第11話 とんでもない豪邸
スートの人達に話を聞きたい。
そう言った私は、九重くんに連れられ、ある場所へとやって来た。
その、ある場所というのは……
「な、なにこれ?」
それは、信じられないくらいの豪邸だった。
ただ大きいだけじゃなくて、まるでお城って思うくらい絢爛で美しい。
そんな場所に、九重くんは当たり前のように中へと入っていく。
「か、勝手に入っていいの? ここってまさか、九重くんの家?」
「違う違う。俺じゃなくて、瞬の家。広いから、俺達が集まる時は大抵ここなんだ」
「そ、そうなんだ」
五十嵐瞬先輩。スートのリーダーで学校一の秀才ってのは知ってたけど、こんな凄いお金持ちなんだ。
九重くんは着いてくるように言うけど、こんなところに私なんかが入っていいの?
「あ、あの。ここ、ドレスコードってある?」
「あるわけねーだろ。何言ってんだ」
九重くんは吹き出すけど、私は本気で心配なの。
もし必要なら、男装してる今は、タキシードとか着なきゃダメだったのかな?
それから家の中に入っていくけど、扉を開けたら、大人の人が出迎えてくれた。
どうやらお手伝いさんみたい。
「九重様、いらっしゃいませ。お友達の方も、話は瞬坊っちゃまより聞いております」
「は、はい……」
私は、こんなことになるなんて聞いてません。
それからお屋敷の中をさらに案内され、奥にあるひとつの部屋に通された。
「ひ、広い」
部屋の中を見て、思わず声が出る。この中に、私の部屋がいくつ入るかわからない。
作り自体はシンプルで余計なものはほとんどないけど、フローリングの床と、壁一面が鏡張りになっているのが特徴だった。
それに、いくつかの機材が置いてある。
「まるでダンススタジオ。って言うか、これって」
さっき見たスートのダンス動画を思い出す。
スートのみんなが踊っていたのは、ちょうどこんな感じの部屋。というか、多分ここだったんだよね。
てっきり、どこかのスタジオを借りたのかなって思ったけど、あれって五十嵐先輩の家だったの!?
けど、いつまでも驚いている場合じゃない。
実はこの部屋には、私と九重くんが来るより先に、3人の男の子が待っていた。
「やあ、いらっしゃい。君が、マスクダンサーさん?」
最初にそう言ってきたのは、この家の子でもある、五十嵐瞬先輩。
さらに、残る二人もそれに続く。
「恭弥のやつ、本当に連れてきたんだ」
「名前なんて言うの? 僕らのこと知ってる?」
小野拓真くんに、日比野怜央くん。スートのメンバー、全員集合だ。
ジロジロ見られて、男装してるってわかったらどうしようと思ったけど、どうやらバレてないみたい。
それより、挨拶した方がいいよね。
「え、ええ、えっと……奥村あ……じゃない。オレ、奥村奈津って言います」
思わず本名を言いそうになって、慌てて訂正する。
けど仕方ないもん。だって、ここにいるのは私以外全員スートのメンバーなんだよ。みんな、キラキラしたオーラが溢れてるんだよ。
緊張だってするよ。
「あの、皆さん、マスクダンサーって知ってるんですか?」
ダンスを教えてって頼んでくるくらいだから、当然みんなにも話はしているはず。
そう思っても、まだ信じられない。
「もちろん。ここで、何度か君の動画を見させてもらったよ」
五十嵐先輩はそう言うと、近くに置いてある機材の中から、リモコンを取り出してボタンを押す。
すると天井から大きなスクリーンが降りてきて、そこに映像が映し出された。ホームシアターっていうやつだ。
そして、そこに映った映像は、私、マスクダンサーが踊っているものだった。
マスクにニット帽にサングラスっていう不審者全開の格好で踊っているのが大きなスクリーンに映し出され、それをスートのみんなが見てる。
「わわっ! 消して! 今すぐ消してくださいーっ!」
手をブンブン振り、大慌てで叫ぶ。
動画配信した以上、誰かに見られるのはわかってるけど、目の前で見られるのは恥ずかしい。しかもそれがスート全員、その上大画面なんて、もはや罰ゲームだよ!
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