第16話 不死の探究者たち
彼女の名はイフナ。
辺境の村で、茶色い髪の両親から生まれた赤毛の女性。
イフナの両親は不思議がったが、村に赤毛の男性は居なかったため、正真正銘血のつながった親子であり、先祖返りだろうと結論付けられた。
実際、その通りだった。
彼女は魔法に異常な程の才を示し、7歳で魔導書を読み、初級魔法を扱えるようになってから、8歳で中級魔法。10歳になるころには上級魔法まで唱えられるようになっていた。
人手の足りなかった村は彼女を頼り、彼女もそれに答えた。
時には隣村まで行って魔物を倒したり、魔法を使って様々な問題を解決しては、村人に感謝され、幸せに時を過ごした。
そうして5年が経ち、15歳になった彼女の噂は遠く離れた街にまで届くこととなった。
天才少女魔術師と呼ばれたイフナの元にはいくつもの招待状が届いた。
傭兵ギルドからの物や貴族お抱えの魔術師にならないかなど様々な勧誘がイフナの元に届いたが、どれも彼女の気を引くものでは無かった。
何より彼女の母親が病に伏していたのだ。離れる訳にはいかなかった。
そうしていくつもの手紙を処理していたある日、一枚の招待状が彼女の目に入った。
『不死の探求者達』という団体からの招待状。
母親が日に日に弱っていく姿を見ていたイフナは、母を救うことができるなら、とその招待状の指定地に向かった。
結果、彼女を待っていたのは地獄だった。
もしイフナが街の生まれだったのなら『不死の探求者達』には関わるなと教えられていたのだろう。
彼らは子供と大人の間、つまり15歳ほどの少年少女の肉体には不死の力が宿ると考える集団だった。
不幸なことにイフナがうけた招待状はその中でもかなり過激な集団のものだった。
彼らは到着するなりイフナを捕え、不死の探究のためと言って様々な拷問を施した。
彼女が何より不幸だったのは、それに耐えることができてしまった事だろう。
普通の少年少女では耐えられず、死んでしまうほどの拷問。
しかしイフナは本物だった。彼らの掲げる理想の通り、彼女は不死身だったのだ。
それが発覚し、彼女は彼らのボスの元に連れられた。
何か望みはあるかと言う質問に彼女は使ったことのない最上級魔法で答えた。
結果、魔法は防護魔法を同時に唱えなかった彼女ごと、全てを焼き尽くした。
彼女はおぼろげな記憶を頼りに、ぼろ布を纏いながら村へと向かった。
どれほどの時が流れたのか、ようやく生まれ育った地に帰ることのでき た彼女を待っていたのは、全てが灰になった焼け野原だった。
絶望したがそれでもイフナは生きようとした。
彼女が何度か助けていた隣村に向かうと、住民は暖かく迎えてくれた。
悲劇のことなど忘れて一年が経ち、魔物の討伐から戻ったある日、村は血の海になっていた。
村にいた『不死の探求者達』を殲滅し、追ってを全て振り切ってから彼女はある狩人の山小屋に世話になった。
数年後、とある町で彼と彼の家族が惨殺されたことを知った。
町で彼らに対抗すべく、図書館で魔導書や文献を読み漁った。
数ヶ月後、図書館が燃やされた。
そして次の日、以前一泊した宿屋の店主が殺された。
街中で『不死の探求者達』に見つかり、多くの人が戦いに巻き込まれて死んだ。
そうしてイフナは人と関わる事を止めた。
生きることを諦め、死にたいと思うようになった。
何日も水に沈み続けたが、彼女が死ぬことは無かった。
底が見えない谷に落ちたが、彼女が死ぬことは無かった。
巨大な異形の魔物に食われたが、彼女が死ぬことは無かった。
何年も経ったある日、彼女は遺跡に迷い込んだ。
そこで、尋常ではない魔力を秘めた物体を見た。
興味本位でそれに向けて魔法を撃ってみると、ヒビが入り、爆発と共に自分の半身が魔力の光に包まれた。
一瞬の事だったがイフナは消滅した半身を再生させながら、思った。
これなら死ねる。と
それからイフナは遺跡を探索した。
何十ヶ所という遺跡を探索したものの、目当てのそれは見つからなかった。
やがて、遺跡で手に入れたフード付きローブに認識阻害の効果があることが分かると、街中でも手がかりを探した。
光り輝くそれについても調べ、ある文献からリアクターとその使用法についての事を知った。
遺跡で狩った魔物の素材を売り、情報屋から情報を仕入れた。
そうして遺跡の探索を繰り返し、街を転々としていたある日、仕入れた情報は近くの山で新たな遺跡が発見されたというありきたりものだった。
期待せずに向かうと、そこにリアクターはあった。
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