第26話 衝突!新生魔王軍四天王!

 新生魔王軍……それも四天王って、急にとんでもないのが出てきたな。

 というか、こいつが出てきたおかげで確証がなかった主君なき騎士団ロードレスナイツの結成理由が紛れもない事実だということになる。

 いや、別にエリオが嘘をついてると思ってたわけじゃないけどね!?


 しかし、どうしたらいいのだろう。

 主君なき騎士団ロードレスナイツに加入して間もない俺が、敵対組織の大物と遭遇してしまったわけだが、……どう対処すれば正解なんだ?


 まあ、こっちがあれこれ悩んだところで、むこうはやる気満々みたいだけれど……。


「どうした、早う剣を抜かんかい。それとも、自身の罪を認めて大人しく裁きを受け入れるというのならば、それでもよいがのう」


「……いや、そんないきなり言われても……」


 困ったなあ。やっぱり戦うしかないのか?

 しかしここでの衝突が後々大きな戦いの火ぶたになる可能性もあるし……。


 そんな風に俺がその場に立ち尽くして頭を悩ませていると……。


「……っ!!?」


 突如、俺の左腕が肩から切断された。


 ……いや、違う。左腕はきちんとついている。

 今のは幻覚……いや、錯覚か?


 驚いてガラクと名乗るスケルトンを見ると、ヤツは無機質な顔のまま軽快に笑った。


「クカカカッ。ワシが送った殺気を正確に感じ取ったか。なるほど、上位モンスターが跋扈ばっこするこの地で無傷でここまでたどり着いただけのことはある。そこいらの凡俗とは一味違うらしい」


「…………」


 殺気を正確に感じ取った……、つまり先ほどの腕が切られたような感覚はヤツの殺気によるものだったということか。

 すげえ!そんなバトル漫画みたいなことあるんだ。


 しかし、これであまり余裕をこいてるわけにはいかなくなった。

 なんちゃら一刀のガラク……、流石四天王ということだけあって相当な手練れであることは間違いない。


 最近戦った中だと、多分レイシアナよりも強いだろう。


「……仕方がない、わずらわしいが相手をしてやろう。この俺に刃を向けたこと、後悔することになるぞ」


「クカッ、威勢だけは立派なもんじゃな」


 そうして俺たちは互いに剣を構え、対峙した。

 静寂に包まれた空間に緊張感が走る。


「では、お手並み拝見といこうかのう!」


 ガラクはこちらに向かって大きく跳躍し、軽々と刀を振り下ろした。

 すっごい長い刀だ。俺の身長ぐらいあるんじゃないか?


 しかし、大振りなおかげで回避するのは簡単だ。

 最小限の動きで斬撃をかわして、即座にカウンターを……。


「……なにっ!?」


 俺が攻撃態勢に移ったその瞬間、ガラクの斬撃がありえない軌道を描いた。

 地面に対して垂直に振り下ろされたはずの刀が、それを躱したはずの俺の方へ真っすぐに向かってくる。


「くっ!」


 強引に身を逸らしてなんとかそれも避けることができた。

 しかし、垂直の斬撃が瞬時に水平斬りに切り替わるなんて、普通ならありえない現象だ。地面を蹴って、一旦ガラクから距離を取る。


「クカカカッ!今のを躱すか!しかし、かなり危なかったんじゃないかの?」


「…………ちっ、そういうことか……」


 さっきの不可解な攻撃の理屈が分かった。

 いや、実際には理屈と呼べるようなものではない。


 ガラクの持つ六本の腕、それが先ほどの直角に曲がる剣閃の原因だ。

 六本腕で一本の刀を持つことで、その圧倒的な腕力であの長い刀を棒切れのように自在に振り回すことができる、ただそれだけの話だ。


 だが理屈が単純なだけに厄介だ。

 あれだけの長物をブンブン振り回されては、純粋な剣術でヤツを上回り、その上で致命傷を与えることは困難を極める。


 それにスケルトンのようなアンデッドモンスターは肉体の疲労というものがないらしい(ガラクは骨だけだけど)。長期戦になれば不利になるのはこちらだ。

 ていうかそもそも剣で切りつけたぐらいでアンデッドを倒せるのかも疑問だが、まあ四肢を破壊すれば戦闘不能にはなるだろう。


 ……そうとなれば俺が目指すべきは短期決戦。


 不意打ちのダークスラッシュで消し炭にしてやる……!

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