第5話 アグレッシブヒート

 フランス戦線。強襲輸送艦コペンハーゲンでイギリス周辺国に電撃的に派遣されるタリエシン部隊。ここでもタリエシンは猛烈に稼働し、圧倒的な戦力を見せ戦力図はイギリス側が押しに押していた。

 タリエシンは陸戦兵器であり同じ陸戦用車両である戦車には圧倒的優位性を持つが、戦車の天敵であるヘリコプターには弱い。しかし、レールガン・リメサイヤを自身の直上の射角も取れる事から全く無力というわけでもない。

 フランス軍はタリエシンの急所に気付き、対応策としてヘリコプター部隊を大量投入し包囲を仕掛けていた。

 ヘリコプターの大群のミサイルポッドから無数のミサイルが発射される。リメサイヤでミサイルを撃墜しつつ、高速機動で距離を取り飽和攻撃はいつまでも続かない。そこに賭けるしかない。

「クリスチャンだったかお前!」

「さあな、忘れたよ!けど神からは愛されてるぜ!」

 それと同時に戦車部隊も投入される。フランスは全力だ。

「戦車だ。ヘリからの攻撃はいったんやむだろう。戦車部隊を叩け!」

 エビイシは全隊に指令を出した。

 戦闘中に一度も動きを止めないでいたエビイシ機は奇妙な反応が始まっていた。機体内部の熱量が上がり続け、機体の動きが異常なまでに高まっていた。

「くっ、熱がすごい。デビッド、そっちはどうか」

 応答がない。撃破されたとは思いたくない。フランスからの攻撃はすさまじい。

 敵からの攻撃を回避し、攻撃をするため動き続けるエビイシ機は特殊な放熱状態「アグレッシブヒート」と呼ばれる状態になっていた。戦闘中、動きを止めず動き続けると、熱が上がり続け、エビイシは狼狽した。

「ああ、熱い。なんだこれは。熱い!」

 機体内の温度も、機体自体も温度が上昇し続け、その分だけ機動性が爆発的に増していく。タリエシンの筋肉が最活性している。地面を蹴り走り出す時に土煙が激しく上がるほど、勢いよく走りだす。ヘリコプターの攻撃も発射されてからかわすことができるほどに素早く動く。エビイシの視線より先にタリエシンの視覚センサーが動く。

「これは……俺の操縦より先に動いていく感覚さえある……!」

 異常なほど加速し、上空にいるヘリコプター部隊を激していくエビイシ機。あたりには撃墜されて落下したヘリコプターの残骸が散らばる。

「はぁはぁ……熱い、だがかなりの数を落とした。デビッド、どこだ」

 味方機は密集し、装甲を強化した接近戦用の機体を盾にして持ちこたえていた。通信ができなかったのは敵のジャミングだったようだ。焦ったエビイシが突出した形となっただけだった。

「全機反撃だ!」

 敵の攻撃がいったん止まったところにリメサイヤの一斉射撃を行った。エビイシの猛攻で混乱していたヘリコプター部隊はこの攻撃により瓦解、陣形を維持しきれなくなり退却を始める。


 


 イギリス軍基地

 「現在、ソンゴルヅ熱病に感染している人間をどうにかして見つけろ。かつての感染者ではなくウイルスそのものがどうしても必要だ!」

 タリエシンの機体数が頭打ちになる試算結果が出て以降、軍上層部ではもはやなりふり構わない行動が目立つようになってきた。

 軍上層部は細胞分裂や新陳代謝が肉体の兵器化関わっていると考え、ウイルス自体を手に入れ胎児に感染させタリエシンの増産と独占をもくろんでいたのであった。

 イギリスの最終目的はEU圏乗っ取り、その果てにユーラシア大陸の征服を行い大英帝国の復活である。 

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