第26話 発覚

 俺はアイリスへの贈り物を渡され、代金を払うとソニアに告げた。

「実は今日はもう一つ用事があってね」

 ソニアはえッというように俺を見た。

「この後、私に付き合ってもらいたい」

 でも、仕事がありますので、とソニアは戸惑った様子で目を泳がせた。

「お店の方には話はついている。私は外で待っているので」

 俺は余計なことを言わずにできる限り柔和な表情で、ではと手を挙げて店の外にでると、従業員出口らしき路地の入口でソニアを待った。

 逃げられる恐れもあったが、それであればイルムを捕えてとやらを揺さぶるしかない。

 しかし、それは最終手段だった。


 俺の心配は杞憂だったようで、ソニアは出てきた。

「お待たせしました」

 ソニアは少し緊張した面持ちで俺を見ていた。

「少し歩きますか」

 俺は道を渡って中央の王家の泉に向かった。そこにはいくつか腰の下ろせるベンチがあった。

 ソニアはおとなしく俺についてきた。

 スカーフ留めを外して俺はベンチにスカーフを広げるとそこに座るようにどうぞ、と言った。

「スカーフが」

「あいにくそれしかないので構わない。それに本当はスカーフをするほどおしゃれな男ではないから、気にしないでいい」

 俺が頭をかきながらそう言うと、ソニアは少し緊張が解けたのか

「じゃあ」

と言って俺の敷いたスカーフの上に腰を下ろした。

 少しの沈黙の後、俺はそれまでの態度を改め、身分証を出して見せた。

「失礼しました。私は実はこういう者なのです」

 ソニアはそれを見ると、ハッとして立ち上がった。


「座ってください。さん」

 俺の言葉に彼女は力が抜けたように座った。

「最初からわかっていたのですか」

 その言葉は少しきつい響きがした。

「いいえ、正直言うと今日になるまで気が付きませんでした」

「どうしてわかったのですか」

「さきほど、ガーデン商会に行ってきました」

 リリアはそれを言うと驚いたように俺を見た。

「イルムさんの所に行ったのですか」

「色々とありまして、行かざるを得なかったのです。向こうにしてみれば予想もしなかったことでしょうが」

 リリアは俺を見てわからないと言った様子を見せた。たぶんイルムがただの商人でないことを知っていたからだろう。


「でも、イルムさんはあなたのことは明かしませんでした。私の質問に答えただけです」

「何を訊かれたのです」

「私がすでにリリアさんに出会っているかという質問です。王国に来てからという意味ですが、それに頷かれたのでわかりました」

 俺はそう答えたが、リリアはどういうことかわからないというような表情を浮かべた。

 それはもっともなことだった。

 俺の加護を知らなければ、なんの説明にもなっていないからだ。

 

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