第35話 VS影
「ショット! ショットガン!」
影との戦闘は遠距離攻撃に終始していた。接近戦になると、『カット』で一撃死があるため、互いに警戒しているのだ。
狭い黄金神殿の中をクルクル回るように立ち回りながら、遠距離攻撃で優位を作ろうとする。
しかし、相手の影も【収納】のギフトが使えるのだ。下手に撃っては、相手の弾数を増やすだけだ。
収納空間を二重に展開し、攻撃と防御を両立させ、相手のミスを待つ。
ぶっちゃけかなり分が悪い勝負だと思う。影に疲労の概念があるかも怪しいしな。
しかし、下手に突っ込むと『カット』で瞬殺だ。影も収納空間の多重展開ができる以上、隙というものがない。
「お互いに打つ手なしだな……」
黄金神殿の中はもう悲惨と言ってもいい。いたるところに鉄球がめり込み、黄金の神殿なのか、黒鉄の神殿なのかわからなくなってきたくらいだ。
「ぐッ!?」
その時、影がどんな手品を使ったのか、オレの右脚に鉄球がヒットした。鉄球はタスラムの追加攻撃が乗っており、無属性の魔法ダメージも受ける。まるで体がバラバラに引き裂かれたような痛みだ。
思わずうずくまってしまいそうになるのを耐えて、オレは右足を見た。
「くそっ!」
骨が折れてる。オレは収納空間から特級ポーションを取り出すと、右足に振りかけた。
「なぜだ……?」
しかし、なぜ鉄球がヒットしたんだ?
ちゃんと前面は収納空間で防御を張っている。影の位置も、影の展開した収納空間の位置も確認済みだ。絶対に右足に当たるわけがない。
だが、実際に右足に鉄球が当たっている。影はいったいどんな手品を使ったんだ?
その後、影の不可思議な攻撃手段を警戒するが、オレの守りを突破してくる鉄球は無かった。
お互いに隙を伺いながら遠距離攻撃をしながらクルクルと神殿の中を回り合う。
キンッ!
その時、視界の端でなにかが弾けた。鉄球だ。鉄球が床にめり込んでいた鉄球に弾かれてその軌道を変えたのだ。
「これか……!」
その瞬間、オレは閃いてしまった。
黄金というのは比較的柔らかい金属らしい。そこに鉄球をぶつけると、鉄球が黄金にめり込む。だが、めり込んだ鉄球に鉄球を当てると……?
鉄球は弾かれて、その軌道を変える。
「これしかないか……」
オレは覚悟を決めると、影に向かって走り出した。
鉄球の表面は平ではない。その場合どこに飛んでいくのかわからない。それでは意味がない。だから、なるべく近づいてぶっ放す必要がある。
収納空間の射程は、オレの手の先から約一メートル。なら、手の長さを足しても二メートルにはならないくらい。ならば、そこまでなら接近できる!
突然向かってきたオレに影は動揺することもなく『ショットガン』で応えた。いいね。弾数が増える。もっと欲しいくらいだ。
影の『ショットガン』を収納空間で収納し、オレはある方向に収納空間を展開した。それはオレと影が同じ角度になる空間だ。
影の収納空間がオレを『カット』しようと迫る。
だが、オレの方が速い!
「ダブルショットガン!」
『ショットガン』を撃った後に、すぐに『ショットガン』を撃つ。後先考えない全弾投入だ。
一発目の『ショットガン』によって、黄金の床が黒一色に変わる。一面に鉄球がめり込んだ証だ。
そして、二発目の『ショットガン』の鉄球は、一発目に撃った『ショットガン』の鉄球によって弾かれる!
ガキャンッ!!!
すさまじい金属音を響かせて、弾かれた鉄球が影の防御を迂回して、影に突き刺さった。
そして目の前で展開するのは、無数の鉄球によって蹂躙される影の姿だった。
しかも、その鉄球にはすべてタスラムの効果で無属性の魔法攻撃が乗っている。
影はまるで車に撥ねられたように宙に浮かぶと、ボフンッと白い煙となって消えた。
「やった……!」
たぶん跳弾のことに気付けなかったら、最後は賭けのような勝負になっていただろう。
ボコボコになった黄金の部屋を見渡すと、その中央に宝箱が出現していた。
オレはウキウキした気持ちが隠し切れず、スキップしながら宝箱に近づいていく。
さっそく宝箱を開けると、目の前にSF映画のようにウィンドウが現れた。ウィンドウを見ると、クリア報酬である装備の名前がずらりと並んでいる。この中から選ぶ感じかな?
「さて……」
どうしたものかな?
候補は二択。攻撃するたびにHP吸収能力のあるブラッディ装備か、攻撃するたびにMP吸収能力のある白虎装備かだ。
ブラッディ装備なら、持久力が上がる。パーティメンバーがアリスしかいない今、オレがモンスターと直接対峙することが多い。正直、今一番魅力的な装備だ。
そしてもう一つの候補である白虎装備は、瞬間火力が激増する。正直、将来的には白虎装備の方が強い。オレは【収納】でもMPを使うから、こちらも欲しい。
今を優先するか、将来を優先するか。
見た目だけで選ぶなら、ブラッディ一択なんだがなぁ……。
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