第2話(1)

第2話 シーズン1/リポート2/セクション1

救世の血 セイバーブラッド シーズン1 導かれる希望


2.ジャンク屋

 

 独立連邦西部インデペンデンス・フェデラル・ウエストテリトリーIFW ネオ・シリコンバレー支部

 ある朝、サングラスをかけた西部劇カウボーイスタイルの白髪男性は、親しい近隣住民に頼まれて、故障した冷蔵庫を修理していた。彼の名はスティング・ロック・ハワード。ジャンク屋の経営者だが、今は隠居のようなもので、店のことはほとんど実娘に任せている。


「おーい、終わったぞ」

「助かったよ、こんな時間に悪いな」

「なーに、だ」

「骨董品みたいなものだがまだまだ現役だな」

「古いものに愛着があるのは良いことだ」

 近隣住民はお礼のコーヒーをスティングに淹れた。彼らは適当に世間話をして別れるのだが…


「………」

 スティングは用事を済ませて帰宅するが、何故か表情が険しかった。その理由は…


 スティングのジャンク屋

 エリザベスは、意識不明のリヴァーを救おうと、自身の自宅兼職場へと運んだ。普段、彼女は父親が営むジャンク・修理専門店で働いているが、医師免許を持っており、傷ついたリヴァーを手当てした。

 リヴァーはエリザベスに助けられて、彼の回復を待つわけだが…


「…!」

 リヴァーは意識を取り戻して、瞬時に現状を確認したが…


「…あっ気が付いたのね」

 その時、エリザベスはリヴァーの様子を見に来た。そして…


「…誰だ、お前は?」

「私はエリザベス、あなたこそ名前を教えてよ」

「お前に名乗る名などない…!」

 リヴァーは無礼な態度を取り、エリザベスに襲い掛かった。

「ち…ちょっと何するの?」

「悪いが死んでもらう」

 リヴァーはエリザベスの背後に回って、頭蓋骨固めヘッドロックをかけた。彼女は苦しさを訴えて、窒息障害に陥っていたが…


「…うちの娘を放せ、好き勝手なことはさせん」

 リヴァーがエリザベスを殺そうとすると、彼女の父、スティングが現れた。彼はを構えており…


「それは…俺のだ…返せ!」

「娘を放してくれたら、返してやるよ」

「ちっ…」

 リヴァーは所持銃を返してもらおうと、仕方なくスティングに従った。


「…パパ、助かったわ」

「だから、よそ者に関わるなと言っただろ、恩を仇で返す不届き者だ」

「…お前たちが助けてくれたのか?」

「ようやく気付いたか、は護身用か?何者だ?」

 リヴァーは抵抗せず、身分を明かそうとした。

「…俺の名はリヴァー・ボウイ、宇宙開拓軍に雇われている派遣要員だ」

「宇宙の傭兵スパイか…そういえば、昨晩、軍事施設で騒ぎがあったようだが…お前の仕業か?」

「ああ、任務で偵察・破壊活動を実行した」

「成程、軍の連中が血眼になって捜しているだろう」

「おたくらのお陰で助かったよ…すまなかったな」

 リヴァーはエリザベスと目を合わせて、襲ったことを詫びた。


「うちの娘に拾われたのが幸いだったな、普通の医者だったら軍に通報していただろう」

「いろいろと世話になった、厄介者はとっとと出て行くよ」

「すぐ出て行くことないわ、怪我がちゃんと治ってないし…」

「あんたが治療してくれたのか、もう傷口は

「馬鹿なこと言わないで、そんなわけ…!」

 ハワード父娘は、自分の目を疑った。リヴァーの負傷箇所はほとんど完治していた。ここで彼の秘密を知ることとなる。


「お前、どうも普通じゃないな」

「ああ、俺は新種人間リボーンバイオだ」

「〝リボーンバイオ〟…」


 リボーンバイオは、宇宙移民国家の高度な遺伝子工学テクノロジーで造られた試作型新人種である。受精・妊娠せずに、遺伝子/ゲノム編集による方法で人工的胎児を誕生させたが、当初は自然の摂理に反していると物議を醸していた。

 だが、リボーンバイオが人間社会に貢献していき、年月が経つにつれて世間の価値観に変化が起きた。現在は第一世代が宇宙移民と共存しているが…

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