7.作戦会議
「俺は今回、ファーラン国の件とは別にアルデュラス王から命を受けてきた」
リアムの話では、ユーリティスの騎士団長就任後から動き出した組織があり、それが今回のファーラン国の騒ぎにかこつけて何かしてくる可能性があるとの事だった。
「それは……ユーリティスの身に危険が迫っているかもしれないって事かい?」
シーグラスの言葉に、ユーリティス自身が苦い顔をした。
「昨日、私とマリクの部屋の下にいたのも、そのせいか?」
ユーリティスの問いに、リアムは頷いてみせる。
「ーーーああ、けどそれだけじゃない。ここに来るまででも何度か、不審な影を見ている」
彼らは機会をうかがっているのだろう。ユーリティスに隙が出来る瞬間を。
「こちらとしては、出来るだけ生かしてとらえたいと思っている。黒幕を吐かせるいい機会だからな」
その黒幕を見つけるのがアルデュラスからの命だとリアムは言う。
思えば、ユーリティスは一人だった時がそんなになかった事に気が付く。何かというと、リアムがいたような。
でも、それは単なるガリゲル宰相からの仕事をしているに過ぎないと思っていた。
でも違った。ユーリティスはそんな事にも気付かず、のんきだった昨夜の自分に腹が立つ。
ーーー守られたくないと言っていたのは誰だ。
「……オトリになる」
ユーリティスの言葉に、3人の視線が集まる。
彼女は決意していた。油断していた自分を悔やんでいた。悔やんでいるからこそ、何かせずにはおれない、そういう気持ちだった。
「ユーリ、大丈夫?」
リアムはどこかユーリティスがそう言い出すような気がしていた。
「ダメだ!それは副団長としても、僕としても許可出来ない!」
「シグ、私は本気だ。これは狙われている私にしか出来ない」
彼女はシーグラスの目をまっすぐに見た。その瞳に揺らぎはない。シーグラスは長い付き合いで分かっている。こういう時の彼女は絶対譲らないのだと。
「心配だろうが大丈夫だ。我らが全力で守る」
それまで、話の成り行きを静かに見守っていたファリドが口を開いた。
静かで低い声音。どこか、安心する。
リアムが頷いて、シーグラスはため息をついた。
「決まりだな」
ユーリティスは優雅に笑った。
「それで、具体的にはどうする」
ファリドがリアムに作戦をうながす。
「私が目当てなのだから、私が一人になればいいのだろう?」
いつでも来いと言いたげなユーリティスの言葉に、リアムはうーんと苦笑する。
「まぁ、そうなんだけど。今、ほらどうぞとユーリを一人にすれば逆に怪しまれるかも」
「しかし相手は現在、こちらの隙を見つけられなくて焦っているのではないだろうか?」
リアムはシーグラスに向かって頷く。
敵にとっては、今回ロードグランが出てきた事による焦りもあるはずだ。
「次に狙うとしたら多分……西の砦、国境での取り引きの時じゃないかと思う」
「という事は、敵はファーラン国とつながっている?」
「
ユーリティスが頷く。
敵から金をもらい今回の騒ぎを起こし、ユーリティスが来るようにしむけ、かつリンクジルドからも金を取る算段なのかもしれない。
「西の砦で一網打尽にするには、取り引き直前までユーリの周りの警備を強化しないと」
「それはこちらに任せてもらおう」
そこは譲らないとシーグラスが主張する。
「我らはリンクジルドの隊を補佐しよう」
そのために来たのだから、とファリドが続ける。
「じゃあ俺は向こうにつくまでに多少相手の人数など探ってみるよ」
リアムの能力ならばそれも可能だろう。あの、初対面の時の様に気配を消していれば。
「……私には何も出来ないのか?」
不満げなユーリティスに、3人は苦笑の後、『いつも通りに』と付け加えた。
今回の協力者として、またユーリティスに自然に近くに居れる存在としてマリクには話す事を許されたので早速彼女に話すと、
『もちろん!ぜひ任せて!!』
と快諾してくれた。
でもその後に、
『はー、何か楽しくなってきたー!』
と言ったのもマリクらしいなと、ユーリティスは思うのだった。
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