第16話

午後は自由にしていいと言われ厨房へ来ていた、流石はお城の厨房と言っていいのか分らないがすごく広い、調理器具や食材なんかも豊富なのだが


やはり… というかなんと言うかミキサーなんて便利アイテムこの異世界には流石にないよね

まぁ あれば楽ぐらいの感覚だったので、無いものを嘆いても仕方が無い、ということで切り替え!切り替え!


材料を並べていたら厨房の入り口付近に人の気配がしたので視線をそちらに流す


カル「何をしているんだこんな所で?」


「vou fazer um bolo de cenoura !」(キャロットケーキを作る)


カル「ボールで?なんだ?」


「キャロットケーキ」一言言ってからニンジンをスル為のスリ機を取り出す「ちょうどいいしお前も手伝うか?」


まさか手伝わされるとは思ってもみなかったのか大きな目をさらに見開く


カル「俺が?手伝う?」不思議そうに首を何度かひねり言葉の意味を理解する事、数秒、表情を一気に変え笑顔で手伝うと言ってくれた「何をすればいいんだ?」


「ミルク、マーガリンと砂糖あとカカオのパウダーを入れるからそれを混ぜるだけでいい」はいと材料の入った鍋と木製のさじを渡す


カル「それだけ?」簡単な申し出に少し不服そうだがおとなしく鍋をかき混ぜる、パウダーのだまが無くなるまで混ぜ合わせたら、今度は弱火の火にかけ焦げないように混ぜてという


さて、俺は自分の作業に取り掛かる、まずは皮をむいたニンジンを2本スリットする、すったニンジンを今度はまな板にのせさらに小さく切る、流石にミキサーが無いとこの作業はつらいけど食べたいという信念でひたすらに切る

それが終われば今度は切ったニンジンをボールに入れそこに小麦粉2カップ、砂糖1、油1、マーガリン1さじ、卵2後はミルクを入れて、だまのないトロトロの液体になるまで混ぜ、ケーキを焼くための容器に入れ、温めておいたオーブンに入れる


ふとカルロスが気になりそちらを見ると彼は真剣な顔で鍋の中身をかき混ぜていたのでついつい笑い声が出てしまった


「そっちはどうだ?うまくできたか?」鍋の中を覗くとどうやらチョコのソースが鍋の底にくっついているのを一生懸命に取っていた


カル「笑うな!料理なんてやった事も無いのだぞ!お前が焦がすなというから」必死な姿に思わず声が出る


「いいよ合ってるから」火を止めまだかき混ぜるように言う


カル「まっ!まだなのか?!」


「今度は空気を入れてトロみを出すのと覚ます役割があるんだ」

すくう様に混ぜるジェスチャーする、それを見様見真似ね混ぜていくカルロスにやっぱり笑いが込み上げる、そんな俺を不服そうに見るが気にしない


「10分したら止めていいぞ」


カル「もう足が痛いんだが」文句を言いながらゆらゆら揺れる彼に代わるかと聞くとすぐに顔を明るくし俺の方に鍋とさじを渡す


現金な奴めw


カル「なれない事はするもんじゃないな」疲れたと椅子に座り足を伸ばす


「e muito mole kk」(不甲斐ないなw)


カル「メンバーに選んでくれてありがとう」鍋に向き合う俺の後ろから語り掛ける「絶対必要って言ってくれたのすげぇ嬉しかった」


「あー多分お前が思っているよりも綺麗な理由じゃないと思うぞ」


カル「それでもいいんだ、それが嬉しかったから」

表情は見えない、けどとても静かで嬉しそうな声色だった










****

それからしばらくして、オーブンの中にあるケーキを覗く想像していたふくらみはなかったがまぁ上出来だろうと取り出す


「ん~匂いは完璧だな」目の前のケーキを見ながら母が良く作っていたのを思いだす

カル「キャロッツのケーキなんてどうかとは思ったがなかなか食欲をそそる匂いだな」


「だろ♪まぁ問題は味だけど…」ケーキを大皿の上に乗せ、チョコのソースをかけると出来上がりっと声を弾ませる「折角なら景色のいい場所でお茶でもしようぜ♪」


カル「そうだな!....なら中庭なんかは空気も綺麗で最適だ!」


二人でルンルンしながら茶葉やらティーセットなどの準備をしている俺たちに厨房を覗きに来た使用人たちが大慌てだったのが面白かった

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