第17話
「よしよし、狙い通りこっちにやってきた」
まともにやったら囲まれるなら、釣り出して罠に掛ければいい。
苦戦を強いられた山ゴブリンたちに反撃開始だ。
とはいえ僕は罠なんて使ったことはない。
なら追いかけてきたところを魔物に擦り付けて、魔物同士で戦わせればいい。
「「グギャアアアアア!!?」」
山ゴブリンが3体、トレントに吹き飛ばされた。
時は戻り、僕が最初にやったのは地形を含めた細かい地図を描き、トレントの位置を細かく書き込むこと。
入念なシミュレーション、山ゴブリンとトレント以外の魔物の排除。
つまり入念な下準備だ。
山ゴブリンたちの誘い方も工夫した。
最初の1発目は以前と同様に身を隠してから石を投げた。そして身を隠しながらすぐに移動。
そのあとは砂を飛ばし、山ゴブリンたちの目を狙う。これはダメージを狙わない。
森に笛の音が響き渡る。
この時に気づいたのだが笛には何種類か音が違うものがあった。前回と違い、余裕があるので気が付くことができた。
山ゴブリンたちは狙い通り、最初に石を投げた位置に向かって集まってくる。
だがそれが罠だ。進んだ先にはトレントがいる。
砂の攻撃も継続して行う。石と違って僕の本当の居場所が分からないのがいいところだ。全く違う場所にゴブリンの石が飛ぶ。
トレントがバカたちを吹き飛ばしたところで僕は攻めに転じる。
山ゴブリンたちを横撃する位置に僕はいた。
立ち上がり石蹴り、使い捨てるつもりで鉄球を飛ばす。
10秒ほどで7体仕留めた。
ここまで打撃を与えれば精神的な衝撃は大きなものだ。
前回と違い、集団らしい連携は皆無。近くに10体以上いるにも関わらずその間にまともな攻撃は石は2発しか飛んでこない。
僕はあっさりと石を避け、石蹴りであっという間に攻撃範囲内のやつらを片付ける。
離れたところにいる集団が迫ってくるのが見えた時には僕は逃げる態勢に入っていた。
こんな調子でヒットアンドアウェーを繰り返し、僕は3日で山ゴブリンを殲滅した。
「すっ、すごいじゃないか……」
「どうも」
僕がソロで山ゴブリンたちを殲滅したのを最も驚いたのは商業ギルドの男。僕の交渉相手だ。
こいつは僕をナメていたことを後悔したようだ。
自分が圧倒的に有利な立場でこんな若造ができるわけはないと思った課題、その中でも最も難しいものをクリアしたのだから。
この功績はB級昇格も時間の問題と言われるほどのもの。
そんな相手の機嫌を損ねるのは商人失格。
男は次の課題を考えていなかったようだ。汗で額を濡らしながら、もう一つ塩漬け依頼を終わらせたらミティシアを紹介すると約束した。
「ここは思いっきり恩を着せるために、ロコロコ鳥の卵を多めに納品しよう」
ロコロコ鳥。断崖絶壁に巣を作る鳥のこと。卵が上級ポーションの材料になる。
宙に浮ける僕にとって断崖絶壁程度は大した障壁ではない。
むしろ最悪の障壁は山ゴブリンたちの方だった。ミティシアを紹介してもらう前に一通りの依頼を終わらせておこう。
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