三つの謎 (Part 2)

「菊崎の三つの怪談話…本当に聞きたいの?聞いてしまうと、元の自分には戻れないよ。」


私は喉を鳴らしてうなずいた。


吉田は目を転がして腕を組み、明らかに野川にイライラしている。


「じゃあ、最初の話から始めよう。」


「最初の話は音楽室の幽霊についてだ。放課後、みんなが帰った後にピアノが勝手に鳴り出すんだ。でもね…その曲は知ってるはずなんだ。言葉を言おうとして思い出せない時、喉まで出かかってるのに思い出せない、それが狂わせるんだ。


それと同じで、その曲も聞くと狂ってしまうっていう噂がある。あまりにも狂って自殺してしまうんだ。」


「次の話は『背の高い少年の絵』だ。美術室には元生徒が描いた絵がある。その少年が時々絵から消えて、どこに行っても君を追いかけるって言われてる。最悪なのは、彼を実際に見たことがないことだ。


いつも視界の隅にいて、いるかどうかをいつも気にしてしまう。そして彼は少しずつ君に近づいてくるんだ。ある日、まばたきすると突然彼が背後に現れる。彼はとても背が高くて君の上に影を落とすんだ。


見上げると、真っ白な目が見えて、彼は君をその絵の中に引きずり込み、君を自分と同じように長く伸ばすんだ。」


私は手を合わせ、少し怖くなってきた。


「最後の話は先生用トイレから聞こえる泣き声だ。」と彼は続けた。


「夜遅くになると、先生用トイレから少女の泣き声が聞こえてくるんだ。中に入ると、その泣き声はどんどん大きくなって、最後の個室にたどり着くんだ。そしてドアを開けると…誰もいないんだ。」


彼は私に近づいて声を低くした。


「でも…もし先生用トイレの最後の個室に入ると、ドアの前に幽霊の足が見えるんだ。すると急に激しいノックが聞こえてくる。ノックは突然止まる。そして少しほっとしたその瞬間…」


私は息を飲んだ。


「彼女が君の足の間に現れて、トイレに吸い込み、君を暗くて水っぽい深淵に引きずり込むんだ。そこで彼女が味わった圧倒的な悲しみと絶望を感じることになる…!!!!」


野川は突然立ち上がり、最後の部分を叫びながら腕を振り回した。職員室にいる全員、私も含めて、驚いた。


全員が彼を見つめた。腕を空中に保ったまま動かず、彼の目は部屋を見回した。彼は咳をしてから全員に謝り、その後すぐに席に戻った。


それから、彼は静かにささやいた。


「これが菊崎中学校の三つの怪談話だ。」


吉田は鼻で笑った。


「本当にその幽霊話を信じてるのか?野川。まるでB級映画みたいじゃないか。ここが昔、黒菊源中学校だったからって、そんな噂が立つんだろうけど、全部作り話にしか聞こえない。」


黒菊源中学校?それがどういう意味か気になったが、野川に遮られた。


「映画館に行くと楽しいんだろうな、吉田。」


「そうだな、一緒に行くか?」と彼はニヤリと笑った。


突然、女性が近づいて二人の肩に強く手を置いた。副校長の柳だった。


「もう十分よ!二人とも芸人か何かのつもり?新人を怖がらせて何を考えてるの?」


彼女は二人から手を離し、私に微笑んだ。


「この二人にはごめんなさいね。見た目と違って実は仲がいいの。心配しないで、いわゆる怪談話なんて全部、元生徒が新入生を怖がらせるために作った話よ。どの学校にもそういう噂があるものよ。珍しいことじゃないわ。」


私は彼女にぎこちない笑みを返すと、校内放送のチャイムが鳴った。


職員室にいる全員が次の授業の準備を始める中、私は吉田の言葉を思い返していた。


「ここは昔、黒菊源中学校だった。」

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