第21話
「お・は・よ・う」
「っ!?」
ミティシアさんは今日も美人です。
どうやら魔法はちゃんと教えてくれるつもりらしく、こうして色々と仕掛けてくれるそうで、感謝しろとのこと。
本当のところは男性の気絶する寸前に自分の魅力に悶絶する姿が好きだそうだ。
抵抗力が増えれば僕の修行になるという両者にとってメリットのある形がコレなのだけど、納得はしかねる。
ミティシアは最初とは打って変わって色々なことを話してくれる。
ミステリアスなキャラは飽きたという愉快犯的な理由だ。とことん僕をたぶらかそうという悪女、そんな我が師。
僕ができることは理不尽を受け入れながら、ご機嫌を取って魔法を教えてもらうしかない。
「ちなみに僕から手を出そうとしたらどうなるんだ?」
「溶けるわね」
「え」
彼女の魅了を受けると途轍もなく彼女からの魔法の影響を受けやすくなるそうだ。
そしてそんな状態で彼女に『気持ち悪い』と思われた男性がどうなるかと言えば『溶かされる』。溶けながらも彼女を求める死に際の表情が好きという嗜好の持ち主なのだ。
その質問をする前にティムは年齢のことを冗談交じりに聞いていた。
その答えは――
『女はね、女であり続けること以上に重要なことはないの、だからわたしは数えない』
地雷を踏んでいなくて本当によかったと思ったのだった。
夢の絶世の美女との共同生活は命がけの修行なのだ。
「ところで本当に強くなっているのか?」
「要は留める力よ」
「留める力……」
相変わらず僕からの問いは一言で済ませるので、意味はこちらで考えなくてはならない。こういうところは古風だ。
強くなっているというので火魔法で試してみることにしてみた。
留めることにおいて、火ならそれが分かりやすいと思ったからだ。
「ビームサーベル?」
火を圧縮し、火の玉の形に留めることができた。ならもう少し違った形ならどうか。棒状に炎を留めるイメージで作ってみたら、ビームサーベルのようなものができてしまった。
生えている木で試し切りをしてみると流石に切ることはできなかったが、火なので簡単に通過し、触れた箇所が内側まで炭化していた。凶悪な性能といえる。
「ん?」
このビームサーベルはかなり消耗が激しいように思ったのだが、そんなにも消耗していない。
ミティシアに確認すると魔力を留め、空気から魔力を吸収する力も上がっているとのことだ。
あの修行で全体の底上げがされるんかい。そう考えると師匠としてこの人有能だな。
「流石にここまでくると、手を出す気も起きないな」
「でも当たってるよ?」
「…………」
修行は進み、今師匠は僕の膝の上に乗り、頭を撫でている。
耐性が付いたということは強くなったということ。たまに気絶はするが1日に何回も気絶することはなくなった。
その分師匠もグイグイくるようになって、あるタイミングで――
『義理の妹か!』
――とツッコむシーンがあった。
それにかなり興味を引かれたミティシアは、いつもの口少なさが嘘なように、僕から根掘り葉掘り聞き出す始末。
『危機感がない義理の妹プレイ』が楽しいようだ。
肝心の魔法のレベルアップに関しては以前は実現できなかったことができるようになった。
身体強化は見違えるようになったし、投石などの物理攻撃に対してのバリアも張れるようになった。以前彼女が見せてくれた火の魔法ではないが、水素と酸素を使った爆裂魔法を開発するまでに至った。
なによりも『デジタル化』に成功したことが大きい。
魔法強度が上がり、寝ている間など無意識状態でも脳内魔法で観測ができるようになった。
そして数日を掛けてこの惑星の直径を計測。地球の一周を4千万分の1にしたものが1m(なお誤差アリ)なのでそれに倣い、1mを定義。時計とカレンダーも設定。デジタル計測を可能にした。
これから魔力をはじめ、あらゆるものを観測するつもりだ。
しかし観測はできても結果が予想通りにならないものもある。
生物に作用する魔法だ。
魔法自体は魔力の属性、形状と方向性、濃度は観測が可能だ。しかしそれが生物に干渉した結果は、予想通りにはならない場合もある。
例えば植物に成長を促す魔法を使ったとしよう。その結果、その植物が枯れてしまう可能性もあるのだ。その原因は植物自体が弱っているか、魔法が強力すぎるかだ。
ミティシアの魔法で僕が気絶したのも同じことだ。もしかしたら体に影響のある作用も起きたかもしれないが、モラルに欠けている師匠はそんなことは考えていないだろう。
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