第23話 落とし前
受付嬢はこの者がご案内いたします、と制服の男を掌で示し、彼は慇懃な笑顔で俺に一礼した。
「どうぞ、こちらに」
受付の後ろに回ると、そこに会った部屋に通され扉を閉められた。
狭い部屋だな、と思うとすぐに何かが発動したらしく、気が付くと俺は応接室のような広い部屋にいた。
目の前には、王国にしては落ち着いたコーディネートの初老の男が、にこやかな表情で立っていた。
「初めまして、ガーデン商会の会頭イルム・ガーデンと申します」
笑顔でありながら、視線はこちらを伺っているのが分かった。
俺も名乗り、忙しい所時間を取らせてすまないと言っておいた。
いきなり約束もなく来たのだからそれくらいの礼儀はわきまえている。
まあ、部下の事情が分かっていれば、向こうから何か言って来たのだろうが。
「察してもらえたと思うが、これはどういうことか説明をしてもらおうと思ってな。表に出してもいいが、何か訳があるのであれば聞いておこうとまかり越したというわけだ」
どうだ何とか言ってみろ、と俺は心の中でつぶやいて返答を待った。
「何がお望みです」
そう言ってイルムは俺を見た。
金で済まそうという魂胆は見え見えだったので、俺も俺のやり方でやるしかない。
「お前の言うべき言葉を待ってやっているだけだ!」
俺は静かに怒気を放った。
わずかに部屋が震えた。
これにはイルムも答えざるを得なくなったようだ。
「失礼いたしました」
そう言うとようやく頭を下げた。
「帝国軍人も舐められたものだな。わざわざ手下の失態を教えに来てやったのにこの扱いとはな」
俺は部屋に結界を施した。
「これで俺と貴様の話は誰も聴くことはできない。あとは何をしても外にはわからない」
「恐ろしいことを言われます」
イルムは何を言うべきかを考えているようだった。
「クラークの無礼はお詫びいたします」
ようやくだ。悪党というのは、どうしてこう聞き分けが悪いのか。
「命じたのはお前だろうが」
「私はお話を伺うように命じただけですので」
馬鹿なことを言うな、と俺は一笑に付した。
「それなら貴様が俺をここに呼べばよかっただろう。あと、クラークは大事な生き証人だから始末できないようにした。覚悟しておけ」
イルムはそれを聞くと眉がわずかに動いた。
「とはいっても、俺は面倒くさがりだ。お前たちが俺の邪魔さえしなければ構わない」
「それではお話を聞くことは控えさせて頂きます」
俺は勝手にソファに座って言った。
「だがな、それだけで済ますにはもう遅すぎる。俺を襲って根心地の悪い一夜を過ごさせたことを軽く済ませるほど、俺は寛容ではない。その上、それをはした金で丸め込もうというのはこれ以上ない侮辱だ。この落とし前はつけてもらう」
「私は何をすればよろしいのですか」
俺はようやく本題に入ることにした。
「リリアはどこにいる?」
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