出会いはネットサークルで? 【4】

『本好き集まれ』『コーヒーは奥深い』『昭和の漫画を語ろう』『ダイエット大作戦』

などなど。

家にある自分のパソコンを開いてネットサークルを検索してみると、信じられないほどたくさんあった。

これは、選ぶのが大変だわ。

すでにパソコンの前で1時間ほど悩んでいた。

――あ、これ、いいんじゃない?

『ちょっとオシャレにみなとみらい』

横浜のみなとみらい周辺の楽しいこと面白いものなどを共有するサークルらしい。

みなとみらいは私の家や職場からほど近い。しょっちゅう訪れていると言っていいだろう。

みなとみらいのことなら少しは分かる。

そして、そう、みなとみらいの近くに住んでいる人が参加している可能性が高い。

我ながら目のつけ所がいいわ。

恋人や結婚の相手は、やはり遠くより近くに越したことはない。


早速、会員登録をする。

『はじめまして。横浜市に住んでいるミホです!みなとみらい大好きです。色んな楽しいお話できたらなと思います。どうぞよろしくお願いします』

サークルのチャットに打ち込んでみた。

このサークルのチャットは、基本、文字での会話のみで顔は見えない。

すぐにぽつぽとメッセージが帰って来た。

『こちらこそ、よろしく』

『ミホさんのみなとみらい情報も楽しみにしてます』

などなど。

よし、とりあえず、とっかかりはできた。

これからは、サークルのネット上のイベントやチャットに参加して出会いにつなげなくては。


その日から、寝る前の少しの時間がネットサークルでの私のチャット通話時間になった。

サークルに入会してから二週間ほどが経ったある日、いつもどおり私が寝る前にパソコンを開くと、あおちゃんと豆太郎、きりんが画面上にいた。

だいたい、その時間、集まっているメンバーが決まっている。

“あおちゃん”“豆太郎”“きりん”そして今日はいないけどもう一人“ハル”の4人が私と通話時間が合うらしい。

『ねえ、ねえ、今度のオフ会参加する?』

あおちゃんが今日の昼間に流れてきた、来週末のオフ会について聞いてきた。

あおちゃんは若い女の子。ちょっと上品な感じの子で、社会人になったばかりっぽい。

『あおちゃんは参加するの?』

豆太郎が反応する。

『どうしよう。前に行った時はあんまりうまく会話に入れなかったんだよね』

『そうなんだ。俺は楽しかったよ』

『僕も悪くなかった。チャットで想像してた人と全然違ったりして面白かった』

きりんだ。背が高いからきりんなんだって。

『じゃあ、豆太郎ときりんは参加するの?』

割り込んでメッセージを送った。

『あ、ミホ。ミホはメンバーになったばかりだから、初めてだよね』

『うん』

『おいでよ』

豆太郎が気軽に誘ってくる。

ちょっとお調子者っぽい。でも、豆太郎は会話が上手くて、チャットしていると楽しい。

『うーん。ちょっと勇気がいるよね』

考えている風を装ってみる。

私はもちろん、行く気だ。だって、その為にこのサークルに入ったんだもの。

オフ会でいい人をゲットするという目標の為に。

『じゃあさ。あおちゃんもきりんもミホも参加しようよ。向こうで会えるじゃん』

じゃんっていう言い方は浜っ子らしい。豆太郎は横浜出身なんだろうな。

私もよく使ってしまう。

『そうだね』

あおちゃんが乗り気になったようだ。ク

まあ、ライバルが増えるっていうことになるかもしれないけど、初めて参加するところに少しでも知っている人がいるのは心強い。

『じゃあ、決まりな。きりんもミホも来るよな』

『わかった。行くよ』

きりんが返事をした。

『私も行く。よろしくね』

私もメッセージを送る。

『そういえば、今日はハルがいないね』

あおちゃんからの呟くようなメッセージ。

『今度、ハルにも来るように言っておくよ』

豆太郎がそんな返事をしていた。

ハルは他の三人ほど、チャットに参加しているわけではない。たまに現れる。

ちょっと謎めいた感じ。男の人らしい。

いったいどんな人なのか、一番興味があると言っていいかもしれない。

陰のあるクールな感じかしら。それとも、ただの暗いオタクだったりして。


ニヤニヤしながらパソコンを閉じて、来週末はどんな服装で行こうかと、タンスの中の服を思い浮かべる。

うーん。やっぱり、少し新しい服を買いに行かなくちゃならないかしら。

そんなことで頭を悩ませながら、いつの間にか寝てしまっていた。


~ to be continued ~

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