第18話 動画に出演!?
すると、それを見ていた小野くんが思いっきり吹き出した。
「拓真、なに笑ってるんだよ」
「いや、これで笑うなって無理でしょ。なんなら、もう一度見てみる?」
そう言って小野くんは、スマホの画面を見せる。
そこには、私達のさっきの様子が映ってた。
って、撮ってたの!?
当然そこには、みっともなく怖がる私の姿があった。
「け、消してーっ!」
「はいはい。けど、ちょっと惜しいかも。これ公開したら、ウケるかもしれないよ」
まさか、冗談だよね。
そう思ったけど、五十嵐先輩も大きく頷いた。
「確かに。奈津の怖がりようは100点だし、その後の怜央と恭弥のやり取りも面白かったからな。俺達の動画は学校の奴らに出てもらうことだってあるし、公開するのもありだ」
嘘でしょ? 私がスートの動画に出るの?
けど五十嵐先輩は、一度落ち着くように息をつく。
「まあ、それはあくまで、奈津がやりたいって言ったらの話だ。奈津は普段、顔を隠して配信してるだろ。顔出しが嫌ならやめておくか?」
よかった。
五十嵐先輩の言う通り、顔出しは怖い。だから小野くん達には悪いけど、断ろうと思った。
だけど……
(待って。顔出しがダメなのは、亜希の話だよね?)
地味で華がない私、亜希が顔出し配信なんかしたら、きっと笑われる。バカにされる。
それが怖くて、マスクダンサーっていう顔を隠しての配信をしていたけど、今の私は奈津。
もちろんどっちも私には違いないんだけど、亜希として顔出しするより、遥かにハードルが低い気がした。
「オレ、出てもいいかも」
「えっ、いいのか?」
五十嵐先輩、それに他のみんなも、意外そうに声をあげる。
私だって、いくら奈津になってるっていっても、普通ならこんなことやらない。
だけど……
「みんなと一緒に何かやってるの、どこかに残ったら嬉しいなって思って」
こんなこと言うなんて、自分でも驚いてる。
だけどそれくらい、スートのみんなといる時間は、私にとって大事なものになってるのかもしれない。
その夜。私は部屋で、一人スマホを眺めてた。
あの動画は、あの後色々編集されて、所々にテロップを入れたり、余計なところをカットしたり、小野くんの作った曲をBGMに使ったりした。
ただ録画しただけのものより、数段面白くなったと思う。
それが公開されたのが今から数時間前。だけど、私はまだそれを見ていない。
だって、大勢の人に向けて配信されてるんだよ。それに自分が出てるなんて、いくら奈津になってるっていっても、やっぱりちょっと恥ずかしい。
それに、気になるのがコメント欄。
スートのみんなを見たかったのに、変なのがいるって書かれてたらどうしよう。
「見ようかな。でも、心の準備ができない」
そんなことを言ったのは、これで何度目だろう。
その時、スマホが震えて、麗ちゃんから電話がかかってきた。
「亜希、スートの動画見たよ! しっかり映ってた!」
実は麗ちゃんに事情を話して、動画を見て感想を聞かせてほしいって頼んでたの。
「私、変じゃなかった?」
「変じゃない変じゃない! そんなの、コメント見ればわかるでしょ!」
「そ、それが、まだ見てないの」
「はぁっ!? なにそれ!」
麗ちゃんは凄く驚いて、それから大きく声を張り上げた。
「いいから早く見て! 凄いことになってるんだよ!」
えっ? 凄いことって、いったいなに?
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