第19話 顔役のアジト
路地から出てしまうと誰かが男を担いでいるのを見られてしまう。
酔っぱらいの仲間を担いでいるとしても、目に付くし、誰か知り合いにでも目撃されては面倒になる。
そこは考えていたのか、路地の中の建物のドアを開けるのが分かった。
暗がりでどうせ見えないので目を閉じた。こういう時にはなまじ目を凝らすより、体動きや耳を使った方が空間はイメージしやすい。
ドアを開けて少しあるき、階段で下に降りている。降りきった所に通路があるらしく、そこをまたしばらく歩くと、階段を上がった。
そこには明かりがあったので少し目を開けてみると廊下だった。いくつか部屋があった。
男は突き当りらしいところに立ち止まり、ドアを開けるとそこで俺を縛り上げて転がした。少しの間、様子を見ていたが、俺が目を覚まさないことを確認すると男は出て行った。
その後、カチャリとドアに鍵をかける音がした。
少々きつかったので体を縮めて縄を抜いたが、あとで戻さねばならないので肩に担いだ。
部屋は暗かったが、廊下に薄明かりがあったので、目が慣れると周りが見えた。何もない部屋で石壁がむき出しのままだった。
人を閉じ込めるのに余計な物を置かないのは正しい。
その上窓もない、この部屋はもっぱらこういう目的に使われているのだろう。
すぐに開けられそうな鍵だったが、出る気もないのでそのままにして、縄はもとに戻したが、少し緩めて横になった。
俺は二三度あくびをした後で眠気に襲われて意識がなくなった。
衝撃と大声で目が覚めた。
「おい、起きろ」
寝起きに男というのは気が利かない。しかもむさくるしいヒゲ面だ。
いかにも腕に覚えがあるようなデカい奴が俺を蹴っていた。
「寝たくもない者を勝手に寝かせて今度は起きろか」
俺がそう言うと男はニヤリとした。
「なかなか言うな。まあいい。早く立て、これからお前に訊きたいことがある」
「ここで訊けばいいだろう」
「俺が訊くんじゃない。おっと、妙なことは考えるなよ」
「何もしやしない。さっさと話をしてここから出たいだけだ。これでも仕事があるんでね」
男はそれには答えず、俺を縛っている縄をつかんで部屋から突き出した。その時少し縄が緩んでたので、俺は慌てて締め直した。
男は縄をつかみ直して首をかしげながら俺を後ろから追い立てた。
廊下にはいくつかドアがあり、突き当りの脇には階段があった。
しかし、そこには向かわず男はその向かいの部屋を開けると、俺をそこに突き入れた。
どうやらそこはオフィスのようで、向かいのデスクには王国風の派手なデザインの服を着て、片眼鏡をかけた男が座っていた。
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