第6話
「なんでこの街だけ……」
14歳になった僕はウリュウの街まで足を延ばした。そこで見たのは中世的な建物だった。街の外からは白い壁の木造建築が2棟見えた。2階建てと3階建てだ。
僕が成長するにつれて、日帰りで行ける周囲の村も行動範囲に入っていった。森にも動物を狩りに入ることもあった。
ここに来る道中の村々も僕が生まれた村と同じような生活をしていた。
しかしこの街にだけ文明のレベルが違う建築物が建てられている。
村に存在するものは全てが原始的。
刃物さえ磨製石器なのだ。
僕はこの歳まで魔法ばかりを使っていたわけではない。情報の収集、武術の稽古はもちろん村の生活に必要なことは全部覚えた。それは動物の解体から家づくりまで幅広くだ。僕には
事前に変わった街、すごい街とは聞いていたが、ここまでとは想定外だ。
僕が村で準備できなかったこともいくつもある。ここからはなるようになるしかないのだ。
街の中に入ると、他の建物は村で見たことのある造りで安心した。
「おまえ見ねえ顔だけど、どっかの村から来たんかぁ?」
僕はそうだと答え、冒険者ギルドはどちらかを聞いた。ギルドは3階建ての方だ。もう片方は教会らしい。
お礼を言って建物の中に入る。ちょっと緊張する。
「あんだ?」
「…………」
びっくりして固まってしまった。
とにかくとてつもなくデカい。ギルドの中にいた男の身長は僕よりも30センチほどの高さなんだけど、体型が岩のようにずんぐりしている。しかも髭面だ。
そんなわけでとても威圧感があるんだけど、職員のくせに昼間から酒を飲んでいるようで酒臭い。
これはファンタジーで馴染みのあるドワーフというやつなのか? と確認すると、そうだという返答が返ってきた。
ギルドの建物は立派だが職員はこんなのだ。
「冒険者登録をしたいんだけど」
「……はぁ」
僕の言葉への返答はため息だった。小さくめんどくさいという声が聞こえ、なにかを取り出そうとしている。
それは羊皮紙のような見慣れない紙になにかが書かれたものだった。
「字は……読めねぇよな?」
「ああ」
だよなと男は諦めて規約を紙を見ながら説明する。村にいた時は文字を見たことがなかった。
これはチャンスと説明と利用規約の内容を魔法で記録した。これで文字を覚えることができる。
僕は説明を受けながらいくつか質問をした。
要約すると冒険者の活動は自己責任、依頼を失敗すると違約金が発生する。依頼者が嘘をついているときはギルドが制裁を加えて、冒険者の損失はそれで補償するといった内容だ。
それに加えて冒険者にはS~G級のランクがあり、ランクによって受けられる依頼に制限がある。
僕の口調は村での教育のせいだ。舐められないように少しだけ無愛想な感じだ。ドワーフ男は僕とのやりとりを気にしている様子はない。
そもそも僕は敬語が使えない。村人は敬語は使わないし、表現がわからないからだ。
偉い人とのやり取りでこんな言葉遣いで問題ないのか聞いたら、冒険者だから気にするなと言われた。
このドワーフも引退した元冒険者だそうだ。
「それでお前の名前は?」
「ティムだよ」
「ほれ」
「わっ」
雑に投げ渡されたのは金属でできたプレート。
紐に通して、首にぶら下げとけと言われたのは冒険者証だった。
そんなもの投げるなと思ったがG級は見習い、名前入りのちゃんとした冒険者証はE級になってからだという。
「冒険者になったところで早速雑用の依頼でも受けるか?」
「ああ。ところで宿のあてがないんだが」
「それなら交渉して依頼主に泊めてもらえ」
「ええ……」
「それにしても大変じゃな、こんなところで冒険者になるだなんて」
「どういうことだ?」
「ここじゃ金が使えないだろ?」
「あっ」
まさかここでもそうだとは思ってもみなかった。
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