第62話 レアポップモンスター狩り③

 モリゾーたち四人の男たちを別れた後、オレはレアポップモンスター狩りを続行した。


 したんだが……。


「本当に感謝している。助かった」

「本当にありがとう」

「ああ……。あんたたちも宝箱を狙ってわざわざここに来たのか?」

「ああ、そうだ」

「それでこのざまよ……」


 オレの目の前には、やつれた様子の男二人、女三人の冒険者パーティがいた。彼らもモリゾーたちと同じく宝箱を狙ってわざわざレアポップモンスターがいる所まで来たらしい。


「本当に、あなたが来てくれなかったら私たちは死んでた。本当に感謝しているわ」

「助かったよ」

「オレが言うことじゃないが、あまり自分の命を粗末にしないことだ」

「わかったわよ……」

「そう、だな。さすがに今回のことで懲りた……」


 言葉通り、肩を落とした彼らは、ダンジョンから脱出するべくのそのそと歩いていった。


「レアポップモンスターの傍には宝箱が眠っているって、わりとメジャーな情報なのか?」


 それからもレアポップモンスターの目撃情報のあった近くで、二組のパーティと出会った。一組目は助けられたが、二組目は手遅れだった。


 仇は取ったので許してほしいところだ。


 そうやってレアポップモンスターを倒すこと六体。まだまだレアポップモンスターの目撃情報はあったが、今のオレ一人では倒すのが難しいモンスターばかりだ。


 最強装備で固めてはいるが、今のオレは20レベルくらいしかないからな。ステータスが圧倒的に足りない。


 レアポップモンスターからのドロップアイテムはハズレアイテムが多かったが、もう一つだけ当たりが出た。


 それが破城の腕輪だ。ゲームではこの装備を付けてモンスターの防御力の下がるスキルを使うと、モンスターの物理防御力を10%下げることができた。現実世界ではどんな効果になっているのか楽しみな装備だ。これはコレットへのお土産にしよう。コレットは片手斧スキルを伸ばしているからピッタリだね。


 他にも宝箱からアクセサリーなどの装備も手に入ったし、大満足の一日になった。


 そんなルンルン気分で学園に戻ると、オレはすぐにアリスとコレットに呼び出された。


 呼び出された学園のカフェテラスに行くと、沈んだ様子のアリスとコレットがいた。肩を落としてどんよりしている。


「お待たせ。待ったか?」

「ジル様、呼び出してごめんなさい……」

「ジル聞いてくれよお」


 アリスとコレットから零れたのは、今日のお茶会がいかに大変だったかという話だった。


「上級生なんて俺を値踏みするような目で見てくるしよ。俺がしゃべるたびにクスクス笑うんだぜ? やってらんねえよ」

「コレット、それはコレットの口調が珍しいからですよ。嫌な笑いではありませんでした」

「俺の口調のどこが変だって言うんだよ?」

「コレット、それ本気で言ってるのか? オレはべつにかまわないけど、女の子がそんなガサツな男口調だったら普通は驚くぞ?」

「ナメられたら終わりなんだよ!」

「だからってそんな下男みたいな口調はなぁ……」

「ジル様、コレットはシア様とエグランティーヌ様に注意されても変えなかったんです……」

「それは筋金入りだな……」

「俺は自分を曲げねえ!」


 まるで自分の成果を誇るようにコレットが無い胸を張るが、ちっともすごいとは思わない。いや、貧民の娘が王女と侯爵の娘に注意されても直さなかったんだから、ある意味すごいことなのか?


「まぁ、二人ともよくがんばったな。これでお茶会は乗り越えたんだし、しばらくはのんびりしてもいいんじゃないか?」


 オレの言葉に、なぜかアリスは困ったような顔を浮かべて、コレットはドヤ顔を浮かべていた。


 どうしたんだろう?


「それがですね、ジル様……」

「俺たち、エグランティーヌに気に入られたみたいで、お友だちってやつになったんだ!」

「え……?」

「今度はエグランティーヌ様の主催するお茶会にもお呼ばれしてしまって……」

「お茶会ってのは面倒だけど、うまい菓子が食えるし、なによりダチの誘いだ。断れねえだろ?」


 えぇー? じゃあ、二人と一緒にダンジョンに行くのはまだ先になるのか?


「またしばらくお茶会の練習か……?」


 お茶会が終わったら、また次のお茶会のための練習……。お茶会って何だよ? 戦争かなんかの暗喩かなにかか?


「わたくしはシア様に合格をいただきましたので大丈夫ですけど、コレットは……」

「まあな。でも、練習でも菓子が出てくるんだぜ? むしろラッキーじゃね?」

「お前がそれでいいならいいんだけどな……」


 お菓子を想像しているのか、頬の緩んでいるコレットを見ながら、オレとアリスは溜息を漏らすのだった。


「そうだ。実は二人にプレゼントがあるんだ」

「まあ! プレゼントですか?」

「なんだよ?」


 オレは収納空間から銀の首飾りと腕輪を取り出す。


「こっちの首飾りがアリスの、こっちの腕輪がコレットのだ。とくにコレットの腕輪は破城の腕輪といって、めちゃくちゃ強い装備だ。斧を持つ方の手に着けておくといい」

「そっか。ありがとよ」

「ありがとうございます、ジル様!」

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