第24話 それから
アルカードの遺骨が入った小さな箱を、サラは丁寧に綺麗な青い布で包んで荷物の底にしっかりと入れる。
宿屋の窓からは、遠くに『丘の屋敷』の残骸が見える。以前の怖い雰囲気はなくなり、ただそこには荒れ果てた屋敷の跡があるだけという印象だった。
オルファの情報だと、このまま放置してまた山賊の根城などにされても迷惑だから、時期を見て町の者で手分けして更地にする計画だという。見事な庭木は残して、果樹園をやりたいという声が出ているらしい。
それもいいと思った。あの場所で動物や植物がすくすくと育つ様子を想像すると少しだけワクワクする。
サラは窓枠に手を添えて、屋敷がよく見える位置に立ち、大きく深呼吸する。
ヒンヤリとした空気が、荷造りで火照った身体に気持ちがいい。
思えば、この町に来てから色々なことがあった。
性格の歪んだ
——修道院に戻ったら、院長になんて説明しようかしら。それとも、まだもう少し旅を続けるのもいいかも。
荷物をまとめながらサラの口元には自然と優しい笑みが溢れる。
「はいはーい!おウチに帰るまでが旅路ですよ!」
突然、部屋のドアを乱暴に蹴り開けてオルファが入ってきたため、サラは肩を跳ねさせた。
「よし!忘れ物はないか?アルカードの遺骨は持ったか?それじゃ、故郷の地を目指すぞ!」
「アナタはここが故郷ではないですか。なぜ旅支度をしているんですか?」
オルファの堂々たる態度に気押されたサラはおずおずと聞く。
「もうあの強力な守護霊もいないんだろ?お前だけじゃ故郷まで旅するのは無理だよ。
俺がついていってやるよ」
一瞬、やっぱりシモンは居ないのだという寂しさに駆られそうになるが、今はそれどころではない。
「いえいえ、ここの魔物を退治したので無事に司祭になれたと聞きましたよ。町の司祭となれば責任は重大。他にやることがあるのでは?」
「そうだよ、俺が司祭だ!」
オルファが新調した服を誇示するように胸を張る。祓魔師の服のロイヤルブルーだった箇所が、より高貴そうな紫で染め上げられ、神聖さを増した衣装に身を包む彼は以前より少し大人びて見えた。
「元から俺の目的は司祭になることなんかじゃねぇよ。母さんの仇も取れたし、親父のクズさも十分にわかった。もう、ここに未練なんてないんだ」
オルファが目を輝かせながら言う。
「俺もアンタみたいに、世界を見て周りたいんだよ!」
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