第11話
「「「ようこそシウデナギルドへ」」」
「みんなありがとう」
出迎えてくれたのはギルド職員。僕に訓練をしてくれたリックたち。だけど知らない人も僕を歓迎してくれた。
僕はE級冒険者になり、シウデナにやってきた。
こうして多くの人が温かく受け入れてくれるきっかけはアジフのおかげだ。稼いだら高い酒を送ろう。
アジフについて知ったことについて驚いたことがある。
あいつは積極的に活動はしていないものB級冒険者らしい。見た目通り酒を飲んでのんびり過ごしたいらしく、昔溜め込んだ金を少しずつ溶かしながらギルドで臨時職員をしているそうだ。
それと長命種だから150年は生きている。
これらは他の人から聞いた話だ。アジフは最初の印象は悪かったが思った以上に人望がある。
そんなことを思いながらE級の受付に並ぶ。
僕の他はパーティーを組んでいるようだ。僕はしばらくソロでいい。
「はじめまして。ティム君だよね」
「どうも、はじめまして」
「おすすめの仕事を用意してあるよ」
僕のことはちゃんと受付嬢にも知られているようだ。
あらかじめソロでできる、僕の実力に合った用意してくれていたらしい。
しかし――
「マジか」
受付嬢が用意したのは建築現場の仕事ばかりであった。
いわゆる塩漬け依頼。本来はF級の仕事なんだが報酬は良いが依頼人の要求が厳しく適正な人材派遣ができず長い期間放置されていた仕事だ。
僕は確かに分かりやすい功績として宿泊施設を建てたが、森で狩猟採取が中心のE級になってこの手の仕事が振られるとは思っていなかった。
せっかく装備を整えたのにと指導員のリックに愚痴をこぼし、しばらく装備を預かってもらうことにした。しばらく現場仕事なら作業着を用意せねば。
「これで全部だよな?」
「はい、おつかれさまでしたぁ」
最近でいちばんの笑顔を受付嬢のサティからもらい、僕はまっすぐに宿へ帰った。
流石に最近働きづめで疲れが出た。
僕の今の持ち金は銀貨5枚近く。ソロだからベテラン冒険者が泊まるような宿を定宿にしても問題はない。
なにしろ僕は重機扱いだ。魔法の自重はいいのかとアジフに相談したら、柱など材料の運搬に関してはウリュウと同じようにしても問題はないと言われた。
この塩漬け依頼の消化はギルド評価がかなり稼げる。あとは森での狩猟採取の基準をクリアすればすぐに昇格できるらしい。
「今日は森へ行きますか?」
サティから常駐依頼の害獣、薬草を確認し、森で注意すべきことを説明された。
現在依頼で出ているものに関しては気にするなとも付け加えられる。それはなぜか。今日は森の探索に慣れるよう、周囲の警戒を念入りにしろとのことだ。
探索依頼。安全の確認という名目の下、探索初心者にはギルドから少額だが報酬を出してくれるらしい。
暗い森だ。
街の北にある森に来て僕はそんな印象を受けた。
広葉樹林の葉が重なる深い森。古い森は伸びきった樹木が多いゆえに、雑草が生えない箇所が多いと記憶にある。ここはそんな森だ。
それでも地面はうねっていて、雑草がところどころ生えている場所もあり、決して歩きやすい場所ではない。
なるほどしつこく気を付けろと言われるわけだ。
だがある程度の危険は今の手持ちの魔法で排除できる。
脳内魔法の理想はデジタル化だ。とはいえそこには程遠い。メモはできても時計機能なんてものを搭載できないし、商店を回っても工業規格の定規や秤は見つからない。
ならばと考えた脳内魔法がいくつかある。今回使うのは五感で感じ取れる情報の変化を知らせる『サーチ』と現在地を確認する『バブル』だ。
『サーチ』は目に映る人影や草木の揺れが分かるように設定してある。他にも匂いや音で危険を察知できるよう日々カスタムを繰り返している。
『バブル』はボール状の情報体を浮かべる魔法だ。ボールの直径は僕の両手を水平に広げた大きさ。ボール10個分を離して上空に設置すれば現在地が分かる。ボール1つ1つにチェスの駒の位置を示すように座標を設定してある。
脳内魔法はこのように基準さえあれば正確な操作が可能だ。遠くにいる生き物の大きさを見るにも『バブル』を飛ばし、重ねてやれば一瞬で比較ができる。
僕も流石に常識というものが分かってきた。このような魔法や考え方は異端だな。
アジフが他人にバレないようにやれと言っていた顔を思い出す。
森の浅い部分には薬草はそれほど生えていなかった。生えていたのは摘まれた後のまだ成長していない状態のもの。
代わりにウウフルには遭遇した。狼のような生き物だ。
浅いといっても1人で行動している僕は獲物に見えたのだろう。2,3頭で3回襲われたので石蹴りとショートソードで全部狩ってやった。
害獣は右耳を討伐証明に切り取り、死体は放置でいいらしい。
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