余談
ーーー話は会議終了に戻って。
「ーーーそれでは景気付けに、コレ!」
嬉しそうな笑顔と共にリアムは4つの木製のコップと、ビンを2本取り出した。
片方は琥珀色、もう片方は薄い赤色の水の様な物が入っている。
「リアム殿……」
少々呆れ顔のファリドを気にもせず、リアムはコップを配り、ビンから液体を注ぐ。
「いや、だってせっかくカッサルの琥珀酒を手に入れたんだよ?味見はしないと」
そういいつつ、リアムはユーリティスのコップには透明の液体を注いだ。
「ユーリはお酒じゃくて果物の果汁。昨日はごめんね、まさか一滴も飲めないとは知らなくてさー」
そのリアムの発言にガタン!と音を立ててシーグラスが立ち上がる。
「リアム殿はユーリとお酒を!?」
今にも食ってかからん勢いのシーグラスにリアムはどうどうと馬をいなす様に肩を叩いて、再び椅子に座らせる。
「ホットミルクだよ!眠れなかったみたいだから……でも」
「でも!?」
「実は蜂蜜の他に酒をほんのちょっぴり、香り程度に入れてもらったんだよ。香りが良くなるし、眠りも良くなると思って」
その辺りで、シーグラスはああ……とため息をつく。
「ユーリは下戸だから」
「ああ、全く飲めない」
ユーリティスは何だか得意気にそう答えた。
「んーそうみたいだね。半分飲んだくらいで急に寝ちゃって、ビックリしたよ」
「ああ、確かに途中から記憶がない。気が付いたら部屋で寝ていた」
「ーーーー!!」
シーグラスがリアムの襟をつかむ。
「ちょいちょい!!落ち着いて!てかファリドは落ち着かないで!!」
見ると、ファリドは一人のんびり酒を飲んでいる。
「うむ、確かに美味い」
「この赤いのは果実の汁だな。この辺りでよく採れるストロの実だ」
ファリドとユーリティスは乾杯をしている。
「貴様、寝ているユーリに……!?」
「いや、なんにも!なんにもしてない!部屋に運んだだけ!」
「運んだ!?」
「あー!もー!助けてー!」
絶体絶命的なリアムの叫びに、仕方ないなとユーリティスはため息をつき、
「おかげでぐっすりと眠れたからいいじゃないか。シグも早く飲め、な?」
と杯を差し出すと、シーグラスは急に大人しくなり、ユーリティスから杯を受け取った。
「ユーリに免じて許す」
そいうと、琥珀酒を飲み始めた。
「ん、リアムも」
「アーウンアリガトー」
半ば呆れた目線でリアムはそう答えると、その場はやっと酒の席となったのだった。
「そういえば、マリクがリアムが王子のようだと言っていたな。こう、抱きかかえ方がなんとかと」
と、ユーリティスが爆弾発言をするまでは。
ーーーまぁ、余談である。
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