける。

 だがガンッと鈍い音がして、コチラの斬撃が弾かれた。

 

「ぐっ! か、硬い!」


 ジーンと手が痺れたので少し痛い。

 レベル的に相手の方が上みたいで、コチラの斬撃は切り傷程度しかなってない。

 しかもレアボスが怒ったのか、口からバスケットボールくらいの炎の球体を吐き出した。


「ぴいぃ!」

「そう来るか! なら、全反射クロス・カウンター!」

 

 相手の口からペッと吐き出だされた炎の球体。

 その攻撃に対し、練習でしか使ってこなかったユニークスキルである反射技の一つを使用。

 すると剣に白いオーラをまとうように光り、炎の球体にぶつかるとそのまま反射した。


「ピイイィ!?」

「流石に炎耐性はあるよな」

 

 120キロくらいのスピードで飛んでくる炎の球体。

 それを剣をバットにするようにカンカンと弾き返し、レアボス相手にぶつけていく。

 

「ぴ、ぴいいぃ!」

「そりゃ学習するよな」


 炎の球体をさんざん反射されムカついているのか、レアボスはぴいいぃ!と大声を咆哮を上げた。

 その時に周りに声が響くので、俺はバックステップを踏みながら体勢を立て直す。


「さあ、第二ラウンドだな」


 今のところはこちらの方が有利だがわからない。

 油断しないように気を引き締めながら、俺はレアボス相手に攻撃を仕掛けるのだった。

 


 

 

 

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