え?これって結婚詐欺?【11】

「お、ミホ。久しぶりじゃん」

豆太郎の第一声。チャットだけど。

軽くて調子が良い豆太郎は相変わらずのようだ。


以前、よくチャットをしていた時間にサークルにアクセスしてみた。

そこには、豆太郎ときりんがいた。

そうそう、豆太郎、きりん、そしてあおちゃん。

この時間にはいつもこの三人がいた。そして、きまぐれにハルが顔を出していたんだ。


「ご無沙汰しちゃってごめんね」

「そうだよ。何してたんだよ」

豆太郎の気のいい突込みが入る。

「元気だった?」

きりんが聞いてくれる。

きりんは朴訥とした印象だが、いつも優しい。

「あ、あれ?ミホ?」

あおちゃんが参加してきた。

「あおちゃん」

「ミホ、心配してたんだよ。サークル辞めちゃったのかなって」

「ごめんね。辞めてないよ。最近、ちょっと忙しくて」

「そうなんだ」

「みんな、元気?特に変わりない?」

「うん。そうだな。そんなに、変わりってほどのもんはないな」

「オフ会もたまにあるけど。あまり、変わりばえしないかな」

「あ、でも、前回のオフ会は、素敵なメキシカンのお店だったよ」

「メキシカン?珍しいね」

それぞれの報告めいたチャットに受け答えしつつ、様子を伺う。

ハルはサークルに頻繁に参加しているのだろうか。このメンバーのチャットにもたまには入って来るのだろうか。

「ええと、あれ、ハルは相変わらず、あんまり出てこないの?」

さりげなさを装って聞いてみた。

「ハル?」

「うん。たまにこの時間のチャットに来てたでしょ?」

「そうだね。でも、この頃、来てないよ」

きりんが答えてくれる。

「そっか、でも、ハルって、前からたまにしか来なかったもんね」

「うんそうそう。ちょっと不思議な奴だよな」

豆太郎もそんな風に思ってたんだ。

「オフ会にもいないの?」

「少し前のオフ会にはいたな」

「え?」

「そうそういたいた。3週間ぐらい前かな」

――3週間前。その頃、ハルとはけっこう会っていたけど、そんなこと一言も言ってなかった。

「誰かと話し込んでたよな」

「うん。俺たちとはいつも通り、さらっと話しただけだったけど。たしか、その時、初めて参加した女の子と良い感じだった」

なに?それ――それって、まるで、初めてオフ会に参加した時の私みたい。

ガンっと頭を殴られたみたいだった。

その後のチャットはあまり覚えていない。


結局、この三人の中にハルの連絡先を知っている人はいなかった。

でも、私はハルに会いたい。ハルの声を聞きたい。どういうことなのか、いったい、ハルはどこに行ってしまったのか。


こうなったら意を決して、このサークルの管理をしてくれている代表に聞いてみよう。

もう、それしかない。


「ああ、うん。ハルには辞めてもらったの」

そんな返事が返ってきた。

「え?」

「ハルでしょう?ちょっと、問題を起こしてくれてね」

このサークルの代表はしっかりとした性格の綺麗な女性だ。ハキハキとした口調がスマホを通して聞こえてくる。

「問題?」

「ええ……あ、え?もしかして、こんな電話をかけてくるなんて、あなたも……」

「え?私も?」

「あ、うん。えっと、なんでハルと連絡取りたいか聞いてもいい?」

「あ……はい。あの、急に連絡が取れなくなってしまったから……」

「……連絡……頻繁にとっていたの?」

「ええ、まあ……」

「そう……」

代表が黙ってしまった。

「ええっと、なにか……」

「もしかして、付き合ったりしてた?」

「あ、まだ、そういうわけでは」

ああ、「まだ」とか言っちゃった。

電話口で代表の溜め息のようなものが聞こえた。

「もしかして、お金とか貸してる?」

「は?」

「ハルにお金、要求されてたりしない?」


――ええ?え?どういうこと?


~ to be continued ~

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