第61話 レアポップモンスター狩り②
「お、俺はもうダメだ。捨てていけ……!」
「そんなこと言うなよ!」
「くそっ! もう来やがった! 急げ!」
「俺が時間を稼ぐ! あばよ、お前ら。楽しかったぜ!」
「「「モリゾおおおおおおおおおおおおおお!」」」
なんか目の前でドラマが展開されていた。
「なあ、あの変異個体貰っていいか?」
「ああ!? おま、なに言って!?」
怪我した男に肩を貸して走っている男に声をかけると、まるでお化けにでも会ったかのように驚かれてしまった。
「止めておけ! モリゾーの命を無駄にしないでくれ!」
「そ、そうだ。お前も早く逃げろ……」
「戦う意思が無いなら、貰うな」
「あ、ちょ!?」
オレはタスラムを握ると、男たちの制止を無視して駆け出す。
「ごふ!? ごは!? げは!?」
目の前では、黒いサーベルタイガーにボコボコにされているモリゾーと呼ばれた男がいた。
全身鎧を着ているからまだ致命傷は貰っていないようだが、時間の問題だろう。
「展開! ショット!」
オレは新たに収納空間を展開すると、鉄球を撃ち出す。
サーベルタイガーは、エビのように素早く飛び退くと鉄球を避けた。
だが、これでサーベルタイガーとモリゾーの間に空間ができた。
「ショットガン!」
ズドンッ!!!
オレは無数の鉄球をサーベルタイガーに向けて収納空間から発射する。
さすがにこの面攻撃は避けれなかったのか、サーベルタイガーに『ショットガン』が命中した。
サーベルタイガーはミンチのようになりながら、白い煙となって消える。
接近戦で止めを刺そうかと思ったんだが、その前に力尽きてしまったようだ。
「お?」
サーベルタイガーのいた所には、牙の首飾りが落ちていた。物理攻撃力+300、物理防御力-50する装備だ。ドロップ率3%のレアドロップのアイテムである。首飾りで物理攻撃力を上げる装備は少ないのでかなり重宝するレアアイテムだ。
当たりも当たりの大当たりだ。ゲームではこれが欲しくて何時間も時間を溶かしたものだ。
まさか一発で出るとは思わなかった。かなり嬉しい。嬉しさで胸がキュッと苦しくなるくらいだ。
オレはスキップで首飾りに近づくと、丁重に持ち上げて装備する。
「ふぁ~」
その心地よい重さに、ゲームで恋焦がれていた装備を実際に身に着けることができて、オレにもよくわからない吐息が漏れてしまった。
「倒した……だと……?」
「どうなってやがる……?」
「そんなバカな……!?」
「ん?」
そういえば、人がいたんだったな。
「うぐあ……」
「モリゾー!? 大丈夫か!?」
「そうだ! モリゾー!?」
オレの近くで全身鎧の男がうめき声をあげると、彼の仲間たちが集まってくる。
「ひでえ……」
「モリゾー……。無茶しやがって……」
モリゾーと呼ばれた男は、猫に弄ばれたおもちゃみたいにボロボロだった。手足が変な方向に曲がっているし、ガッツリと開いた穴からはドクドクと血が流れている。
男たちはポーションを取り出すと、モリゾーにかけているが、あまり効果はないようだ。下級ポーションか? そんなのじゃ治る傷も治らないぞ?
「血が、血が止まらねえ……」
「これでも使うといい」
「え?」
オレは収納空間から特級ポーションを取り出すと、男たちに放ってみせた。
「すげえ! 血が止まった! 傷がどんどん治っていく!」
「まさか、特級ポーション!?」
「すごいな……」
男たちはあまりいい装備をしていないから、資金繰りが厳しいのかもな。だから、下級ポーションしか持っていなかったのかもしれない。
「そっちの男は大丈夫か?」
「ああ、俺は掠り傷だ。ポーションも持ってる」
「そうか。余計なお世話かもしれないが、ここに変異個体が出ると冒険者ギルドのクエストボードに書いてあったぞ。ダンジョンに潜る前にちゃんと確認しておくことだ」
「「「「…………」」」」
オレが一応注意すると、怪我が治ったモリゾーを含め、四人の男たちが黙ってしまった。
「あんたはモリゾーを助けてくれた恩人だから言うが……」
「本当に言うのか?」
「恩人に嘘は吐けねえよ」
「まぁ、そうだな」
四人が覚悟を決めたようにオレを見た。
「白い旦那、あんたは俺たちの恩人だから特別に言うんだが、変異個体の出る周りには、宝箱が放置されていることが多いんだ」
「宝箱が?」
そういえば、メタルスライムを倒した時も三つも宝箱を見つけたな。
「ああ。宝箱が出現しても、変異個体を警戒して誰も来ないからな。だから、普通じゃなかなか見つからない宝箱があることが多いんだ」
「なるほど」
オレの予想とも一致するな。
「だから、俺たちみたいな金に困ってるパーティが宝箱目当てに敢えて変異個体の出る危険地域に入ることがあるんだ。宝箱の中身次第だが、けっこうな金になる時もあるからな」
なんだか、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」みたいな話だなぁ。
ちなみに、オレはこのことわざがあまり好きではない。分の悪いリスクを冒す時の言い訳に使われる場合があまりにも多いんだよなぁ。
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