第11話 過去、そして未来
それから少し経ったある日の朝、僕は真里亜を腕の中に抱きながら、考え事をしていた。
「…どうしたぁ?」
真里亜が綺麗な顔して僕に聞く。
「…相変わらず綺麗だな。」
「そう?ありがとう。…ねぇ、何考えてんの?」
「…『消したい過去』ってある?」
「そりゃねぇ、消せるものならってのは一つや二つ誰でもあるんじゃない?」
「…別に掘り返すつもりはねーのよ。俺も。わかってると思うけど。…でもさ、ここだけの話、真里亜、風夏のママ知ってんだろ。俺は知ってるって思ってる。でも、風夏ママが隠してるのであればあえて言う必要はないってそこに乗っかったんじゃないかなって思った。まぁもしくはね、当時やんちゃだった真里亜とうちのママで墓まで持って行こうって決めたものもあったりすんのかなって。」
「…バカな頭で色々考えてたんだ。」
「…そう。馬鹿な頭でね。」
「別にかくしたいものなんてないよ。あたしたちは。男取り合ったことも無いし。人殺したことも無いしそこに居合わせたこともない。まぁね…ある程度今で言ういじめの現場を見つけて片付けてたことはあるけど、隠したいって程じゃない。。」
「真里亜。」
「うん?」
「その、いじめの片付けってさ真里亜がしてたの?ママも?」
「メインは私。内容によって麗美が耐えられなくなると麗美も加わってた。…楽しかったよ?私はね。後悔はない。」
「…とある女性がね?それこそ真里亜とママと同じ年の女性がね、娘が小さい頃に、良くいいか聞かせてたことがあってね、それがね、『弱いやつは守れ。『弱いやつの為に戦え』だったんだよね。まさかと思うけど、特服着た女の子助けたた…とか、実は助けた子がブンブン系だったとかってある?」
「…瞳美ね。あの子は当時から結構色々やってる子でさ。たしかに一時期はね…一緒に遊んでた。でもそのうちにあたし達とは違う路線に行き始めたんだよね。それこそシンナーとか、大体の悪い事はしてたって聞いた。だから、関わらなかった。でもそんなこと、風夏ちゃんには言わなくていい。だから知らないって言ったの。」
「やっぱりな。…あいつのママ、病院出たり入ったりしてんだよね。精神病院。たまたまじいちゃんばあちゃんが居たから俺と離れなくて済んだけど、居なかったら今の俺らはないと思うんだよね。」
「…あんたもそれなりにあの子守ってきたわけだ。見てりゃわかる。」
「唯一あいつだけ。真里亜の事ずっとバカみたいに話してたの。あいつにだけは話せた。だから、喜んでくれた。『真里亜が来た』って言ったら。」
「そう。……あんたは風夏ちゃんに気は無いの?」
「ない。だって一回もやらせてくれなかった。」
「理由そこ?」
真里亜が呆れた顔で僕を見る。
「嫌いじゃない。でも、俺、風夏のママとか、真里亜とか、本当に年上しか興味なくてさ。なんならもうずっとずっと…真里亜だった。」
「……いつから変わったの?私への気持ち。母親って所から女ってところに。」
「同時。多分並行してた。」
「……ずっと狙われてたわけだ。」
「……ひろきにパパがいた時からね。羨ましかった。」
「それ本当に小さい時じゃん。」
「引くなら勝手に引け。別にいい。嫌われるのは嫌だけど、でもそれならそれでいい。必要以上に期待したって女は離れてく。…お前まで俺に適当に扱われたいの?」
「そうやってあんたから突き放してきたわけだ。色んな子達。」
「……。」
一切刃向かって来ない、同じ土俵に立たない真里亜に拍子抜けしていた。
「まさか手上げたりしてないよね?どうなの?」
「したいけどしなかった。嘘じゃない。」
「ならいい。」
「……。」
「侑海。」
「…なに?」
僕の不安と安心とがぐちゃぐちゃに交差してた。
「勘違いしないで。私はあんたが好き。そんなちっちゃい時から私が好きなら余計に嬉しい。子供なんていずれ大きくなったら変わるもの。でもあんたは変わらなかったわけでしょ?そんな嬉しいことないよ。」
「まりや…嘘じゃない?」
「あんたね。あたしを信じられなくて誰を信じる気?風夏ちゃん?」
「いじわる。」
「どっちも信じなさい。たしかにあの子のママには問題があるかもしれない。でも好きでなった訳では無いと思う。それはあんたもわかるでしょ?」
「わかる。」
「あんただけは瞳美の味方でいてあげて。風夏を産んだ母親だから。こういうご時世、いつ殺してもおかしくなかった。でも親に預けて立派に育ててくれた。もうそれだけでいいじゃん。あんたもそう。じいちゃんばあちゃんが居たから今がある。たしかにおばあちゃんには恨みが多いかもしれない。でも、あんたを愛するがゆえ、厳しくしたの。だからあんたはこんなに優しくなった。」
「優しくないよ。」
「でもあたしや風夏ちゃんには優しい。」
「『弱い人を守れ』これ、風夏ママに俺も言われたことある。思い出した。」
「あたしらが発端でここまで繋がってるなら嬉しい限り。」
「いじめ狩りは正義だよ。」
「そうね。」
僕は真里亜を強く強く抱き寄せた…。
「真里亜、俺と籍入れない?俺との子作らない?」
「子供欲しい?」
「真里亜が体力的に大丈夫なら。Hと出産は全然違うはずだから。」
「…産むのは死闘。ひろきで十分。私は私を楽しみたい。それがダメならいいよ。あんたには未来がある。」
「真里亜。俺もいい。真里亜がいてくれればいい。……俺、このままでいい?」
「子供できたら甘えんぼできなくなるもんね。それこそ浮気されちゃう。」
そう言って真里亜は僕の上に乗って…僕にキスした。
「安心して。私は死んでもあんたを見てる。あんたを愛してる。約束してあげる。」
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