第80話 レアポップモンスター狩り④
「ふぅー……」
冒険者ギルドで予想外に時間を取られてしまったなぁ。
だが、金貨を三百枚も貰えたのは素直に嬉しい。これで少しは贅沢できるな。
おまけに冒険者証もブラックウッド級になったし。
まぁ、オレはあんまり冒険者のランクに興味はないんだけどね。
でも、変異個体、レアポップモンスターを倒すだけでお金になるとか、なんでみんなレアポップモンスターを倒さないんだ? 不思議だね。
「まぁ、いいか。ちゃっちゃとレアポップモンスターを倒そっと」
オレは目的の階層にワープすると、収納空間を展開して走り出す。
途中、何度か行き止まりに捕まりながら、どんどんとダンジョンの右奥を目指して進んでいく。
「お! 宝箱はっけーん!」
やっぱりレアポップモンスターの近くには宝箱が放置されてるみたいだな。これも地味においしい。
まぁ、まだ低階層だからそんなにいい装備は入ってないけどね。
「ふむ。また石鹸か……」
ゲームでの石鹸はただの換金アイテムだったけど、学園での寮暮らしには石鹸は必須のアイテムだ。まぁ、嬉しいか嬉しくないかで言われれば嬉しいけど、テンションは下がっちゃうよね。
「さて……」
石鹸を収納空間に入れて振り返ると、そこには青い肌をしたオークがいた。体中に奇怪な模様を書き込んだ怪しい見た目、ドクロの杖を持った姿は、未開の部族の呪術師を思わせる。
このオークこそがブルーオークシャーマン:ググルド。魔法を使うオークのレアポップモンスターだ。
ググルドが杖を振り上げて魔法を発動する。
その様子をオレはポケーと見ていた。
ググルドの持つドクロの杖の先端が突き付けられ、大きな火の玉が出現する。
火の玉が発射された瞬間――――火の玉は忽然と姿を消した。
オレが収納したのだ。
「GUE!?」
ググルドが驚いたような声をあげて、目をぱちくりしていた。
「どうした? かかってこいよ!」
オレは両手を広げて「かかってこい」と言わんばかりに手で煽る。
すると、ググルドが次の雷の魔法を発動し、オレが収納する。
いいね。こいつは魔法のストックに最適だ!
そんな感じで魔法を収納し続け、さすがにMPがなくなったのか、ググルドが杖で殴りかかってきた。
まぁ、余裕で返り討ちにしたんだが。
魔法がたくさん収納できてホクホクである。
幸先のいいスタート切れてオレはもうルンルンだ。
「まぁ、ドロップアイテムはハズレだったんだけどね!」
オレぐらいになると、もうドロップアイテムがハズレなんてよくありすぎてなにも感じないよ。
「この調子でがんばっちゃうぞ!」
そのまま出会ったモンスターを殴ってダンジョンを駆け抜け、次のレアポップモンスターの目撃情報のあった階層までワープする。
そんなことを続けること三度。オレは三体のレアポップモンスターを倒し、宝箱のアイテムやドロップアイテムを手に入れた。
まぁ、今回はどれもハズレアイテムばかりだったけどね。
ちょっと残念な気持ちを抱えながら、オレはダンジョンの第十九階層へと向かう。ここにもレアポップモンスターが出現しているらしい。
いつものように走って出現場所に向かうと、普通のオークよりも大きい青い肌をしたオークがいた。槍を持った筋骨隆々としたオークだ。
ブルーオークジェネラル:ゲレレ。この階層のレアポップモンスターだ。
オレが発見すると同時に、ゲレレもオレを発見した。ゲレレが槍を構えて突っ込んでくる。
オレは両手でタスラムを構え、ゲレレを迎え撃つ。
「ッ!?」
ゲレレの鋭い突きを躱して前進しようとした刹那。ゲレレが槍を横にぶん回す。
前進しようと前屈みになっていたオレには、ゲレレの薙ぎ払いを躱すことはできなかった。槍に横から強打され、倒れないように踏ん張ったせいで前進が止まってしまう。
それこそがゲレレの策だった。
ゲレレの槍が素早く引かれ、硬直したオレの心臓を狙った鋭い突きが放たれる。
「くっ!」
オレはなんとかゲレレの槍を横から右のタスラムで殴って槍の軌道をズラした。だが、槍はオレの左の二の腕を穿ち、ひねられる。
「ぐあああ!?」
まるで真っ赤に熱した鉄の棒が左の二の腕に押し当てられたような激しい熱を感じた。左腕から急速に力が抜けて、タスラムを取り落としてしまう。左腕の筋肉をズタズタに引き裂かれ、物理的に力が入らなくなってしまったのだ。
「くそっ!」
オレはバックステップを一つ二つと踏み、ゲレレから距離を取った。
穿たれた左腕がじくじくと痛みだす。まだアドレナリンのせいであまり痛みは感じないが、すぐに無視できない痛みに変わるだろう。
このままだとマズい。
早いところポーションで治療したいところだが、ゲレレが待ってくれない。
ゲレレがバックステップをしたオレを追撃するために走ってくるのが見えた。
ちくしょう。さすがにまだ第十九階層のレアポップモンスターを倒すのは時期尚早だったか……?
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