第7-2話 マイネの発情期

 マイネは三回連続で吐精すると、ようやく落ち着き始める。

 ベッドを出て、白濁で汚れた身体を濡らしたタオルで清めながら、別れぎわのルシャードを思い返した。

 

 『次に俺が来た時は一緒に王都に帰らないか』

 昨日のルシャードの言葉。


 ルシャードがマイネを連れて帰りたいかのような響きだった。

 事務官だったマイネを必要としているのかもしれない。


 ルシャードは結婚が決まっていたはずだ。

 だから期待はしない。


 婚姻が延期になっている理由はわからないが、五年前は極秘で隣国を訪問したりしていたルシャードだ。

 破棄されたとも思えない。


 それにカスパーを連れて王都に行けるわけがない。

 マイネの答えは決まっていた。


 発情期のフェロモンにあてられてマイネと行為に及んだルシャードが、カスパーの存在を知った時、どのような反応をするだろうか。

 罵倒されるかもしれない。

 

 汚れたベットシーツを洗濯しているところに、ゲリンが姿を見せた。


 林檎の入った紙袋を手渡される。

「大丈夫か?」


「うん。発情期だよ。薬が効いたから、もう平気。俺より昨日の怪我は大丈夫か?」


 昨日、病院に戻った後、ゲリンと会話する時間がなかった。


「あぁ。たいしたことない」


 お茶を出す。

 テーブルを挟んでゲリンと向かい合って座った。


「カスパーのことだが、どうするつもりだ?成長したら獣型に変化してしまう」


 ゲリンは無表情で淡々と言う。

 その態度がマイネはありがたかった。


 マイネはずっと胸の内を誰かに聞いてほしかった。 

「俺の話、聞いてくれるか?」


 ゲリンが頷き、マイネは語り始める。

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