第14話
「ロンコッコ山、国の反対側じゃねーか!?」
現代的な地図を知っている身からすると、適当な地図しかないこの世界。資料を調べたり、知っている人間を捕まえて出た事実だ。
このシウデナは西寄り、ロンコッコ山は東の国境に位置する。
情報を集めた感じ、おそらく300~400㎞の距離がある。これはまともに進んだら相当かかるぞ……。
僕はバレない程度に自重しないことに決めた――
『うわっ!?』
『なんだ今のっ!』
『今のヤツ、気持ちわりぃ動きしてたなぁ……』
――追い抜いた人たちはそんなことを言っている顔だった。
もちろんやったのは魔法を使っての移動だ。
子供のころからさまざまな検証をしてきた。コスパを考えるのは基本だ。
平地での移動のベストアンサー。推進力は自分の足、普通に走るよりも少し高めに飛び上がり、足元に濡れた氷のような空気の滑り台を作り距離を稼ぐ。
しかし欠点が悪目立ちすること。明らかに魔法を使っていると分かるとはいえ、不自然な動きになる。
そこで外套のフードを被り、顔を隠すことにした。
別に犯罪に手を染めているわけではないので捕まることはない。
不審者に見られる心のダメージとコスパ、僕はコスパを取っただけ……。
1日で移動距離は約バブル(脳内魔法、両手を広げた長さの直径の球体)8万個分。僕の身長がおよそ160cm。つまり120~130㎞の距離を稼いだ。
これなら3日で目的地付近に着くことができるし、これだけ距離を稼げるなら、必ずどこかの街に到着し、宿にも泊まることができる。
異世界なりに便利さのレベルはかなり上げることができた。
「で、順調だと思ったのにこれかぁ」
「「「命が惜しけりゃ全部寄越しなぁっ!!」」」
この世界の移動手段は遅い。よって待ち構えての盗賊行為は容易。
僕は盗賊たちと遭遇した。
盗賊の扱いは害獣と一緒だ。見かけたら殺せばよい。
ただ討伐証明が面倒だ。盗賊と一般人の区別はできない。近隣の街や農村、集落などからの失踪者の確認、経済状況などの聞き取りなどで盗賊討伐か殺人かの判断に時間が掛かる。
今回は無力化に留めよう、生首を持ち歩きたくはないしね。
はい、石蹴り。
「「「ぎゃあああああああああああ!!!」」」
「運がよかったら生きてるでしょ」
一応盗賊からは武器と金品を奪っときましょーね。
僕は再び走り出した。
予定通り3日目には目的地のロンコッコ山の近くの街に辿り着いた。
だたちょっとしたトラブルが起きた。
「ようこそアナルディアギルドへ」
「アナっ!!?」
「?」
異世界異文化なのでこういうことが起きても不思議ではない。この街はアナルディアというらしい。
僕の移動届を受理した受付嬢は普通に挨拶しただけ。現に彼女は僕の反応を不思議がっている。
相手は普通のことを言っているのに、常識の違う僕だけが違うことを考えてしまう。これほどに困ることはなかなかない。
受付嬢が何度かアナルディアと言う度に僕の顔は赤くなった。
「……ここ最近でいちばん疲れたのかもしれない」
吹き出しそうになるのを必死で我慢してたからね。
受付嬢の子が僕がC級なことに食いついていたのも良くなかった。悪気がないだけだけに話をぶった切れず、地獄が続いた。時々不意に出すもんなぁ。
もうすぐ陽が落ちる時間だ。
今日は宿を取ってゆっくりと休むことにしよう。
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