流れ星の正体

 クラマは地球で生まれた。と言っても、かつての地球ではない。隕石が降った後の地球であり、その頃にはすでに、太陽系の中心は火星へと移り変わっていた。

 隕石はいまも地球に降り注いでおり、そのほとんどは大気圏で燃え尽きるものの、地上に落下するものも少なくはなかった。故に、復興された地球に好んで住む人間はあまりいなかった。

 かつての文明は失われ、それに比例するように自然が豊かに芽吹いた。地球の生態系は大きく変わった。

 それでも、文明は死んではいなかった。かつてのように高い利便性はなかったが、自然との共存は昔以上に成り立っていた。だから、地球に住み続ける人間はなくならなかった。クラマの家系がそれだ。宇宙へ出たことがないわけではなかったが、やがては地球に戻ってくる。そんなような連中だった。

 いまや国は存在せず、統治は太陽系連邦政府により惑星単位で行われている。クラマの住む極東の島も旧アジアという場所でしかなく、かつての国は存在しなかった。それを善ととるか悪ととるかは個人によって変わってくる。

 クラマはそのどちらでもなかった。国や政府にどれほどの意味があるのかを測りかねていたにすぎない。彼女にとってはそれほど意味のないものだったのだ。

 クラマは隕石の降る夜が好きだった。宇宙を流れ燃え尽きる塵よりも壮大で艶美な輝きは、何度見ても心を奪われた。大自然や動植物、宇宙の神秘に比べれば人間の作るものの意味など無いに等しい。彼女は先祖を苦しめた厄災までも愛してしまうような女だった。

 神は存在するか否か。そういう次元の話ではない。ただ、自分の心に正直に生きること。そうすることで、流れ星の正体にたどり着ける。彼女はそう信じていた。

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