星導集会後、百合が咲いていた


 アリオスが弟子入りしてから一ヶ月ほどの時が経ち、日々は順風満帆だった。


「星導騎士の集まり久しぶりだねぇ」


「そうだね。何か国に危害がないといいけど」


「最近亡霊騒ぎが起きてるから、おそらくその件だと思うわ。リアーナはおそらくもう耳に入ってるはずよ」


 そう、最近この国では亡霊騒ぎが問題となっている。番人が不在となって20年は経過している空奏の書庫の魔力が尽きかけて、内部に封印されている本が次々と暴走して、亡霊としてあらわれるのだ。

 司書番人は専らその退治に集められていて、クラーク夫婦とリアーナは疲労困憊だった。司書だけでは手が負えないと言うことで、星導騎士団にも動いてもらうのだろう。


「番人と大変だろう?やっぱりあの人に助手になってもらったらどうなんだい」


 リーヴァは突然そんなことを言い出す。

 リアーナは即座に首を振る。


「もー!その話ばっかり!2人ともほらいくよ〜」


 そう言って1人で杖を腰のベルトに挟んでスタスタと歩いて行くリアーナを、追いかけようとするリーヴァのジャケットの裾をシルフがつまむ。


「あら、私には構ってくれないの?」


「ふふ、僕らのプリンセスが見えなくなってしまうよ」


「大丈夫よ。あの子、さっき私にウィンクしてたもの。あっちも先生と2人になりたいだろうし」


「まったく、困ったプリンセスがいたもんだね」


 ✴︎ ✴︎ ✴︎


「うん。計3人、今日は集まってくれてありがとう。早速だけど、まず今日は亡霊騒ぎ件で召集した」


 星導騎士団は3人+先生で構成されている、簡単に行って仕舞えば国の治安維持隊である。この国には何個か騎士団が存在していて、その用途は多岐に渡る。

 この騎士団は四学年時に魔法実技で優れた成績を持つものを3人選抜して、行うものだ。入学して3人でそれを目標にしていて、それはそれは死闘を繰り返したのだが、なんとか入団することができた。


「まず、亡霊騒ぎだ。最近多発しているこの騒ぎは、まだ新しい番人が誕生していない為書庫に魔力が足らなくなりそのせいで護りが緩くなっている為、本が逃げ出しては暴れているものだ。リアーナは知っているな?」


「はい。シルヴィア団長。記憶の司書とも話しておりましたが、どうにも最近多発しています。私達では手に負えません」


「との事だ。やって、リアーナに加えて、シルフとリーヴァ。君たちもこの騒ぎの解決に努めてもらう」


「はい!」


 2人はピシッと返事を返す。団長であるシルヴィアは、私たちの制服と似たデザインの騎士服を着用していて、胸元には立派なロゼットがついている。そして敬礼を3人にする。それに3人は応えた。


「とはいっても、結局亡霊を本に戻せるのは司書だけだ。2人には亡霊たちの足止めを頼みたい。村民の魔力では亡霊達は無理だ。書庫の番人くらいの大きな魔力がない限りはな。だが、君たちならできるだろう。星導騎士団に抜擢されるほどの魔力があれば、足止めくらいはな。戦おうとするな、あくまで足止めだ。そして、危険が伴ったら逃げること」


「はい!」


「任務が出たら文字を飛ばす。今後も魔法訓練を怠らないように」


「はい!」


 リアーナは少し心配だ。早く空奏の書庫の番人を探して統治してもらわないと困る。正直まだ自分が納める書庫についてもわかっていない部分が多いのだ。追々それもピューレと解決していかないといけない。

 今日の集会はこれで終わりらしく、今日はお開きだったので、3人はこの学級王国地下にある、「無の部屋」にきていた。ここはその名の通り何もない。真っ白で何もない空間だが、秘密の会議にはぴったりだった。


「というわけで!今日の星屑会議の進行はローズブレイドが務めます!」


 3人の秘密の会議は大体リーヴァが、次にシルフが進行役になることが多いのだが、今日は話も話なので、リアーナが進行役だ。杖を支持棒のように使って、真っ白な壁に文字を浮かべている。


「まず、亡霊とは!」


 たらーん、という気の抜ける効果音と共にリアーナの説明が始まる。


「書庫には、特別な本が置いてあって、それは本の絵が動いたり、本自身が感情を持っていたり様々なの」


「なるほどね、それが暴走しているって事かしら?」


「シルフ正解!大正解!」


「さすがだね、シルフ!」


 そういってリアーナをよそにシルフとリーヴァのかおがちかづいて、鼻と鼻がくっつきそうな距離になる。リアーナはなんだか気恥ずかしくなって顔を背ける。そんなリアーナをみてシルフが楽しそうに笑っていた。


「リアーナはお子様ね」


「み、みんなそういう事するの?」


「仲良しならするわよ」


「え?」


「やっぱりしないかも」


「えええ?!」


 リアーナは時々この2人の大人な雰囲気についていけない時がある。見てるこっちが恥ずかしくなる時があるくらいだ。


「あ、そう、それで、その亡霊っていうのは、弱らせてから捕まえて本に戻すんだけどね、戻した後が大変で……」


「僕たちな足止めして、リアーナがきた後はどうすればいいんだい?」


「その後は私が本の中に戻すから2人は村の様子を警戒して欲しいかな」


「オーケー。最近色々あるから、何もないといいけど」


「本当にね」

 

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