第9話 縁(えにし)
―――――――『おじゃましまーす』
ある日の夜、僕の友達を家に呼んだ。
一応女性なので、真里亜は同席。
「はじめまして。『風夏』といいます。真里亜さん、本当に綺麗ですね!侑海から耳にタコが出来るくらい真里亜さんのこと聞かされてました。」
「タコ?イカじゃね?」
「タコ、タコだよ。調べてみ。」
「あ、お前、今俺にタコって言ったな。」
「あれ?わかった?」
「あ!」
「何。声でかい。」
「タコとタコ、一緒?」
「は?何の話?」
「だからタコとタコの話。」
「あー。今のね。」
「……。」
「どうしたの。」
急に僕が黙り込むと、真里亜が声をかけてきた。
「まりやー、たこ焼き食べたくなってきた。」
「そうだね。たこ焼きかー。久しく食べてないかもね。」
「先週食べたよ?ここで。」
「今週食べてない。」
「本当タコ焼き好きだよね」と風夏。
「風夏、ご飯食べた?タコ焼き食べる?俺腹減った。」
「そういえばお昼食べてないわ。」
「まちまちだって前にも言ってたもんな。」
「うん。あんまりね、お昼ご飯って意識してなくて。」
「夜長かったから余計じゃね?」
「あると思う。」
「真里亜、タコ焼きしていい?」
「いいよ。しよっか。風夏ちゃん今からうちの家族ね。はい、手伝って。」
「え?あ!はい!」
真里亜が先にたってキッチンへ向かう。
「まりや、風夏気に入ったみたい。」
「…なんか、うちのママと同じ匂いする。」
「そうなの?元ヤンとか?」
「謎なんだよね。教えてくれなくて。でもね、一回だけ、ママの特攻服着た写真見たことあってさ、かっこいいって思ったの覚えてる。」
―――――――――――――――。
「侑海、はい焼いて。準備したんだから焼くくらいやって。」と真里亜。
「火傷したら私と真里亜さんの肌やられちゃう。」
「俺はいんかい。」
「勲章だ。」
「さっきの話じゃないけど、真里亜もたまに元ヤン出るよ、」
「なんで知ってんの。」
「え?」
「え?」
僕と風夏が2人で真里亜の顔を見た。
「え?でもなー、ひろきにも小さい時に写真見せただけだしな…。『カッコイイ』って目キラキラさせてたからなぁ。即隠したんだよね。」
「似たような話だな。もしや……」
僕は手でバイクの真似をした。
「いや、あたしはそっちじゃない。車。」
「?…当時って両方いたの?」
「あー…そうね。車もバイクも居たね。」
「風夏ママって今いくつ?うちの母ちゃん生きてたら……33引く20引く1は…」
「52。麗美もあたしも同じ。」
「47年ですか?」
「そうそう。」
「私のママも同じです。」
「え?いくつの時の子なの?俺の3つ上だから…19、18、17…」
「あはは。ほんっとに引き算苦手なんだね。遅すぎ!」
風夏がお腹を抱えて笑う。
「なんかね、苦手なんだよね。10超えたら手使えないじゃん?」
「そこ??」と真里亜。
「手貸す?真里亜さんの分もあるよ。」
「2人とも絶対バカにしてる!」
「してるよ?」と風夏。
「でも面白いね。こうも母親が同じ年だと。」と真里亜が笑う。
「ちなみ、俺ら地元一緒だよ。」
「え?そうなの?」
「うん。ママ、麗美さんのこと知ってたよ。よく美人ふたりで歩いてたって。」
「美人…2人?」
僕はチラッと真里亜を見て風夏を見た。
「あたしだ!」と真里亜。
「ちがったらどうすんのよ!超仲いい子とか他にいたらさ!」
「基本的にベッタリくっついてたっつの!」
「うん、多分真里亜さんのことだと思うよ。」
と平然と風夏が言う。
――――――その日、片付けが終わったあと真里亜に聞かれた。
「風夏ちゃん、侑海と付き合ったことないの?」
「ないですよ。」
と即答した。
「気持ち傾いたことは?」
「うーん。無いかな…。」
「お!あり…そう??」
僕が少しおちょくると、
「99.8%(パー)ない。」
「じゃあ、残り0.2%の奇跡はいつ起きたの?」
「えー…大人になってからかな。しかもあたしが病んでた時。一瞬くらっとしたけどその時あんたも病的に女居たから変なのうつされたらこまるからやめた」
と僕に嫌な顔して言った。
「そんな取っかえ引っ変えしてたの?」と真里亜まで。
「病んでたから。誰でもよかったからね。」
「でも、真里亜さんが来てからピタッと聞かなくなった。…安心したんだよね?」
「そうだよ。まりやが来てくれたから代わりが要らなくなった。」
―――――――――数時間楽しく話して、風夏が帰る直前、真里亜に聞いた。
「真里亜さん、
「うーん、どうだろ。あたし、麗美としか、侑海のママとしかいなかったからなぁ。。顔みたらわかるかもだけど、もう昔のことだしね…ごめんね…。」
「全然!気にしないでください!…また来てもいいですか?」
「ぜひ。」
「またおいで。」
――――――――――――真里亜は多分知ってる。
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