第8話

 裕太は自分の目と耳を疑った。


 佳子の胸はデカかった。


 それこそ、ボロンと鳴る程に。


 佳子は言っていた。


 リアルとフィクションは別物で、二次元と三次元では話が違う。


 その通りだと裕太は思った。


 ゾーニングがガバガバの情報化社会だ。


 二次元のおっぱいなら、裕太だって見慣れている。


 けれど三次元の、それも生のおっぱいは初めてだ。


 それもこれ程大きくてエロ美し可愛いおっぱいは!


 再び停止した時の中で、裕太の中の武田信玄が仏の顔で書をしたためる。


 曰くこのおっぱいは――。


 其のデカき事山の如し。


 其の白き事マシュマロの如し。


 其の美しき事神の如し。


 其のエロき事おっぱいの如し(おっぱいのエロさを他の物で例える必要はない)。


 其れ即ち乳輪火山にゅうりんかざん


 色白の佳子のおっぱいは、天女の隠れ住む白き霊山のようだった。


 頂上には桜色の桃源郷が広がり、中心は秘境の如く深く没して隠れている。


 だがよく視れば、祠の奥から佳子のように恥ずかしがりやな天女がこっそり顔を覗かせている。


(こんなの天岩戸あまのいわとに隠れたアマテラスじゃん!)


 そんな事を裕太は思った。


 ちょっと意味不明である。


 でもそれくらい佳子のおっぱいは美しく、神秘的で、神々しかった。


 それでつい、言ってしまった。


「「でっか!?」」


 佳子がハモッた。


 裕太と同じように前屈みになり、ギンギラギンにギラついた目をして相手の秘部を凝視している。


「そ、そんな事ないと思うけど……」


 思わず裕太は前を隠した。


「隠さないで!」

「ひぃっ!?」


 ピシャリと言われて手を離す。


「あぁ……。あぁ……。あぁ……! これが松永君のおちんちん……。なんて立派で大きいのかしら……。雄々しくて凶暴なのかしら……。こんなの最早槍じゃない……。神殺しの槍チンギヌスよ……」


 博物館にやってきた歴史オタクみたいにウットリしながら間近でおちんを観察する。


 その言葉が、視線が、はふはふと喘ぐ熱っぽい吐息が、裕太の心と体を愛撫した。


「ち、近いよ内田さん!? もうちょっと離れてくれると……」

「いいじゃない! どうせこの後私の中に入るのだし。密着して貫通するのだし。その前によく見ておきたいのよ」

「で、でも、恥ずかしいよ……。こんな事になるなんて思ってなかったから……。その、ちゃんとお風呂で洗ってるけど……、昨日の事だし……。今日は体育もあったから……く、臭いんじゃないかと……」

「ッ!?」


 それを聞いた途端、佳子は目の色を変えて身を乗り出した。


「ひぃっ!?」


 襲われると思った。


 ぱっくりと食べられてしまうのだと。


 恐怖に身をすくめるが、裕太は抵抗しなかった。


 内心ではそれもアリかなと思ったのだ。


 だが、そうはならなかった。


「……内田、さん?」

「クンカクンカ……スーハ―スーハー……ハスハスハス……。う~ん、トレビァン……。グッドスメルだわ……」


 佳子は薔薇の花束の芳香に酔ったみたいにウットリしていた。


「ちょっと!? 嗅がないでよ!?」


 思わず佳子の頭を掴んで引き剥がそうとするのだが。


「いいじゃない! 減るもんじゃなし!?」


 佳子はガッチリと裕太のお尻を掴んで抵抗する。


「恥ずかしいんだってば!」

「良い匂いよ! 恥ずかしがる事なんかどこにもないわ!」

「そんなわけないでしょ! 昨日の夜から洗ってない体育で蒸れたおちんちんの臭いなんだよ!?」

「それがいいんじゃない! 甘酸っぱい松永君の濃厚なフェロモンを感じるわ! それに、僅かに香るおしっこの匂いも」

「ぅ、あぅ……。だ、だって、仕方ないでしょ……。そこはおしっこが出る所なんだから……」


 恥ずかしさで裕太は溶けてしまいそうだ。


「はぅぅぅっ……。蒸れておしっこ臭くなったおちんちんの匂いを嗅がれて恥ずかしがる松永君……。なんて可愛いのかしら……。ダメよダメ……。そんな顔で懇願されたら、やめられる物もやめられなくなってしまうわ……。歯止めが効かなくなってしまうわ……。理性のタガがぶっ壊れて、今すぐこれを頬張りたくなってしまうじゃない……」


 ウットリ言うと、佳子の舌が唇を舐めた。


 それだけで、裕太の腰にビリビリと甘い電流が走り、硬くなったソレが興奮した犬の尻尾みたいにブンブン暴れる。


「ダメだってばぁ!?」


 たまらず裕太は大声を出した。


 驚いて、佳子はストンとその場に尻餅を着く。


「ご、ごめんなさい……。私ったらなんて事を……。松永君は嫌がってたのに、無理やり迫るような事をして……。本当にごめんなさい……。そんなつもりではなかったの……。ううん、それは嘘……。完全にそういうつもりだったわ……。松永君のおちんちんが素敵過ぎて、頭がどうにかなってしまったの……。無様にも発情して、我を忘れてしまったの……。これでは彼女失格ね……。う、うぅぅ……。謝罪の言葉も見つからないわ……」


 佳子がその場に泣き崩れた。


「ぼ、僕の方こそごめん! いきなり大きな声出して! そんなつもりじゃなかったんだ!」

「いいのよいいの……。どう考えても今のは私が悪かったわ……。初めて見る男の子の、それも初めての彼氏の、松永君の大きくて立派なおちんちんに魅了されて、恥ずかしげもなくがっついてしまったの。あれでは怖がられて当然、嫌われたって仕方ないわ……。ぐすん……」

「泣かないでよ!? そりゃ確かにちょっとは怖かったけど! そ、そういうのも嫌いじゃないって言うか……。内田さんになら襲われてもいいって言うか……。だから、内田さんの事嫌いになったりしてないから!」

「……それならばいいのだけれど」


 心底ホッとしたように佳子が胸(特大)を撫でおろす。


 と、今度は拗ねるような上目遣いで裕太を見つめた。


「だったらあんなに大きな声を出す事もなかったと思うのだけれど……。そのまま私にぱっくんちょされたって良かったと思うのだけど」


 今すぐにでもそうしたっていいのよと言いたげに、佳子の視線がおちんを向く。


「それはだめ! イヤじゃないけど今はダメ! やるなら今度にして!」

「どうして?」

「もう出ちゃいそうだから……」


 一瞬佳子はポカンとした。


 意味が分かるとハッとして、嬉しそうにソワソワとした。


「で、でも、まだなにもしていないのよ?」

「そうだけど……。僕、童貞だし……。彼女だって居た事ないし……。内田さんに告白された時からもう、ずっと興奮しっぱなしだったんだ……。内田さんと並んで歩いてるだけでもムラムラして、一緒にエッチな話をしているだけでもいけない気持ちになっちゃって……。内田さんのおっぱいだって凄くエッチで、プニッとしたお腹周りも最高で……」

「はうっ!?」


 真っ赤になって佳子はお腹を隠した。


 確かにプニッとしているが、太っていると言う程ではない。ぽっちゃりですらまだ遠い。精々ムッチリと言った所だろう。


「隠さないで」

「で、でも、恥ずかしいわ……。こんなだらしない体……」

「それがいいんだよ。凄く良い。最高にエッチだと思う。それで僕も興奮しちゃって……」

「もう出ちゃいそうなの?」

「ごめん……」

「謝る事なんてなにもないの! それって凄く素敵だわ! だって松永君は、こんな私の身体でもこんなに興奮してくれているんでしょう? それって凄く嬉しい事だわ! 安心して、誇らしくて、私もエッチな気持ちになってしまうもの! 可愛くて、可愛くて、可愛すぎるわ! あぁダメよ、ダメなのに、また理性のタガが外れて松永君を襲ってしまいそう……。ねぇ、いいでしょう? 襲っちゃってもいいんじゃないかしら? 松永君だって、イヤではないのでしょう?」

「……イヤじゃないよ。全然イヤじゃない……。むしろ、内田さんみたいな子に襲って貰えるなら大歓迎だよ」

「だったら!」

「でも、今はイヤなんだ……。こんな事言ったら引かれるかもしれないけど……。こんな事に拘るのは変なのかもしれないけど……。でも、僕の初めては内田さんとのエッチに取っておきたくて……」

「ヒュコポォッ!?」


 佳子が息を飲んだ。


 暫く茫然とし、目に涙を浮かべる。


「なによそれ……。なんなのよそれ……。素敵過ぎるわ松永君。エッチ過ぎるわよ松永君! あなたっていう人は、いったいどれだけ私を欲情させたら気が済むのかしら!?」

「うわぁ!?」


 上だけ脱いだ格好で、佳子が裕太を押し倒した。


「だったらしましょう。今すぐしましょう! 私だってね松永君。もう、限界なの」

「で、でも、内田さん……」

「いいのよいいの。すぐに出てしまったって気にはしないわ。私も同じだから。きっと入れた瞬間に達してしまうもの。それにこれは儀式みたいなものでしょう? 私の処女で松永君の童貞を卒業する儀式。松永君の童貞で私の処女を卒業する儀式。ただそれだけの神聖な儀式でしょう? まだ時間には余裕があるし、松永君がその気なら、楽しむ為のエッチはその後にゆっくりしたらいいじゃない」

「そ、そうだけど……」

「ごめんなさい。もう本当に無理だから。こういうの嫌いじゃないって知ってしまったし。襲うわね、松永君」


 スカートの中で下着をずらし、佳子は裕太に襲い掛かった。

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