第4話(2)

第2話 シーズン1/リポート4/セクション2

救世の血 セイバーブラッド シーズン1 導かれる希望


4.ヒルツ


 宇宙暦が始まってすぐ、地球側と宇宙側の関係に亀裂が入り、戦争が勃発した。地球出身のエリザベスは、強制的に地球連合軍の軍医に配属となった。とは言っても、彼女はまだ研修医なので、ベテラン医師の補助サポートを担当していた。

 エリザベスが属している医療チームは最前線に送られて、悪夢のような現実を目の当たりにした。

 日を重ねるごとに死傷者が増えていき、戦況は激化し、両軍の兵士は死力を尽くしていた。

 地球連合軍の軍事医療施設には、数え切れない怪我人が搬送されていき、治療が間に合わず、息絶えた兵士はゴミのように処理されていた。エリザベスはその光景を目にして、気が狂いそうになっていた。

 

 当時のエリザベスは血まみれの兵士に助けを求められたり、襲われたりする夢でうなされて精神が病んでいった。こうして、彼女は医療従事者になることを諦めた。


「成程…触れられたくない記憶かこか…」

「あいつは技術屋エンジニアの素質がある、うちに帰ってきて正解だ」

「分かった…そろそろに入ろうか」

 リヴァーの質問は終わり、スティングは自身が開発したWMの解説を始めようとした。


「この機体は二十年前に設計・開発されたWMを基盤もとにしていてな…ただ、アレンジを加えたから、ほとんど原型がない…コードネーム〝ウォム〟愛称は〝ヒルツ〟だ」


 Weapons Operation Machine=通称ウォムは、次世代有人操縦式汎用戦闘兵器、WMの新型試作機である。

 かつて、スティングを含む有能な技術者たちは、ウォムの原型機の開発に取り組んでいたが…

 

 地球連合軍側と技術者との間に確執が生まれて、それが原因で開発・生産に至らなかった。それから兵器生産プランの改変に伴い、スティングたち技術者は軍側の方針に嫌気が刺して、集団退職を決断。彼らはウォム及びWMの関連データの情報窃盗をした後、行方をくらますのだが…


「…ウォムの開発・設計データは軍の兵器開発部に残っていない、独自でこっそりと造っていたわけだ」

「これはちゃんと動くのか?」

「まだ未完成だ、テストパイロットも見つかったし…仕上げに取り掛かろう」

 リヴァーは、不安げな表情を浮かべた。


「どう、はかどってる?」

 エリザベスが人数分のコーヒーを淹れて、地下に籠る男2人の様子を見に来た。

「話が弾んでな…今から作業に取り掛かる」

「先が思いやられるわね、手伝えることは?」

「ない!…お前も出番になったら呼んでやるぞ」

 スティングはそう言って、1人の世界に入り、リヴァーたちは暇を持て余していた。その一方で…


「………」

 ハワード家宅の周囲には怪しい目がいくつもあり、それらは3人をずっと監視を続けていた。

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