第17話 現実

ここまでは8割事実。2割幻想。


基軸としては事実。


両親が2歳で事故死したのも、

その当日真里亜(母の幼なじみ)に預けられてたのも。

実母に預けても、父方の祖父に預けても拒否されるから、遊びに行くことを反対されるから、真里亜に行った。


そして、僕は両親を失った。

真里亜は自分を責めた。

でも、誰も真里亜を責めなかった。


僕も、責めなかった。

むしろ僕は、ずっとずっと、真里亜の愛を求めてた。

たまに母方の祖母が会わせてくれる。

それが嬉しくて。


会える日を指折り数えてた。


でも、僕は…彼女に触れることも、心の内を出すこともしなかった。

話したいことも聞いて欲しいこともいっぱいあった。でも、なんか気恥しいのと、僕より2つ下の息子がいる事。


どうせ僕は一番にはなれない。

どうせ僕は誰にも愛されない。


ひろきが真里亜を見る目。

真里亜がひろきを見る目。

その場の2人だけの空気 …。


全部が羨ましかった。


彼女はひろきが小さい時にひろきの父親と別れてる。

だから女手一つでひろきを育てあげた。



ひろきは無事に大きくなり、独り立ちもしたし、結婚もした。



現実の真里亜は、10年前くらいに実家に戻った時に会った。その時に思い切り抱きしめてくれた。


……嬉しかった。全部解き放たれた気がした。



でも未だに僕は彼女の手には触れられない。

多分今後もないだろう…。


いくら『2人目の息子』と言ってくれてても僕は所詮、友達の子。

命は守られたが実子ではない。


抱きしめて欲しいのに、

甘えたいのに、ずっとずっと…押し殺して生きていくだろう。

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笑顔の人 海星 @Kaisei123

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