第23話
「やばい。依存するかも……」
「うふふ」
僕たちは現在ダンジョンに潜っている。
ログハウスでは僕を弄んでばかりだった悪女エルフがダンジョンに入ってからというもの、頼りになりすぎる。
戦闘でのフォローは完璧。僕の意図をほとんど読み取ってくれたり、先回りで準備をしてくれる有能っぷり。
心配をしていたダンジョン内の野営でも『空間魔法』で生活用品を出してくれて手料理を食べさせてくれる。
野営も『魔物除け』と『結界』を張って、万が一のことがあっても『結界』で警報、足止めをしてくれるからベットで眠ることができる。
そして今は膝枕で寝かしつけてくれる。
元の姿では艶めかしく誘惑してきたのに、母性も強い。女性の魅力のすべてを詰め込んでいるとしか思えない。
こんなことで仲間が見つかるのかと心配になるが――――
『傑物ほど世界は狭い。そのうち鮮烈な出会いがあるわ』
――とミティシアに聞かされた。
僕は別に傑物として活躍したいわけではいのだが、それだけ強くなって今更だと笑われた。
たしかにダンジョンを1日で15階層進み、そんな奥地で日常生活をしているパーティーは異常なのだろう。
「ベヒーモスだったよな?」
今倒したはA級の魔物だ。
ダンジョン内では魔物は即素材に変わるという変わった特性がある。ダンジョンでは通常持ち運ぶ荷物に苦労するが、その点はミティシアが魔法で回収するので問題はない。高い素材、安い素材、鉱石など10t近くを回収しているが、まだまだ限界には程遠いらしい。
ダンジョン攻略の最終目標は完全攻略。
ダンジョンには寿命があり、時が来れば自然消滅する。しかしモンスターの間引きをしないと増えすぎてスタンピートが起こり、外に溢れてくる。
従って冒険者ギルドはダンジョン攻略を後押しする。それとは別にダンジョンの最奥には必ず財宝が置かれている。それを阻むのが
先程倒したベヒーモスも守護者、なおこれ以降の守護者の情報は到達者がいないため公開されていない。
「さあここからが本番だ」
「ふぁぁ。でもこんなに弱いと眠くなっちゃうわぁ」
そう弱いのだ。
この『獣王ダンジョン』と呼ばれるダンジョンはできて1年ほど、まだ完全攻略者が出ていないという情報を掴み、狙い目としてやってきた。
その情報もミティシアがいたからこそ簡単に手に入った。
僕いらなくね?
修行で強くなったのを確認できるのはいい。
ミティシアが自重をして、僕に接してくれるようになったはとてもいいことだ。
しかし楽な環境でダメになりそうな僕がいることが不安だ。そしてミティシアはまた自分に溺れたらいいじゃないと言うに決まっている。あくまでも男を溺れさせる女だということは忘れてはならない。
向こうに非がないからこそ、手を振り払おうとするとひどい目に遭いそうなので動けないのも厄介だ。どうしよう?
サクサクと攻略は進み、40階層まで到達すると明らかに造りの豪華な門が現れた。
「どう見ても最終守護者だよね」
「もうちょっと焦らしてもいいのにねぇ」
僕は道中の守護者でも1人じゃ攻略に時間が掛かると思った。そんな敵をほぼ一撃で葬り去ったのがミティシアだ。まさに師匠との格の違いを見せつけられた道中だった。
地上に出たらほどほどに修行を付けてもらうようお願いしよう。
ガシィーンガシィーン、門を開けると3メートルほどの鎧の守護者が現れた。途中の階層でも似たような守護者がいたので僕はそこまで警戒心は上がらない。
しかしミティシアは違うようだった。
「まずいわね。逃げることも考えて戦うわよ」
初めての彼女の焦った顔を見た。
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