8.西の砦にて
ムスナでの一晩を終えた後、ユーリティス達は昼頃にファーラン国との国境、西の砦へと入った。
「ランディール騎士団長、ミンガイル副団長、お待ちしていました」
「ルガン警備隊長、出迎え感謝する」
熟練の兵士といった風貌の男が彼女らを出迎える。ユーリティスはルガンに挨拶した後、リアム達ロードグランの隊を紹介した。
「こちらが……ロードグランの……」
大国ロードグランの隊に圧倒されたように口を開けたままになるルガンに、いつもの調子のリアムが親しげに笑いかける。
「まぁまぁそんなかたくならずに!宜しくね!」
無理やり握手をブンブンされながら、ルガンは愛想笑いをするしかなかったのだった。
騎士達を待機させた後、ユーリティス達は西の砦の会議室に通される。
そこで警備副隊長を紹介され、各々テーブルについた。
「早速だが、現状報告から頼みたい」
ユーリティスにうながされ、警備副隊長スラッグが口を開いた。
「ファーランの兵達は変わらず、国境周辺に陣を張って居座っております。何度かあちらの隊長が急かしてはきましたが適当にやり過ごしています。これも通例の通りです」
「ふむ、おそらく我らの隊が到着した連絡もいっているだろうから、明日の朝には話し合いが行われる事も把握済みだろうな」
「騎士団長殿は任につかれる前に、騎士として一連の経験はされていましたよね?」
「ああ、流れはだいたい把握している」
ユーリティスの答えに、シーグラスがゆっくり頷いた。
「ですが今回、ロードグランの隊もいらしています。よければ明日の流れを確認含めてお願いできますか?」
「承知いたしました」
スラッグはリアム達に簡単な形式めいたともいえる流れを説明した。
「たかだか金をせびるだけのクセにまぁ大仰だね」
歯に衣着せぬリアムの物言いに、ルガンやスラッグは苦笑する。
「言われることはごもっともなのですが、長年慣習化しているだけになかなか他に穏便に済ます手もなく……」
ルガンは心底申し訳無さそうにそう答えた。
「ま、でもそれも今回で終わらせるよ」
リアムはニヤリと不敵に笑ってみせる。
そう、表向きロードグラン隊はそのために来た事になっているからだ。
「ただ、今回は少々荒事になるかもしれないけどね」
「荒事……とは?」
ルガンの疑問に、リアムはユーリティスが何者かに狙われている事を話した。
「騎士団長殿が……!?ファーランからなのですか?」
「いや、ファーランはきっかけに過ぎない。まだ何者かは分かってはいないが、この騒ぎに乗じて仕掛けてくるのは確かだ」
「何か分かったのか?」
彼はここへ来るまでに探りを入れると言っていた。確信を持った話し方をしているからには、何かつかんだのだろう。
ユーリティスの真剣な眼差しに、リアムも真摯な目を向ける。
「ああ、ユーリの出番についてね。どうやらあちらさんは早めに来られるようだよ」
それから、安心させるように笑ってみせた。
「大丈夫。準備は万端だから」
ーーーその夜、与えられた寝室で眠るユーリティスと、彼女付きであるマリクの部屋を激しく叩く音が聞こえた。
「ユーリティス騎士団長!ファーラン軍の隊長が急ぎ話し合いに応じるようにと門の前まで迫っております!!今すぐ応じねば攻め込むと!!」
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