第5話
「さて、やるか」
僕はまだ幼いし、両親に生活を支えてもらわないと生きていくことができない。しかしやれることはいくつもある。
気を付けていたが周りの大人は僕のことを天才児と認識していた。
おそらくなのだが、この村の住人は魔法に関してあまり詳しくないように思う。
大人たちの多くは身体強化の魔法に特化している。大きな動物を狩って食料に困ることがないのはこれのおかげだ。
身体強化に必要な調整は上手いけど他の魔法の技術面への理解が乏しいという感じだ。
僕が今やろうとしているのは排泄物の処理だ。
村の外れには『肥溜め』のような場所があり、それは放置されている。つまり非常に臭い、不衛生だ。
蒸し暑い環境のため、匂いが残りやすいわけだがその大本をなんとかしたいと思ったわけだ。
まずはガスだ。これを遠くへ吹き飛ばす。
次に排泄物本体。
ここで大事なのが派手に魔法を使わないこと、今も大人が見張っている状況だ。時間を掛けてゆっくりと乾燥させる。
表面が乾燥したらあとは僕が何をしているのか分からないだろう。水分を抜きながらこっそりと熱した石を混ぜ込む。水分を覗いた排泄物の大部分が有機物だ。加熱すれば炭になる。
臭い場所にいたから、僕自身の匂いも気になる。
服を脱ぎ、魔法で洗濯をし、全身を洗う。
こういうとき細かい操作ができると便利だ。こすらなくても洗剤を使ったようにしっかりと洗うことができる。
最後に乾燥をして終わり。
目の前でこれだけのことをしても、大人には単に僕が魔法の使い方が上手い程度にしか映らないらしい。
時間を掛けて村の目に付くところを処理しておいた。
「ねーねー他にはどんな生き物がいるのー?」
「あくまで聞いた話なんだが山のように大きなドラゴンがいるらしいのぉ」
「あの山より大きいのー?」
「ふははっ、流石にそれは嘘じゃと思うがのぉ」
ヤシの木のような南国特有の木が並ぶ森に囲まれた原始的な造りの建物の狭い村。だが村人は200人ほどもいる。
僕は自分の足で動けるようになってから村の大人に話を聞いて回っていた。中身は大人なのだ、大人が邪魔に思わないように伺うことは容易い。
僕としゃべってくれる大人はどうしても子育てが落ち着いた主婦や隠居した老人に偏ってしまうが。
大半は子供に聞かせるような話だったが、そこから僕が知りたいことを話してくれるかは工夫次第。いくつか興味を引く話もあった。
ここから歩いて3日のところに街がある。その街ウリュウでは『冒険者』ギルドがあるという。冒険者ギルドは世界中にある。ウリュウの街はかつてこの街を訪れた冒険者が辺境の村を発展させて大きくさせた街だという。
その話を聞いて僕は冒険者になろうと思った。ここから出て世界を回るには都合の良い職業だ。
猛獣退治からドブさらいまで依頼があれば仕事になるのが冒険者。完全に底辺職のなんでも屋だが、ランクが高くなれば一国の王と同等とまで言われる。
世界の端のこんな村でもそう噂されるほどには夢のある職業なのだ。
目標が決まればそれに向けて準備をするだけだ。この村の成人は14歳、それまでにやれることは全部やろう。
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