第2話・今のバルクは軽い運動でもバテるのかよ!?
カーマセル伯爵家の屋敷。
その離れにある小さな屋敷がバルクの城らしく、建物内には最低限の人員しか揃ってないらしい。
運ばれてきた朝食を食べつつ、ルイズさんの話をまとめていく。
「人が少ないか……。まあ、今までの事を考えればな」
原作のバルクは傲慢な小物。
その実態は才能のない落ちこぼれで、誰にも認めてもらえない可哀想なキャラでもある。
バルクの情報を思い出していると、ルイズさんが正座をしながらコチラを興味深そうに見てきた。
「あ、あの、バルク様?」
「うん? いや、なんでもない。それよりも朝食おいしかったよ」
「は、はい! ありがとうございます」
ふわふわの白パンに野菜がゴロゴロ入ったスープ。
いつもはカロリ◯イトを食べていた俺には贅沢な食事だな。
個人的にはシェフにお礼を言いたくなったが、今は別の事をやらないと。
「お、おう。それで軽い運動をしたいんだけど大丈夫?」
「部屋に引きこもり気味のバルク様が運動ですか!?」
「なんか言い方にトゲがあるような……」
「も、申し訳ございません!」
「気にしてないから頭を上げてくれ」
原作のバルクはヒョロガリだし運動不足なのはわかるが。
目の前で土下座レベルで頭を下げているルイズさんの頭を上げてもらった後、改めて会話を続けていく。
「あ、ありがとうございます」
「うん、大丈夫。それよりも運動をするならどこがいい?」
「それなら屋敷裏にある訓練場をお使いください」
「わかった」
まずはどれだけ動けるかだな。
椅子から立ち上がり部屋の扉を開けるが……思わず回れ右をした。
「そういえば訓練場の場所がわからないな」
少しかっこ悪いが仕方ない。
恥を忍ぶように食器の片付けをしていたルイスさんにお願いして、敷地内にある訓練場に連れて行って貰うのだった。
〜屋敷内を移動中〜
屋敷内にある訓練場。
ここでは金属の鎧を来た騎士っぽい人達が訓練ており、ちょくちょくコチラに視線を飛ばしてくる。
「お、おい、あの癇癪次男が訓練場に来たぞ」
「あんなガリガリなのに何をしにきたのかしら?」
「もしかしておれ達を見下しにきたのか?」
だいぶボロカスに言われているな。
俺は聞こえない振りをしながら訓練場を見渡していると、立派な顎髭にガタイのいい40代前半の男性が渋い表情で近づいてきた。
「これはこれはバルク様。騎士達が集まる訓練場に何かご用意でしょうか?」
「君達に用はないよ」
「はて? では何用でお越しになられたのです?」
表向きはニッコリと笑っているが、内心では心底めんどそうな感じをしてそうだな。
顔の皮が薄いのは理解したが、無駄に揉めるつもりはないので冷静に言葉を返す。
「軽めの運動をしたいだけだよ」
「う、運動ですか!? あ、失礼!」
「別に気にしてないよ」
さっきルイスさんにも驚かれたしな。
バルクのキャラ的にも自発的に運動するのはほぼあり得ない。
そう思いながら戸惑う相手を見つつ、俺は軽く頭を下げる。
「迷惑をかけるけど運動してもいいか?」
「も、もちろん!」
「助かる! えっと、名前は……」
「自分はカーマセル家の私兵騎士団をまとめるバルガスだ!」
「ドンガスさん、よろしくお願いします」
まずは軽い運動をしていくか。
俺は冗談を流されて硬直するドンガスさんや騎士達をよそに、軽めのストレッチから初めていくのだった。
ーー
運動を開始してから30分。
ストレッチと軽いランニングを終えたが、汗だくで地面にへたり込んでしまった。
「バルクってここまで体力がないのかよ」
荒い息を吐きながら視線を傾けると、鍛え上げられた肉体を持ってそうな騎士達が実戦形式の模擬戦を行っていた。
彼らは重そうな鎧に訓練用の剣や盾を装備しており、カンカンとぶつかる音が訓練場内に響いている。
「な、なんで見られているんだ?」
「さあ? それよりも訓練に集中しましょう」
「そうだな」
騎士達がチラチラと見てくるんだけど?
てか模擬戦中なのに俺の方を見てくる余裕はあるのか……。
あ、1人の騎士がドンガスさんにガンっと頭を殴られたぞ。
「おいお前ら! バルク様が気になるのはわかるがよそ見をするな!」
「「「は、はい!!」」」
「あ〜、やっぱり俺が邪魔かな?」
「いえ! バルク様はそのままで大丈夫!」
「は、はい」
どう見ても気を使われているな。
バルクは貴族社会に悪童として名前が広がっているキャラ。
少なくともゲームではそうだったし、使用人や騎士の反応を見ている限りは間違ってなさそうだな。
「今更善行を積んでも変わるか?」
「あ、あの、先程から何か言っておられますよね」
「いや、なんでもない」
「わ、わかりました」
さっきよりはマシだけど、ルイスさんの体はビクビク震えている。
その姿に少し胸が痛くなるが、バルクがやってきた事を考えると仕方ないか。
「それよりも水を用意してくれてありがとう」
「いえいえ! 私にはこんな事しか出来ませんよ」
「うーん、少なくとも用意してくれた水はありがたいけどね」
「ッ、はい!」
めっちゃ食い気味に頷かれたな。
というか、ルイスさんがどうにも尻尾をブンブン振っている子犬に見えるのは気のせいか?
俺は空になったコップを彼女に返した後、息を整えながら立ち上がる。
「よし、休憩終了」
「ま、まだ動かれるのですか?」
「もちろん」
いやだって死にたくないもん。
コチラを不安そうに見てくるルイスさんを尻目に、俺はランニングと筋トレを再開。
体がガクガクと悲鳴を上げる中、ギリギリまで運動を続けるのだった。
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