第7話 ふたりむすこ

――――――通話中。


「ひろき、ごめんな。母ちゃん呼んじゃって。」

「侑海が呼んだわけじゃないんでしょ?オカンが好きで行ったって聞いたよ。」

「本当はそう。でもなんかそれじゃ、ママが、悪者にならない?だから俺が呼んだってひろきに言えばひろきだって俺恨めるじゃん。」

「そんな風には思わないよ。まぁね、俺が思ってるのは俺が全く知らない誰かのところに行かれるよりかは少なくとも知ってる人のところの方が俺も安心。」


「大人だな。俺より大人。」

「2つしか変わんないじゃん。」

「うん。でもこの2個デカいぜ?ひろきが兄ちゃんみたい。」


「でもあれだよ。」


途中から2人で笑いながら話してた。


「うん?」

「侑海が遠くに行っちゃって、おかん、ずっと心配してた。『頼りがない事がいいこと』って言いつつね、下手したら俺より気にかけてた。」

「そうなの?」

「うん。侑海は遠かったからさ。元々ね。小さい時も市内にはいたけど、状況的にいっつも会えるわけじゃなかったしね。」

「まぁね…。」


「だから俺のことは気にしなくていいよ。」

「いや、でも、母親が必要になったら秒で帰らせるから。すっ飛んで帰らせるから。俺はいつでもひろきが最優先だから。それだけは覚えてて。俺なんかより息子のお前が一番大事。そこは昔から変わんないから。」

「ありがとうね。」

「だからママが必要ならすぐ言って。ママのご飯食べたい時もあるじゃん。」

「あんまないかも。」

「あるって。あるってことにしとこ。」

「あんまり美味しくなくて。」

「そうかな?うちの親が不味かったから美味しく感じる。」

「俺、ばあちゃんが美味しかったからちょっと微妙だった。」


「ばあちゃんはな…かなわねーわ!」


2人で笑いながらしばらく話して最後に、


「ひろき、母ちゃん泣かせないから安心しろ。てか、俺も『彼氏』とか『男』ってよりも、『息子』に近いからさ。てかほぼ息子。扱いもそんな感じ。だからルームシェアしてるって思ってくれていいかも。そのほうがひろきも気が楽だと思う。」


「なんでもいいよ。おかんが泣く時は、嘘つかれた時とか、誰かが死んだ時とか極限にお腹減った時とかだから。」

「たしかにな。まぁでも、ママ必要になったら俺でいいから連絡ちょうだい。真里亜だったら帰るって決めるまで時間かかりそうだからさ。」

「ありがとう。じゃあそのときはそうさせてもらうね。」


「奥さんに宜しくお伝えください。ひろきも体気をつけてな。」

「ありがとう。侑海もね。おかんの事頼んだね。」

「承知しました。」



――――――――――――――――――。

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