第4話(1)

第2話 シーズン1/リポート4/セクション1

救世の血 セイバーブラッド シーズン1 導かれる希望


4.ヒルツ


 エリザベスは、自身で造った戦闘兵器WMをリヴァーに披露した。

「やはり、製造しつくっていたのか、軍にばれたら…」

「ええ…女将軍に釘を さされたわ」

「これを造った目的は?」

 エリザベスは、古びた椅子に座り込んで、リヴァーに説明しようとした。

の影響でしょうね…」

「俺に見せた理由は?」

「あなたなら見せていいと思って…〝カノン〟っていうの…」


「…なかなかの出来だが、わしの足元にも及ばんな」

 その時、リヴァーたちの間に、スティングが割って入ってきた。

「パパ…ずっと聴いてたの?」

「ああ、お前たちの会話はなしに参加させてくれよ…ヒック」

 スティングは少々酔っていた。

「まさか、あんたもWMの開発を…?」

「ん…気になるか?」

「こっちは正体を明かしたんだ、ただのジャンク屋の店主オヤジじゃないな?」

 リヴァーが問うと、ハワード父娘の表情が一変した。そして…


「…ちょっと待ってろ」

 スティングは一旦、地下シェルターを出た。それから数分後、彼は再び姿を現した。


「そのケースは?」

「まあ黙って見てろ」

 スティングは自室からアタッシュケースを持ってきた。中身は…


「それは…」

に照らせ」

 スティングはケースの中身を出して、スケールスキャナーを使用するよう、エリザベスに指示した。すると…


 ケースの中身が巨大変化していき、それはエリザベスの造ったWMより遥かに大きい人型兵器ロボットだった。重装甲、がっちりとしたフォルム、鎧兜のような頭部が特徴で、完成の日は近いようだ。


「これは…何だ?」

 リヴァーは見上げなら、スティングに訊ねた。

「わしのだ」

「…やっぱり敵わないわ」

 エリザベスは父親スティングの実力を思い知ったようだった。


「これもWMなのか?」「いいや、別物だ」

「どう違うんだ?」「新型の試作機といったところかな」

「あんた、何者だ?」

 リヴァーが訊ねると、スティングは軽く笑みを浮かべた。


「…昔、地球連合軍の兵器開発部で働いていたんだ」

「パパはWMの技術者だったの」

「元々は推進器スラスター専門だ、シャトルや人工衛星設計に携わっていた」

「優秀だったのか?」

「まあな、自分の才能が戦争に利用されていると思うと、胸が痛むがね…」

「兵器開発から退いたなら、眼の前のデカブツは必要ないはずだろう」

「パパ…」

 リヴァーの質問は続く。ハワード父娘は理由こたえを包み隠さず話そうとした。


「…お前と出会ったのは運命かもしれないな」

「どういうことだ?」

「地球連合軍を嫌っていることは話したな…奴らのせいで母国アメリカを失った、そこで我々はある決意をしたんだ」

「決意とは?」

「反旗をひるがえすつもりだ…すでに作戦は実行されている、宇宙の民コスモネーション…お前の力が必要なんだ」

 リヴァーはスティングの発言に困惑していた。


「俺をどうする気だ?詳しく話せ」

「………!」

 エリザベスは、父親を心配そうな目で見ていた。

「作戦は既に実行されている…世界各地に同士なかまがいてな、密かに連絡を取り合っている、お前のような宇宙出身者にも協力してもらっているんだ」

「俺を仲間にする気か?」

「不服かね?」

「…お前はどう思っているんだ?」

「え?」

 リヴァーはエリザベスをじっと見て、彼女の気持ちに触れようとした。


「親父は反乱分子テロリストだ、納得しているのか?」

「はじめ聞いた時は驚いたけど…父の考えに反対する気はないわ」

「確か、医師の免許を持っていたな、医療そっちを志す気はなかったのか?」

「ええ…考えは変わるわ、私は父のようなメカニックになるって決めたの!」

「…何か事情があるのか?」

「それは………」

 エリザベスは何故か表情が曇り、言葉が詰まった。


「娘はわしの意見に賛同しただけだ、WMを造ったのは、自身の技術力センスを試すため…実戦向きなのはわしが造ったデカい方だ」

「これは有人機だろ?誰が操縦するんだ?」

「何言ってる?…」

「はあ?何を言っている?」

「お前がパイロットだ!」

 リヴァーは、スティングの衝撃発言で絶句していた。夜が更けていき、話が長くなりそうなので、彼らはひとまず朝になるまで眠るのであった。


 翌朝、地下シェルター、ハワード父娘が開発したWM2機の前で、リヴァーとスティングが談話していた。


「…俺が何故、新型WMのパイロットに?」

「今までWMを操縦した経験は?」

「宇宙開拓軍で操縦訓練テストを受けた、任務しごとのためだ」

「ならば問題ない…資格ありだ」

「こっちのの方はどうする気だ」

 リヴァーは、エリザベスが開発したWMのことが気になっていた。


「武器を装備すれば使えるが…娘に任せよう」

「一ついて良いか?」

「何だ?」

あんたの娘エリザベスのことさ…」

「うちの娘の何が知りたい?」

「医師だった頃があるようだが…話してくれそうにない…何かあったのか?」

 リヴァーがエリザベスのことで質問すると、スティングは仕方なく答えようとした。

「あいつにとって、なんだよ、触れたくない過去だ…」


 かつて、エリザベスは宇宙開拓区に位置する大学に進学、医学を専攻した。そこでは高度な医療教育が充実しており、彼女は医療従事者の道を目指すのだが…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る