第27話 意外な言葉

「実は私は加護持ちなのです」

 ソニアは俺のその言葉に何かを言おうとしたが、口を閉じた。

 加護は問うことはできないが、俺が自分で話すことは構わない。

「私には、魔力が誰の魔力かが分かるのです。リリアさんだけでなく、魔力を持つ人であれば誰でも。どのような属性かだけではなく」

 その言葉に、リリアはあっと小さく声を上げた。

「もともとはマヨラムを身に着けた女性を追ってあの店に来たのです。店であなたに会っていながら魔力に気が付かなったのは、それを商品から出ているものだと無意識に思いこんでいたのです。それにあなたは巧みに隠蔽していた。属性を知られたくなかったのですね」

 俺は自分の勘違いに改めて笑った。

 答えは初めから目の前にあったのだ。

「でも、イルムさんはソニアがリリアだと言ったわけではないのに」

「私が王国に来て知り合った人はそう多くありませんし、女性はあなたと工房のリベル、あとこのブローチを贈る人くらいです。その中で魔力が感じられたのは、あの宝石店だけだった。それでようやく自分の勘違いに気が付いたのです。そして店ではない所でこうして会って、確認できたというわけです」

「もしも、イルムさんが頷かなかったら」

「別の方法で聞き出しましたよ」


 リリアはそれまで俯いていたが、顔を上げると俺に言った。

「それで、私をどうするつもりなのですか」

 ここまで来ると、リリアが頼るものは魔術しかない。

 何かやるつもりかもしれないと思ったが、依頼とは関係なく、俺にはまだ聞きたいことがあった。

「どうもしません。頼まれたことはありますが、それより私が聞きたいことがあります」

「なんでしょう」

 俺はリリアにこう訊ねた。

「リリアさん。あなたは帝国に帰りたくはないのですか?」 

 リリアはそれを聞くと、じっと俺を見つめた。

 その瞳の奥には色々な感情が目まぐるしく交錯しているように見えた。

「なぜそんなことを聞くのです。私を帝国に連れて帰るつもりですか」

「いいえ、そんなことは頼まれていませんし、私にもそんな気はありません。私が聞きたいのは、あなた自身の気持ちです。このまま王国で過ごしたいのか、帝国に帰りたいか、それだけです」

「帝国に帰るというのは、あの家に帰れということですね」

「帰りたければですが」

「嫌です!」

 両手を握り締めて、リリアは強く言った。

「それなら帰らなければいいでしょう。私がお聞きしたいのは、あなたがこの国にいるのは、帝国の侯爵家に帰りたくないという理由だけなのかということです」

 俺がそう訊ねると、リリアは違いますと言って首を横に振った。

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