第13話 どんな花になりたいか

麗美と真里亜は小学生の頃からの友達。

途中、真里亜が施設に入ったりして紆余曲折はあったが、麗美の母、つまり僕の祖母の事を真里亜は「お母さん」と呼び、祖母も真里亜を『真里亜』と呼び、娘同然として可愛がっていた。



ある日の夜中、僕はマンションの柵に足をかけようとするところをたまたま、起きてきた真里亜に止められた。


「そんな短い足、かけられるわけないから。やめな。」

「やっぱり無理か。高いんだよなここ。」



僕が諦めると、真里亜は僕を抱き寄せた。



「…そんな生き急いでも麗美は会いに来ないからね。」

「うん。」

「…寂しいか?」

「違う」

「じゃあどうしたの。」

「…言いたくない。」

「誰なら話せる?風夏ちゃんなら話せる?」

「嫌。誰にも言わない。」

「言ったよね?抱えるなって。話せって。」

「うん。」


「こっちおいで。」


僕は真里亜に手を引かれて寝室へ。


そのままベットへ突き飛ばされて…上に乗られて…両手を抑えられた。


「これ、付けてあげよっか?」


真里亜は、僕の両手にベットから繋がる手枷をつけた。



「これで話せる?」

「嫌。」

「……。」


真里亜は僕の頬を思い切り叩いた。


「…それで?言うの?言わないの?」


「…ママに会いたい。どうせ真里亜は他人。母親じゃない。母親にはなれない。…どうせなりたくないんでしょ?」


すると、真里亜は冷静に答えた。


「あんたのばあちゃん。麗美のお母さんは私を本当の娘だと思って接してくれてた。」


「でもそれとこれとは違う。真里亜はまた違う。」

「…ねぇ侑海。『男と女』だけなら儚くない??一回咲いて、散ったらもう何年も咲かない花だってあるんだよ?でも『家族』なら、毎年咲く『桜』になれるんじゃない?でもただ生きてるだけじゃダメ。こうやってぶつかってしっかり育てて守っていかないとダメになることもある。あんたはどうなりたい?」


「ずっと一緒にいたい。やっと真里亜がそばに居る…。離したくないよ…。でも強くもなれない…。でもならないといれないなら頑張るから…。」

「強いなんかいらない。取り繕ったって私にはわかる。あんたはそのままでいい。わたしもこのままでいるから。」




――――――真里亜は微笑んで僕の頭を撫でて優しく額にキスした……。

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