隣人の影

@Nikolaschka_President

隣人の影

**プロローグ**:

私の名前は楓。今年の春に女子大学生になったばかり。

小さい頃に親が離婚し、シングルマザーに育てられた。都内の大学に通っている。

私は派手なファッションが好きで、お金をかけてでも自分のスタイルを楽しみたいと思っている。

でも、お金には限りがあるから、大学の入学時に安いアパートに住むことにした。

その代わり、服と推しにお金を使いたい。高級ブランドの服には手が出ないけど、それなりの品質があれば十分。

自分らしさを表現できる服を探すのが、私のファッションスタイル。



**ストーカーの出現**:

大学に入学して数日が過ぎた。新しいアパートでの生活も慣れてきた頃、隣人に男性が住んでいることが分かった。

彼は中年男性で、未婚のようだ。見た目は髪の毛がボサボサで、いつも同じ黒いジャージを着ている。

楓はその隣人とすれ違う度に挨拶をしていた。ある日、


 「こんにちは~」


と私が明るく挨拶すると、彼は小さい声で何かぶつぶつ言いながらこちらを見た。そして、ニヤリと笑った。


 「ふふふ、君、楓ちゃんっていうんだね。いい名前だね」


私は彼の言葉に戸惑った。自分の名前を彼に教えていないはずだったから。

その笑顔にはどこか不気味さを感じた。私はその場から立ち去るように急いで自分の部屋に戻った。


彼の言葉に対する疑問が頭の中で渦巻いていました。何がどうなっているのか理解できない。

不安と疑念が私の心を占める中、窓から彼が郵便物を覗いているのが目に入った。


その様子を見て、私の心には更なる不安が広がった。彼が私の名前を知っている理由は何なのか。

そしてなぜ彼が私の郵便受けに興味を示しているのか、全てが謎めいていた。

私は自分のプライバシーが侵害されているような気持ちになり、何とかしてこの状況から逃れたいと思っていた。


その後も、彼の不気味な行動は続き、私はますます彼から距離を置こうと決意した。

友人たちと過ごす時間やバイトの時間を増やし、アパートにいる時間を減らすようにした。

なるべく、彼を見ないようにと毎日が恐怖だった。


翌日、大学での授業が終わり、友人たちとの定例のランチの時間がやってきた。

私は心配と不安に満ちたまま、友人たちに相談することを決めた。

彼女たちはいつも私の味方であり、私の悩みを聞いてくれることを知っている。


食堂で友人たちと一緒に食事をしながら、私は胸の内を打ち明けた。


「実は、最近隣に引っ越してきた人がちょっと変なんだ。名前も教えてないのに、私の名前を知ってるみたいで…」


友人たちは興味津々の様子で私の話を聞いてくれた。


「それだけじゃなくて、彼が私の郵便受けを覗いてるのを見たの。なんでそんなことをするのか、全然わからないし…」


と私は続けた。すると、友人たちが


「気のせいかもしれないよ」

「新しい人に慣れるのに時間がかかるだけかも」


と安心させる言葉をかけたものの、私はどうしても心の底から不安を払拭することができなかった。

その場にいながらも、彼らの言葉が私の心に響かず、ますます深い不安に包まれていった。


「でも、でも…」


私は口ごもりながらも言葉が詰まった。友人たちの言葉に押し潰されそうになり、ますます孤独感が募っていった。

私の心の中では、その隣人の奇妙な行動がただの偶然ではないという確信が芽生えていた。



**脅迫と恐怖**:

友人たちが笑顔で話を変え、普段通りの雰囲気に戻ったとき、彼女たちが私の不安を理解してくれないことが、私にとっては大きな衝撃だった。彼女たちの安心させようとする言葉が、私の心には届かず、孤独感だけが残った。


ランチを終え、私はますます心が重くなっていくのを感じた。私の不安や疑念は消えるどころか、ますます大きくなっていくばかりだった。


バイトがなかったその日、家に到着すると、ドアの前には何とその隣人が立っていた。


心臓が一瞬停止したような衝撃が私を襲った。彼は不気味な笑みを浮かべながら、私の姿を待ち構えていた。

私は動揺しながらも、怯えながら彼を見つめていた。どうしてこんなことが起きているのか、理解できない。


「あ、あなた…何をしてるの?」


私は声を震わせながら尋ねたが、彼は静かに微笑むだけだった。

その笑顔には何か邪悪なものが漂っているように感じた。


彼は言葉を発しないまま、ただこちらをじっと見つめている。

私は自分の部屋に逃げ込もうとしたが、足が地に付くようにもがくことさえできなかった。


その時、彼は口を開くと、口から漏れる言葉は私の心に氷のように冷たく聞こえた。


「楓ちゃん、心配しないで。私はいつもあなたのそばにいるよ。」


彼の言葉に、私は全身が震えました。

私の中には、彼の言葉が何を意味するのか理解できず、ただ恐怖と絶望が広がっていくばかりだった。

私は声を上げることもできず、そこから立ち去ってしまった。


その日の出来事がトラウマとなり、私は家に戻ることができなかった。

怖れと不安に包まれたまま、私は2駅離れた漫画喫茶店に逃げ込んだ。

彼の不気味な笑みや言葉が、私の心でループする。


そこで何時間、過ごしただろうか。気が付けば、明け方になっていた。

朝日の明かりが薄暗い道を照らしているものの、その光景がますます私の不安を増幅させました。

家に着くと、部屋の中に入ることさえ躊躇してしまった。彼の姿がどこかに潜んでいるのではないかという恐怖でいっぱいだった。


その日から、私はさらに彼の存在に恐怖を感じるようになった。部屋に入っても安心できず、眠ることもできなかった。

そして、その日から手紙や不気味なメッセージが郵便受けに来るようになった。


彼からの手紙は、私を監視しているかのような恐ろしい意図が込められているようなメッセージが書かれていた。

その不気味なメッセージは、私の日常を脅かす存在として私の心に刻まれていった。


私は彼の存在から逃れるために、友人の家に泊まったり、外出先で過ごしたりする時間を増やすようにした。

しかし、彼の影響はどこにいても私の心を追い詰め、私の生活を脅かし続けた。

彼の恐ろしい行動が止まることはなかった。警察にも相談したが、被害がないことから彼らは信じてくれなかった。



**襲撃**:

飲み会から帰ったある日、私はかなり酔っていた。日々のストレスから解放されたくて、家でも追い酒をしてしまった。

気分が悪くなり、横になっていると、いつの間にか寝てしまったらしい。


ピンポーン・・・。部屋にチャイムが鳴り響く。


酔っているのと、寝ぼけているせいか、ついドアを開けてしまった。ドアの隙間から廊下に立つ影が目に入った。

驚いた私がその姿を見つめると、それはあの隣人だった。彼は微笑みながら私に近づき、告白の言葉を口にした。


「楓ちゃん、君が好きだよ。一緒にいたいんだ。一生、大事にするよ・・・」


彼の言葉に私は戸惑った。彼とは何の関係も持っていないのに、なぜこんなことを言うのだろうか。

そして、私は彼に対しては何も感じていないことを理解し、断る言葉を口にした。


しかし、私の断りを受け入れるどころか、彼は突然激しい怒りを露わにし、私に襲いかかった。

彼の怒りと暴力に対して私は動揺したが、すぐに抵抗した。

しかし、彼の力は私には遥かに勝り、私は彼の攻撃によって押し潰された。


「なぜ断るんだ!? 君が悪いんだよ!一生、愛しているんだァ!」


彼の暴力から逃れるために、私は必死に抵抗したが、彼の圧倒的な力には勝てず、絶望感に包まれた。

彼の攻撃が一瞬止んだ時、私は身を乗り出し、彼の掴んでいた手をかわし、階段を駆け下りるようにして部屋の外に飛び出した。


足音が後ろから響く中、私は階段を一気に駆け下りた。背後から彼の息づかいと足音が追いかけてくるのが聞こえてくる。

私は身を挺して逃げ続けた。


そして、彼による襲撃から何とか逃れることができた後、私はすぐに警察に相談した。

しかし、彼らは ”また、いつものことか” “酔っているようだね” とあざ笑うような表情を浮かべた。

私の訴えは取り合ってもらえなかった。


その言葉を聞いた瞬間、私の目から涙が溢れていた。

必死に訴えた私の言葉が届かないことに絶望し、泣き崩れてしまった。

警察官が私をなだめようとしても、私の不安と恐怖は消えることはなかった。



**生活の変化**:

数か月後、私は新しい生活を始めていた。

引っ越しを終え、新しいアパートでの日々は、以前の不安と恐怖から解放されたように感じていた。

大学も順調で、友人たちと過ごす時間が増え、充実した毎日を送っていた。


朝早く起きて、お気に入りのカフェでコーヒーを飲みながら読書をするのができるようにまでなった。

新しい街での散歩も楽しみ、季節の変化を感じながら、心の安らぎを見つけていた。

ファッションにも再び情熱を持ち始め、おしゃれを楽しむことができるようになった。


恐怖や不安は過去のものとなり、新しい環境での生活は、私にとって新たなスタートとなった。

幸せな日々を取り戻すことができていた。


ある日、私は町中を歩いていると、友人の姿を見つけた。友人の彩だった。

彼女は嬉しそうに笑っていて、雑踏の中、道路の向こう側にいるのが見えた。

私は彼女に声をかけようとしたところ、その友人の隣には、私が忘れたくても忘れられない人物がいた。


彼はその友人の横に立って、にやりとした笑みを浮かべていた。

その冷たい視線が私の心を凍りつかせ、恐怖が再び私の身体を支配した。

私は彼の姿を見ると、過去の傷が蘇り、呼吸さえも困難になった。


次の日、大学で彩に声をかけると、彼女は笑顔で私に駆け寄ってきた。

私は恐る恐る尋ねた。


「彩、あの人は?」


彼女は幸せそうに答えた。


「ああ、彼は私の彼氏の○○君だよ。」


その言葉を聞いた瞬間、私の心臓が止まるかと思った。

彼女の彼氏が、あのストーカーだったとは・・・。

私は驚愕の表情を隠しきれず、言葉を失った。


友人の言葉に驚きと恐怖が私の心を支配した。

しかし、彩が彼のことを幸せそうに話す姿を見て、私は彼女に真実を伝える覚悟を決めた。


「私にはあなたの彼氏について話があるの。」


私は落ち着いた口調で彼女に話しかけた。


彼女は驚いた表情を浮かべながら私の話を聞いてくれた。

私は過去の出来事を全て彼女に伝え、知るべきことを話した。

彩の彼氏が過去に私をストーカーした男性だという事実を知ってほしいと強く願った。


彩は私の話を黙って聞き、驚きと悲しみが彼女の顔に浮かんだ。

彼女は私の手を握りしめ、そして私たちはその場で涙を流した。


どうやら、彼女は納得してくれたようだ。

大学を出ようとした時、彩に後ろから声をかけられた。

振り返ると、彼女は笑顔に満ちた表情で私に抱き着いた。


「彩・・・」


すると、背中から激しい痛みが私の全身を駆け巡った。生暖かい液体が体から垂れる。

彩の手にはカッターが握られていた。


私は彼女の意図を理解できず、怖気を感じながら、血だまりに倒れてしまった。

意識が遠くなる中、彩の言った一言だけはしっかりと聞こえた。


「彼ヲ私カラ奪ワナイデ・・・」



**エピローグ**:

私はぼんやりと目を覚まし、病室の白い天井が視界に入った。

全身に鈍い痛みを感じながら、周囲の音に耳を澄ませると、誰かが優しく私の名前を呼んでいるのに気付いた。


「楓、楓、大丈夫?」


母の声だった。私はその声を聞いて安心し、目を開けた。


「お母さん…?」


声を出すのがやっとだったが、私の声に気づいた母は涙ぐんだ表情で私の手を握りしめた。


「楓、よかった…本当によかった…」


母の目には涙が溢れていた。


「もう大丈夫よ。ここにいるからね。ずっとそばにいるからね。」


「お母さん…何が…?」


私は混乱しながら、何が起こったのかを思い出そうとしたが、記憶は曖昧だった。

「彩ちゃんが助けを呼んでくれて、警察がすぐに駆けつけてくれたの。でも、あなたがこんなに傷つくなんて…」


その時、病室のドアが開き、医者が入ってきた。私はその顔を見ると、恐怖が全身を駆け巡った。

その医者はあのストーカーだった。


「どうですか、楓さん?」


彼は冷静な声で尋ねた。その瞬間、私の記憶はそこで途切れた。今では何も覚えていない。

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